2010.03.05
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地域学習の授業(2)

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

今回も前回に引き続き、僕が地域学習に同行したときの話をしたいと思います。

前回は、音楽と体育について書きましたので、今回はそれ以外の教科の事例を紹介します。


地域学習では、国語や算数などはどちらかと言えば避ける傾向にあります。やはり、一緒に学習しづらいということが大きなネックとなっていると思います。

しかし、工夫次第では、お互いの違いについて認識できる良いチャンスだとも思えます。

地域学習で、国語の授業「自作の詩の朗読」という計画が来ました。
そのとき担任していたCくんは、言葉にはなりませんが、「あ~」「う~」と感情をこめて声を出すことができます。
Cくんにどのようにして詩の朗読にチャレンジしてもらうか、地域学習校の担任やCくんといろいろ考えました。
そのころ流行っていたお笑い芸人からヒントを得て、画用紙に好きなものの絵を一緒に描き、「好きなもの」という題名で好きなものを僕と一緒に叫ぶことにしました。
発表の意外性や普段はおとなしいCくんが口を大きく開けて声を出す姿に、周りの子どもたちは大喜びでした。

Dくんの地域学習では、「漢字の書き取り」という計画が来ました。
Dくんは、多少字は書けますが、同じ学年の子どもたちと同じ漢字を書くことはできませんでした。みんなと同じ漢字を大きく書くことも考えましたが、いつも養護学校で行っていることをそのまま見せたほうがいいだろうと考え、いつも養護学校で取り組んでいるプリントをすることにしました。
当日、周りの子達が一生懸命漢字の書き取りをしている中、Dくんも一生懸命自分の名前を書く練習をしていました。すると、書き取りが終わった周りの子どもたちがDくんの周りに来て、「上手に名前書けるんだね」「自分で勉強してえらいね」「その鉛筆についているやつ(Dくんのために特別に用意した鉛筆のグリップ)書きやすそうだけど、どこで売ってるの?」など、とても興味を持ってかかわってくれました。
すると、地域学習校の担任の先生もやって来て、出来上がったプリントに大きな花丸を描いてくれました。Dくんは、それがとても嬉しかったようです。

同じように、算数の授業でも学校でやっている計算のプリントを持ち込み、地域学習校の担任の先生にお願いして丸をつけてもらうようにしていました。
その代わり、僕は、周りの子どもたちの丸つけを手伝っていました。

僕は、地域学習に同行し、国語や算数の授業に参加することで、同じではないからこそできることがあることを知りました。
それを知ってから、一見、マイナス面に思えてくることでも「だからこそできること」がないか考えることが増えました。

僕にとって、地域学習の取り組みは、自分が勤務している学校ではない学校で子どもを教育することになるので、とてもプレッシャーのかかる仕事です。
一方、地域学習だからこそ得られることが数多くありました。
中でも、特別支援学校でしか勤務したことがなかった僕が、少しの時間でも普通学校に通う子どもたちと接する機会を持ち、たくさんの子どもたちから刺激を受けたことは、かけがえのない経験になりました。

ちょっと大げさかもしれませんが、地域学習によって人生のチャンネルが変わったような気がします。

同行にかかる費用、地域学習校との打ち合わせ時間の確保、教員間の温度差、自分の中にあるプレッシャーとの戦いなど、乗り越えるものはたくさんあるかもしれません。
しかし、だからこそ、乗り越えたときには素晴らしいものが得られると、僕はそう思っています。

まずはどんな形でもいいので始めてみてください。
そして、細々でかまわないので、続けてください。

地域学習(居住地校交流)がお互いの子どもたちや先生たちにとってかけがえのない経験になることを願っています。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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