2010.04.16
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手をつなぐこと

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

意外に思われるかもしれませんが、肢体不自由の特別支援学校では、手をつなぐことはあまり意識されません。

というのも、車いすに乗っている子どもたちの移動を介助する際には、子供の手を握るよりは車いすのハンドルを握っていることが多いからです。

肢体不自由養護学校に勤務し始めた当初は、そのことに気付きませんでした。

肢体不自由養護学校に勤務し始めて3年ぐらい経ったある日、ふとしたときに大学の先輩が書いた文章が出てきました。そこには、手をつなぐことで気持ちがつながっているということが自身の体験とともに表現されていました。
その文章を読んだ時、現在の自分が子供たちと手をつなぐことがあまりないことに気付きました。

それから、車いすを押すときには、できるだけ、片手で車いすのハンドルを握り、もう片方の手で子供の手を握るようにしていました。

この方法は、操作性は悪くなるので、幅があって路面が安定した場所でしかできません。
しかし、子供の手を握ることで手の温かさや心の動きなどを感じることができ、今までよりもゆっくり歩いていることに気付きました。

子供の手を握りながら車いすを押していたとき、その子が手に力を入れました。
急に何だろうと思い、車いすを止めると、その子が大好きな先生が通りすぎていったことに気付きました。
つまり、その子は、その先生と話をしたくて僕の手を握ってその思いを伝えてきたのではないかと想像できました。
そう考えると、今までも同じような場面があったのに、僕はそのことに気づかず、ただ漫然と車いすを押していたかもしれない、と強く反省しました。

子供の気持ちを考えるということは、教室で向かい合っているときに限ったことではなく、いろんな場面で必要であり、教師の感性によって子供たちの自己実現が左右されることもあるという、とても大切なことを教えてくれた出来事でした。

とはいえ、急いでいるときとか、自分に余裕がなくなっているときとか、車いすのハンドルをしっかり握って足早に押していることがあります。
教師である僕がどんな状態にあるときにも、本当にその場面では急ぐ必要があったのか、少し余裕を持つことができなかったのか、しっかり意識する必要があると思っています。

特別支援教育は、何も特別なことではなく、手をつなぐといった一見普通のことに見えることにもいろいろ学ぶことがあり、とても奥が深い世界だと思っています。

今後も、特別支援教育について、できるだけ身近な話題を交え、分かりやすく伝えられるようにしたいと思っています。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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