2010.08.17
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「失敗」と書いて「せいちょう」と読む(by野村克也)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 ~「失敗」と書いて「せいちょう」と読む~は、元東北楽天イーグルス監督の野村克也さんの著作「野村再生工場」の中の言葉です。

 野村さんが監督時代マスメディアでぼやいていた言葉は、野村語録として記憶に残っていますが、この言葉を知り、急いで本を購入し、一気に読みました。
 2008年8月に初版が発行されてから、既に2年も経っていたので、もっと早く読みたかったと残念な気持ちになりました。

 組織の中で働いていると上司・同僚・部下との関係は、それぞれの立場で誰にも悩みがあるはずです。
 私は、“まえがき”で軽いジャブの衝撃を受けました。若い職員を育てる立場にいますが、なかなか気持ちが伝わらない事が多いのが現実だからです。
 
 野村監督は、『学校教育では、「5つほめ、3つ教えて、2つ叱る」のが基本だという。・・略・・・「叱ってこそ人は育つ」と私は考えている。逆に言えば期待するから叱る。もっと育って欲しいと思うから厳しくなるわけだ。それは、私の愛情なのだ』と書かれています。
 生徒や学生に対する教育と社会人への教育は、自ずと違ってくると私も思いますが、最近の若い社会人は叱られ慣れていないというか、ほめられて育ち過ぎているのではないかと思う事が多いです。
 叱られたという事実だけに敏感になり、自分だけ叱られたと不満に思い、事件を起こすことが最近TVでも多いように思います。
 
 『「失敗」と書いて「せいちょう」と読む』の中で、大切なのは、失敗を次につなげることなのだ。』と書かれています。野村監督は、『何も考えないで勝負に行ったバッターは許さない。そういう選手は次も同じ過ちをおかす。手抜きプレーをした選手も同様である。そんな選手はプロとして失格だと思う』と書かれています。

 私たち教育に携わる者は、教育のプロとして働いているか、ということを常に思います。私も同じ過ちをした職員には厳しく指導しているつもりでいますが、同じ過ちを何度も繰り返すということは、厳しいようですが、プロの自覚に欠けるのではないかとこの章から感じました。
 
 ある選手がミスをしてベンチに帰ってきた時、控えの選手が「ドンマイ」と声をかけたのを聞いた監督は『ミスを笑って許すとは何事だ!・・・略・・・傷をなめあうのはアマチュアのすることだ。戦うプロの集団がすることではない!』と烈火のごとく怒ったそうです。
 職場のチームは、仲良し集団になってはいけないのです。仲良し集団化し、職場で「ちゃん」づけで呼び合うなんてどうなのかと思っていた私は、アッパーの衝撃が胸に響きました。もちろん、職場を離れれば、「ちゃん」づけでも、どんなあだ名でもOKだと思っています。
 
 組織作りで野村監督が最初に行うことは「意識改革」だそうです。「考え方が変われば行動が変わる」という言葉は、何度も目にし、耳にする言葉です。ヤクルトでは、選手にメモを取らせてミーティングをしていたそうです。『学校の勉強と同じで、やはり自分自身で手を動かさないと身につかない』と書かれています。
 私も新任研修で、「メモとペンを持って集合するように」と新しく職場に来た職員に言いましたが、間違っていなかったんだなぁと思いました。

 等々、前半の数十ページだけでも、納得することが沢山書かれていました。
 夏休みも後半になると、子どもたちは、読書感想文に追われていると思います。
 もう読まれた方も多いと思いますが、まだ読まれていない方は、この夏の一冊として大人の読書にお勧めします。
 「失敗」と書いて「せいちょう」と読むという言葉が、今の私の心にとてもフィットとしています。

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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