2010.03.19
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

卒業

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

教育つれづれ日誌に記事を掲載し始めてからもうすぐ1年が経とうとしています。

この記事が出るころ、真駒内養護学校の卒業式は終了しています。

コーディネーターは、ボランティアの対応や扉の開け閉めや受付など、大忙しです。

そんな中、先日卒業式の練習で、PTA会長の代役として話をすることになりました。
直前まで何を話そうか考えていたのですが、壇上に上がった瞬間、頭が真っ白になりました。
安全策をとって、あいさつだけをすればよかったのですが、やはり何か話したいと思って話し始めました。しかし、頭は真っ白のままで、出てくる言葉にまとまりはなく、結果としては行き当たりばったりの話になってしまいました。

練習後、以前担任していた子どもから
「遊佐先生、話していることがバラバラだよ。しっかり考えておかないとだめでしょ。」
と手厳しい指摘を受けました。

というか、この言葉は、以前僕が彼に言った言葉です。
全くそのとおりです。言い訳できません。
総練習でも話す可能性もあるので、これから原稿を作ろうかと思っています。



話は変わりますが、真駒内養護学校の卒業式は、普通学校の卒業式と若干違いがあります。

まずは、小学生、中学生、高校生が一度に卒業していきます。長年本校にいる先生は、高校生が小学部に入学したころから勤務している人もいますので、感慨はひとしおだと思います。

また、2~3メートルの距離を必死に歩いて校長先生のところまで行こうとしたり、自由が利かない手を必死に伸ばして卒業証書をもらおうとしたりする子どもたちもいて、その姿に、普通学校とは違った感慨を受けることもあります。

そして、卒業は新しいスタートというイメージが強いと思うのですが、本校に勤務してから、卒業式にやっとここまでたどり着いたという思いが通常よりも強く感じられます。
肢体不自由の特別支援学校では、在学中に体調を崩したり、今までできることができなくなったりすることが普通学校より多い割合で起こります。もちろん、順調に成長する子どもが多数ではありますが、いつ体調を崩すのかという心配をしつつ指導しているところもあり、卒業学年の担任になると「元気に卒業式を迎えられるといいな」と思いながら日々を過ごしています。

4年ほど前に、小学部6年生の担任をしていて、卒業式が終わって退場するときに、知らないうちに涙が流れていたことがありました。
以前勤務した学校で卒業学年を担任したときも、自分自身の卒業式ですら一度も泣いたことはなかったのですが、このときは、気がついたら泣いていました。

今、考えてみると、卒業式を元気に迎えられたという喜びや安堵感から涙腺が緩んだと思いますが、自分が泣いていることに気がついたときに、どうして自分が泣いているのか全く分かりませんでした。

とりあえず他の事を考えたり、意味なくジャンプしたりしてその場をごまかしましたが、4月になれば中学部に進学してまた会えるのにどうして泣いているんだろう、と思いつつ車いすを押していたことを覚えています。

このとき、感動したから泣くのではなく、泣いている自分に気づいたことで自分が感動していることを理解することもあるんだな、と思いました。
こんな風に考えるのも、他の人にはない特別装備の認知システムなのでしょうか。

とはいえ、「悲しい」「安心した」「悔しい」「嬉しい」といったように感情に名前がついていないと、知らないうちに泣いているということもあるように思います。
もし、感情があふれてきて混乱しているように見える子どもがいたら、話を聞きながら湧いてくる感情を整理し、「それは悔しかったね」「それは嬉しかったんだね」と、ひとつひとつの感情に名前をつけてあげてください。比較的短時間で落ち着けるかもしれません。


今年、小学部を卒業していく子どもたちは以前担任していた子どもたちです。
先日、手厳しい指摘をしたあの子も卒業します。
僕は、会場の最後列で扉の開閉をしながらその子どもたちを見送ることになります。

たぶん、いろいろな感情が湧いてきて、泣いているかもしれませんし、あふれる感情を受け止めながら、とても冷静に見送っているかもしれません。
どちらになるかは全く分かりませんが、できれば涙は5粒以内にとどめたいと思っています。



さて、今後についてですが、当初、1年間と考えて執筆していましたが、皆さんにお伝えしたいことが少し残ってしまいましたので、今後も執筆を続けようと考えています。

つれづれ日誌第七期も、皆さんを笑顔でつなげられるような文章を目指して頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

(写真上)卒業式会場の装飾。
(写真中)ハトは宙に浮いています。
(写真下)外はまだ冬景色です。
DSC05721.JPGDSC05722.JPGDSC05723.JPG

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop