2010.01.08
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ねずみくんと地域学習

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

新年になり、第1回目の記事です。
通算でも21回目の記事となります。
今年も、わかりやすい記事を書くことを心がけますので、よろしくお願いします。


新年1回目の記事は地域学習についてです。

実は、今年度の地域学習は新型インフルエンザの感染予防のため、9月・10月の直接交流の実施を見合わせ、11月以降も条件付きでの実施となっていました。

真駒内養護学校の地域学習は直接交流の比率がとても多く、昨年度は地域学習の指定を受けている子どもたちの約9割が直接地域学習校へ行って学習しています。そのため、例年一番実施回数が多い9月10月の実施を見合わせたことで、多大なる影響がありました。
子どもたちはとても残念がっていましたが、実施を見合わせたことで本校の新型インフルエンザの感染拡大は最小限にとどまり、子どもたちの健康を守ることができたと信じています。

今後、徐々に地域学習の予定も入ってきていますので、限られた回数の中でさらに地域学習が充実していくことを願っています。


僕は、コーディネーターとして地域学習にかかわり始めたころから、ある言葉について考えています。
「相互理解」
この言葉が意味するところって何だろう、どういう状態になれば相互に理解するということになるんだろう、相互理解ができた先には何があるんだろう…。

現在、僕自身としての答えはある程度持っていますが、それが正しいのかどうかは正直分からないところです。

そんな中、自分の答えを見つける際に役に立った本がありました。
意外にも、それは、交流および共同学習の専門書でも、障害理解の本でもなく、児童書でした。

「りんごがたべたいねずみくん」

大ベストセラー「ねずみくんのチョッキ」のシリーズの本です。以前担任していた子どもが好きだった本で、担任していた時期は幾度となく読んできた本です。

ある日、図書室でその本を見つけ、懐かしさもあり、手にとって読んでみました。

ねずみくんはりんごを食べたいのですが、りんごは高い木の上。他の動物たちが飛んだり跳ねたり長い首を使ったりしながらりんごを取っていく中、自分だけりんごが取れない現実に心が折れそうになっていきます。
最後に出会ったあしかくんも自分ではりんごが取れないのですが……。

改めて読んでみると、以前は感じることができなかったものを感じ取ることができました。

最後にはりんごを手にすることができるのですが、ねずみくんとあしかくんのやり取りとりんごを取る方法に、以前は感じることがなかった強い共感をおぼえました。

お互い、できることや得意なことが違っているからこそ、力を合わせたときの可能性が広がっていく。
そのために、まずはお互いのよいところや苦手なところも含めて丸ごと知るということが大切なのかもしれない。

それだったら、どんなことができるんだろう。

地域学習では、周りの子どもたちと全く同じことをしようとするのではなく、自分ができることで工夫したほうがお互いのよさを知ることにつながるかもしれない。
そう考えると、こちらで補助教材や補助具、参加方法などを工夫していければいろいろな授業に参加できるかもしれない。

いろいろな考えが広がりました。

この考えの広がりが形となったのが、以前紹介したキッズページです。


1冊の絵本が僕の心のチャンネルを変えてくれた、という経験はとても心地よい経験でした。

もし、機会がありましたら、「りんごがほしいねずみくん」を読んでみてください。そして、僕が感じたことの一端でも感じていただければ、とてもうれしいです。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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