2010.02.19
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地域学習の授業(1)

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

今までも、地域学習に関する記事をつれづれ日誌に掲載し、そのたびに多くの方とお話させていただいています。
その際、地域学習に関して一番多く受ける質問は「実際どんなことをしているの?」というものです。
7回目の記事「地域学習の実際」でも平均的な地域学習の様子をお伝えしましたが、今回は、もう少し突っ込んで、実際僕が経験した授業についてお話したいと思います。

地域学習校との打ち合わせのときには、地域学習のために授業を組み替えることはせずに、いつものとおりの授業をしてください、ということを伝えています。
基本的には、こちらの支援しだいでどんな授業でも地域学習の成果が得られると考えています。

以下の授業も、普段どおりの授業に参加した中での様子です。

一緒に歌うのは難しいけど音楽が好きなAくんと一緒に音楽の授業に参加したことがありました。

打合せのときに授業で歌う曲を教えてもらい、その曲を事前に養護学校で聞かせ、少し練習してから当日に臨みました。
しかし、Aくんは初めて聞く40人の元気な声にびっくりしたのか、表情が硬くなってしまいました。
周りの子どもたちや小学校の先生はあせってしまい、声が小さくなってしまいましたが、「大丈夫だから、そのまま続けて」といって最後まで歌ってもらいました。

歌が終わった後に「たぶん、Aくんは大きな声にびっくりしただけで、歌は好きだから大丈夫だよ」と説明しました。
すると、周りの子どもたちから「それじゃ、もう1回歌ってみよう」と声が上がり、もう一度歌ってもらいました。2回目もびっくりしていましたが、次第に子どもたちの声にも慣れました。そして、曲の最後にはちょっとだけ声も出すようになり、周りの子どもたちを逆に驚かせていました。

器楽演奏の時間があったときには、同じ楽器(鍵盤ハーモニカやリコーダー)ができなくても、お気に入りの打楽器を持ち込み、周りの子どもたちが演奏しているときに一緒に楽器を鳴らして演奏に参加しました。Aくんは、小学校の友達と一緒に演奏したということが自信になったのか、その後の養護学校での音楽の授業ではいつもより多く楽器を鳴らしていました。


あるときの地域学習では、体育の授業でビーチボールを使ったバレーをするという計画が来ました。

そのとき担任していたBさんは介助型の車いすに乗り、自分で移動したりボールを打ち返したりすることが難しい子どもでした。

地域学習校の担任の先生は、打合せの際に、Bさんが参加できる方法を一緒に考えてくださり、Bさんがボールをキャッチできたら1点、という特別ルールを作り、しかも、Bさんがキャッチしやすいようにシーツを使って他の子どもたちと一緒にキャッチするように用意してくださりました。

当日、Bさんは他の子どもたちと一緒に練習し、バレーの試合に参加しました。はじめは相手チームからくるボールをダイレクトに取ろうとし、勢いがありすぎて落としてしまいました。
試合中にBさんのチームメイトはいろいろ考えたようで、「レシーブ→トス→Bさん」という作戦を考え出しました。その作戦が功を奏し、Bさんチームも得点を重ねることができました。
たぶん、一番頑張ったのはBさんのチームメイトなのですが、うまくキャッチできると「Bさんすごいねぇ」とみんなBさんをほめていました。Bさんもとても嬉しそうでした。

当時の記録を見ると、バレーの授業は地域学習校の子どもたちも初めてで、他のチームはバドミントンのようにダイレクトに打ち返している中、Bさんのチームだけが3カウントを上手に活用してゲームをしていた、と書いてありました。
見方を変えると、Bさんと一緒にゲームをすることで、チームで協力してボールを回すことを学習できた、とも考えられます。

今回はふたつの事例を紹介しました。今回紹介した事例を通して「どんな授業に参加しても、工夫次第で可能性が広がっていく」ということが皆さんに伝わるといいなと願い、記事を書きました。

次回も、同じ願いを持ちながら、僕が経験した他の事例も紹介したいと思います。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

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