2010.02.03
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入試広報

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長 野村 泰介

「入試広報」。学校、特に私学業界独特のコトバです。業務内容は極めて多岐にわたり、その中でも1.入試業務、2.学生・生徒募集業務、3.学校宣伝・広報業務は「入試広報」の三本柱と言われています。

私学の中学・高校で「入試広報」というコトバが使われはじめたのはいつごろからなのでしょうか?本校の場合、以前は総務の仕事がこれらの分掌を受け持っていましたが、15年ほど前に「入試広報部」として独立したセクションができています。

さて、冒頭にも書きましたが、「入試広報」、民間企業の方から見ると「?」な部分が多くあるそうです。小規模な企業を除き、一般的に会社の営業部門と宣伝・広報部門は分けられることが多いです。例えば、ビール会社などで、テレビCMを作った人が小売店へのセールスはしませんよね。でも学校では、学校案内パンフレット作った人が中心となってその対象校(高校の生徒募集なら中学校)にお邪魔し、生徒募集の「営業」をするのです。

したがって私学では「宣伝・広報」=「生徒募集」という形にどうしてもなってしまいます。どの私学も人手不足のため、ひとりで多種多様な仕事を抱えることは当たり前のご時勢ですが、長い目で見るとこの傾向は私学業界にとって良いこととは思いません。

ここ数年、岡山では私学(中学・高校・短大・大学)のテレビCMが増えました。でも、それを見れば見るほど私学の魅力がなくなっていきます。なぜか?それはあまりにも「営業」にがっついた作りのものが多いからです。その学校の本来の魅力が隠れてしまっています。

私は私学業界に入ってからほぼ一貫して「入試広報」セクションと関係しています。かつては「生徒募集のためには、まず広告だ!目立つためにはテレビだ!」と鼻息荒かったのですが、他の学校が色々とやるのを見て、「何か違うな?」と思いました。

3年前、本校では「入試広報」を生徒募集に特化し、広報セクションを分離し、新たに「広報室」という部署を作りました。ブログの管理、マスメディアとの対応が主な業務内容です。校内広報といって、校内での活動を周知する活動も重要な仕事です。もちろん、生徒募集セクションとの連携も続けていますが、やはり、営業と広報では性格が違います。学校の宣伝を何が何でも生徒募集につなげる必要性はないのです。良い広報・宣伝はめぐりめぐって自然と生徒募集に行き着きます。

生徒募集セクションと広報セクションの分離、本校の場合はうまくいっていると思います。お互い、仕事を特化することができ、効率的な業務計画、予算配分が可能になったのです。減少傾向だった生徒募集もプラスに転じつつあります。もちろん、このことは生徒募集・広報の人たちだけの努力ではありませんが、学校全体のマンパワーをこれらのセクションの人たちがうまくまとめて学校の外へと発信できているのです。

まだまだ細かいことを書いていくと1冊の本が書けそうなので、今回はここで止めておきますが、「入試広報」からの脱却に生徒募集のカギがあるかもしれませんよ。

野村 泰介(のむら たいすけ)

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長
今年創立125年の女子校の広報を担当しています。岡山市内唯一の女子校として、その特色をアピールできればと思います。

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