2010.03.17
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恩師から学んだこと

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長 野村 泰介

大学時代の恩師が30年間勤めた大学を退官されるということで、公開の最終講義が開催されました。最終講義といっても難しい話ではなく、その先生が大学で何を研究されてきたかという軌跡をたどるといったスタイルでした。

さて、私は大学時代、決して勉強熱心な学生ではありませんでしたが、今になって思い返せば、先生に影響されていたんだなぁと思うことがあります。それは先生の教育スタイルである「現地調査には可能な限り学生を参加させ、生きた社会の現実を知ってもらう」ということ。

先生のご専門は社会学。私が学生の頃は、「企業の社会的貢献」というテーマで研究されていました。社会学という性質上、研究対象への直接調査は欠かせません。アンケート用紙を郵送・回収する場合もありますが、実際に現地までおもむき、インタビューなどの調査を行うことも多くあります。その調査の一端を「社会学調査実習」という授業の中で学生たちが担っていたのです。

しかし、私を含め、必ずしも出来のいい学生ばかりとは限りません。ずいぶん見当ハズレなことをして先生にご迷惑もかけたことでしょう。先生としてはそれも承知の上で私たち学生を使っていました。自分の研究と学生の教育を同時に行っていたのです。そのスタイルを大学教員であった30年間続けてこられました。

大学卒業後、私は高等学校の地歴・公民科の教員になりました。教員になって常に頭に置いていることは「不完全な状態でもいい。生徒たちには生身の現実を自分の目で見てもらいたい」ということ。とにかく行動。知識は後からでもいいのです。まず自分の目で確かめる。体を動かしているうちに次第にものごとが見えてきます。そして自分の体験から得たことは忘れません。
このことをモットーに、戦争体験者の聞き取り調査や、地域コミュニティ活動など生徒といっしょに活動し、共に学んでいます。

大学時代の先生が行っていたスタイルとそっくりなことに気づきました。その内容については先生には遠く及びませんが、知らず知らずに影響されていたのですね。

最終講義の終盤、先生はこんな趣旨のことを言われました。「私は大学を去りますが、私が30年の間に蓄積した学問的財産をここにいる教え子のみなさんに使ってもらいたい。」

私は大学で先生から社会学の教えを受けましたが、残念ながら深い研究まで行き着くことはできませんでした。しかし、先生のスタイルはきっちり学ぶことができ、現在の仕事に活かすことができていると思います。そう考えると、大学で得たものは大きいなぁと、卒業から10年経って再確認しました。

野村 泰介(のむら たいすけ)

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長
今年創立125年の女子校の広報を担当しています。岡山市内唯一の女子校として、その特色をアピールできればと思います。

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