2010.06.18
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こども環境学会をご存知でしょうか?

建築家(グローバルアーティスティック代表) 岩崎 亮平

この学会は、まさにこどもたちを取り巻く環境について大人が考える学会です。詳しいことを書く前に、毎年4月末に開催される全国大会をご紹介しましょう。

普通、学会や建築業界の大会は秋に開催されるのが通常ですが、こども環境学会は、4月末の週末に全国の都市を回って開催されます。理由はおわかりの方もいらっしゃるでしょうが、5月5日のこどもの日に合わせているのです。

今年は、広島市で開催され、私も久しぶりに広島を訪れました。建築家の伊東豊雄のこどもワークショップ(写真上)、基調講演、論文発表、セミナー、ポスターセッション、総会など3日間、盛り沢山の内容でした。
2年前の2008年は名古屋市(写真中)、4年前の2006年は、西宮市武庫川女子大でそれぞれ開催され現地ならではの特色がよくでていました。

さて、「こども環境学会」(以下、学会と呼びます)のことを述べていきたいと思います。
まずこの学会は確か2003年に産声をあげた新しい学会です。当時から事件、事故などに巻き込まれるこどもたちが増えてきた俗悪な環境に、危機感を持った大学の先生たちによって作られました。
ですから、メンバー構成は各分野の専門家が集まり、大学教授、園長、保母、看護師、医師、建築家、玩具メーカー、などなど、要するにこどもたちは大人が守るべきという趣旨に賛同する人々です。毎回、いろいろな情報を交換しあい、こどもたちに関する事柄の横断的な話し合いをしています。
毎回の私の楽しみは、ポスターセッションです。これは、各個人、団体、大学の研究室、NPOなどの、こどもたち等への実践活動の発表会です(写真下)。大きいホールではなく教室や廊下などを使い、各自作成したパネルの前で5分程度の発表と質疑応答です。気軽に質問できる距離ですし、発表者の内容も非常に判りやすいものです。
武庫川女子大では、私もこども建築ワークショップの発表をしましたが、するどい質疑にたじたじになったことを憶えています。

こどもたちとのワークショップもメインイベントの1つです。広島では前述した伊東豊雄が小学生高学年の25人ほどでワークショップをしました。内容は、事前にこどもたちに好きな家の模型を作ってもらい、当日持ち込んでフロアーに貼った大きな広島市の地図上に置いていくものです。置く前に全員の前で自分の作品のアピールを行いましたが、大勢の前ではみんな緊張していました。しかしこの頃から発表の経験を積み重ねると将来きっと役立ちます。
模型の材料も特に制限がなかったので、紙、プラスチック、木、弁当パックなど様々で、見ているだけで楽しくなります。当然とっぴでユニークな物ばかりでしたが、中には現実的に建築できそうな作品もいくつかありました。毎度のことながら、こどもたちの発想と工夫とイマジネーションには刺激を受けます。

これら以外にも屋外に飛び出してのワークショップもあり、神戸の須磨海岸では、「プレイフルサンドアート」と言って、京都女子大こども学科の教授が考えられたものを実施しました。簡単に言えば、砂浜に親子で好きな砂の造形を作ります。天気もよくこどもたちよりむしろ大人の方が熱中していました。そして最後はみんなの前での発表です。ここでは作品をお目にかけられないのが残念です。

ニュースではよく少子化が問題にされますが、それよりも今、生を授かっているこどもたちを、正しく安全に健やかに育てることが大切だと考えます。連日新聞に掲載されるこどもの虐待、自殺、悩みを全ての大人が自分のことのように考え、是正しなくてはいけません。こどもたちは、将来を担う人類の宝者なのですから。。。

(こども環境学会で検索するとHPが見られます。) 
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岩崎 亮平(いわさき りょうへい)

建築家(グローバルアーティスティック代表)
建築設計の仕事が本業ですが、「こども建築ワークショップ」を主宰し、学校へ出前授業を行っています。子どもに関わること全てが私のライフワークです。子どもは人類の宝者ですから。

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