2010.04.23
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世間から批判を浴びた「私のしごと館」が3月で閉館しました。

建築家(グローバルアーティスティック代表) 岩崎 亮平

皆さんはこの事についてどんな感想をお持ちでしょうか?やっと閉館、それともとうとう閉館。現政権以前から、無駄使いとか政府のお荷物などと言われ、時の大臣が見学に来ては決まり文句のように批判していました。またマスメディアからも例外なく叩かれました。本当に意味の無い建物、施設だったのでしょうか?

巨大な施設の一番奥に、「しごと体験ブース」がありました。美容師、ファッションデザイナー、声優、建築家などのブースが並び、そこで現役のプロフェッショナルがこどもたちに体験を行うものでした。私は建築家ブースの体験講師を開館当初から閉館の7年間関わってきました。といいましても、(社)日本建築家協会から派遣され、約20名の仲間と共に月1,2回のペースでした。
体験の内容は、簡単に言いますと、(1)コンピューターを使って、設計のプロセスをシミュレーション。(2)小さな家の紙模型作り。(3)部屋の部品を並べ替えて家の平面図を作成。の3プログラムで、春、夏の休みでは、少し高度な特別バージョンも行いました。
体験時間は、1回1時間で1日に3回入れ替え、特別バージョンでは午前午後合わせて4時間にもなりました。(1回の人数は6人から24人まで)
対象は、主に中高生ですが、小学校の中学年から大人まで幅広い年齢層の人々が来てくれました。多くは就学旅行や校外学習に利用され、多いときは駐車場が大型バスで満杯でした。

教えていると以外な事もわかり、作品の出来具合い、スピードは学年、性別には全く関係ないという事でした。熱心であるか否かにかかわらず、ほとんどのこどもたちの目は輝き、一生懸命でした。感動の連続です。特記すべきことは、本当に建築が好きな子は女子のほうが多かった事です。私の話を聞くときも真剣でした。
小中高生では学校のキャリア教育の一環で来館しますが、専門学校生、大学生、社会人は現実的に就職、転職を考えて来ます。違う意味で真剣です。

ある時、中学生から進路について相談を受け、後日メールも来て、その後何回かやりとりをしました。既に5年が過ぎているので今は大学生です。建築には進まなかったそうですが、しごと館での体験が今に役立っていると言っていました。

このような内容は、決して国にも届かなかったし、マスメディアも取り上げてないはずです。みんなこぞって無駄使いの施設を大合唱していたのですから。。。
確かに、当時の建設費は膨大で維持にもかなりのコストがかかっていました。しかし「私のしごと館」は営利目的の商業施設ではなかったと私は今も考えます。日本で唯一の本物のキャリア教育の場であったのに残念です。ですから冒頭にお話しした‘とうとう閉館‘という言葉を使わざるを得ないのです。

課題は今後の活用方法ですが、もし私に財力があれば買い取ってもよいのですが。。無理ですね。閉館しても、様々な仕事の体験をしたこどもたちの心の中にしごと館は生き続けることでしょう。ご苦労さまでした。
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岩崎 亮平(いわさき りょうへい)

建築家(グローバルアーティスティック代表)
建築設計の仕事が本業ですが、「こども建築ワークショップ」を主宰し、学校へ出前授業を行っています。子どもに関わること全てが私のライフワークです。子どもは人類の宝者ですから。

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