2010.05.21
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とっても楽しい小中高校の建築出前ワークショップ パート2

建築家(グローバルアーティスティック代表) 岩崎 亮平

前回は、ワークショップ(以下WS)の第2回まで紹介しました。(5月7日を参照して思い出してください。)

さて今回は3回目からですが、少し建築の設計に近いことをしました。6人でグループを作り、みんなで模造紙に家の平面図を考えました(写真上)。家族構成はあらかじめグループごとに決めておいて、敷地条件は当日与え(川、池、大木等)、部品として1/20の便器、畳、車等の切り抜きを渡して、スケール感をイメージできるようにしました。決まり事として、道路から玄関に入ること、2階は作らない、近所のことも考えるために、最終的に6グループの模造紙を貼り合わせ1ブロックの街区を作る。としました。そして必ずグループ名とメンバーの名前を書き、発表するときに分かり易いようカラフルに仕上げることとしました。あとは全くの自由です。この学校では、教室の前に広いワークスペースがあったので、WSをするには都合がよく、こどもたちは皆床に横たわって制作していました。


このWSの狙いは、建築を体験するということより、みんなで意見を出し合い、少数意見も取り入れながら合意形成していくことが大切と考えました。しかしながら男子は、女子に言われたとおりに紙を切り抜いたり貼ったりして完全に主導権を握られていました。自分たちの家を思い出して作業しているためか、あまり突拍子のないプランは見当たらなかったのですが、池にさかなが泳いでいたり、温泉、BBQ、遊具は、ほとんどのグループに標準装備といったところでしょうか。
平面図というよりお絵かきのレベルですが、家の中に川が流れていたり、トイレが男女で別れていたり、車2台はよいのですが、どうやって駐車場から出すのかといった、思わず吹き出すのもありました。しかし私たち大人も既成概念にとらわれない発想は学ぶべきですね。


4回目は、いよいよ前回に設計した家のグループ発表(写真中)。1クラス6グループ、3クラスで18グループあるので前半と後半に分けました。1グループ3,4分で設計趣旨や工夫したところを発表し、我々がコメントをしたり、質問をしました。最後に1クラスだけ、6枚貼り合わせて街区を作りました。人前での発表も大切なことです。


さていよいよ5回目は、モルタルでの手型作りです(写真下)。最初に、モルタルは、セメント、砂、水から作るという説明と、コンクリートの強度の話をしました。実際にモルタルを練るところから始めて、それをお道具箱に詰め、その後表面を木ごてでならし、片手で手型をとりました。最後に、用意したビー玉、ビーズ、おはじきで飾りつけをしました。
今回のWSで最も準備と手間がかかるものでしたが、こどもたちはみんな大喜びで一生懸命作っていました。誰もが、モルタルの冷たくて柔らかい感触は初めてなので楽しかったようです。手型を失敗しても、箱を叩いて水を浮かせてまた手を押せることから、地震時の液状化現象の説明もしましたが、理解できたかは疑問です。


最後は、まとめとして、国際理解というテーマで、日本と諸外国の建物、街並み、暮らしの違いを写真を見ながら、クイズを織り交ぜて紹介しました。(ニューヨークの摩天楼、ダコタハウス、ラスベガスのホテル、LAのビバリーヒルズ、サンタモニカの小学校、シドニー、中国大連、ドイツの田舎町、パリの街並みなど)。まだまだ海外の経験が少ないせいか、興味深く聞き入り、途中で質問なども多くありました。LAの写真を見せていくつかの違いのクイズを出しました。(アメリカの信号機は日本と違って縦がた、車は右側通行、ビバリーヒルズの家にはほとんど塀がないなど)
またヨーロッパの美しい街並みや外壁の色を見せて、美しい景観とは何かを問いかけました。やはりこどもの頃から美について考えること、体験することが大切です。

6ヶ月に渡ってのWSを行いましたが、言うまでもなく校長先生、担任の先生、そして現場監督の協力なしではできませんでした。6教室の増築工事も、もう6年前ですが無事完成し、当時の5年生90人は今は高校2年生です。きっとこのWSは記憶のどこかに残っていることでしょう。またがんばらなければ。。。
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岩崎 亮平(いわさき りょうへい)

建築家(グローバルアーティスティック代表)
建築設計の仕事が本業ですが、「こども建築ワークショップ」を主宰し、学校へ出前授業を行っています。子どもに関わること全てが私のライフワークです。子どもは人類の宝者ですから。

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