2009.12.25
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野生のカン~僕の中の鳥瞰図~

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

先日、「言葉のスリップ」の回で紹介したスープカレー店にリベンジをしてきました。
やはり、おいしいスープカレーでした。前回失敗した食べ残しも、今回はひたすら食べたためにお皿を下げられることもありませんでした。

スープカレー店に行くのは事前に予定していたわけではなく、たまたま近くを通りかかったので急遽決めたことでした。
前回行ったときとは違ったルートで、しかも場所が曖昧でしたが、なんとなくここら辺かな、と思って進むと思ったとおりの場所にありました。

僕は、なんとなくで目的地にたどり着くことが多く、僕はそれを「野生のカン」と呼んでいます。

僕は、市街地を歩いたり車で移動したりしているときに、自分自身を頭上から眺めているイメージを描くことができ、自分の頭の中にある鳥瞰図で自分の位置を認識しながら進んでいます。しかも、その鳥瞰図は自分が向いている方向に自動的に回転してくれますし、意識すれば北を上にしながら移動することもできます。
分かりやすくいうと、頭の中にちょっと性能が悪いカーナビゲーションがあるような感じです。

僕は、それが「標準装備」だと思っていました。しかし、周りの人と野生のカンについて話をすると、「それはないよ」と言われます。僕の野生のカンが「特別装備」だったということに最近気づきました。



僕の野生のカンを象徴するエピソードがあります。
大阪に旅行に行ったとき、大阪駅から地下鉄に乗って観光に出かけました。そして、暗くなってからバスで大阪駅に帰ってきたとき、出るときとは別の出入り口に着いてしまいました。
観光に出かけるときに駅の構内にコインロッカーに荷物を預けたのですが、その場所が分からなくなってしまいました。
大阪駅の案内図も見当たらず、途方に暮れましたが、なんとなくこんな感じかな、と駅の構内図を想像しながら進んでみました。

しばらく進んでいると、目の前に見覚えのあるものが3つぐらい見え、僕が想像していた地図と実際の地図が90度ずれていたことが発覚しました。
その瞬間、自分の頭の中の鳥瞰図が自動的にぐるっと回転し、想像していた地図と実際の地図とがつながりました。
そのあとは、迷うことなく、まっすぐコインロッカーにたどり着くことができました。
大阪旅行では、それ以外の場面でも僕の野生のカンがとても役に立ちました。

土地勘があったり、地図や見取り図があったりすれば、たいてい迷わずにたどり着くことができます。特に、札幌市のように碁盤の目のように東西南北で道路が広がっているととても助かります。
僕の野生のカンはとても視覚的です。

とはいえ、この野生のカンも万能ではありません。僕が苦手としているのは、微妙にカーブしていたり東西南北以外の方角に広がったりする道路です。方向感覚がずれるので、うまく鳥瞰図が描けなくなってしまい、逆の方向に進んでしまうこともあります。
また、思い込みで現実とは違う鳥瞰図を描くこともあり、そうなってしまうと修正するのに相当な時間を要します。大阪旅行でも、なんば駅の地下街では現実とは違うイメージを作ってしまい、間違った地図にとらわれてしまったために見事に迷ってしまいました。
それと、視覚的にルートをイメージしているので、「右」「左」といった言葉を意識しなくても自分の中では
「←あっち」「こっち→」
で通用します。したがって、電話などで「右に曲がってまっすぐに進み、2つ目の角を左に曲がって3つ目の交差点にある交番の斜向かい」などと道を案内されることもとても苦手としています。たまに「右に左折」と言ってしまうこともあります。



最近、自分の特性について考える機会が増えてきました。特に、今回のように人とはちょっと違う自分の特性のことについて意識するということは、自分のよさを認めるという点においてとても大切だと思っています。

今までの僕は、人と違う部分を悪い部分として認識していました。しかし、いろいろな方と話をしているうちに、その特徴が決して悪いことではなく、むしろ自分のよさとして認めることができるようになりました。

人との違いについて考える際、僕がいつも心がけていることがあります。
それは、自分自身や他の誰かの評価をする際に「逆に考えるとどうなるんだろう」と考えることです。たとえば、「説明をするのが下手」だとすれば、それだけ相手の意見に真摯に耳を傾けているとも考えられます。また、「未熟」だとすれば、それだけ成長できる余地がたくさんあるとも考えられます。

逆に考えるということは、自分自身を客観的に捉え、意識してよいところを探すことにつながり、子どもたちが「自分は自分のままでよい」と自分自身を肯定することにつながると考えています。

僕は、この方法を知ってから、とても気持ちが楽になりました。周りの人に対しても笑いを交えながら自信を持って「人とは違う自分の特性」について話せるようになりました。

たぶん、人と違うというのは、ただ単に「人とは違うところがある」という事実にすぎず、それ自体で良いこととか悪いこととかにはつながることはないだろうと思っています。

もし、人との違いについて悩んでいらっしゃる方がいましたら参考にしてみてください。



今回、自分の野性のカンについて考えることはとても楽しい活動でした。
人との違いについて、ただ単純に悪いこととは捉えず、わくわくしながら人との違いについて探し出すことができるような活動ができるといいな、と思っている今日この頃です。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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