2009.12.11
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成功から学ぶ(2)

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

前回は、子どものころの自分の経験から「成功から学ぶ」ことについてお伝えさせていただきました。

今回は、現在の僕の経験をもとに「成功から学ぶ」ことについて書いていきます。

現在、僕は、コーディネーターとしてさまざまな先生たちの授業を見ることや書籍などで他の先生方の実践について知る機会が増えました。
それに伴って、今まで気づかなかったことなどをいろいろ感じることができるようになりました。

僕自身が担任として授業をしていた時代には、同じような授業をしていても、なぜかうまくいくときと、なぜかうまくいかないときがありました。
うまくいかないときには反省して改善しましたが、うまくいったときには、僕は、ただ「よかった」と胸をなでおろすだけで、あまり気に留めていませんでした。

そんな時、算数で位取りについて授業をしていました。1の位に10個以上のタイルがあるときにはそれをまとめて10の棒に換え、その棒を10の位に移動するという課題でした。10進法の基礎となる部分で、なかなか難しい課題なので、時間を取ってじっくり取り組んでいました。そんな中、ある時を境にスムーズにタイルで10のかたまりを作り、10の棒に換えてから上の位にあげることができるようになった子どもがいました。
いつもだったら、うまくいったら「よかった」で終わるのですが、なぜかそのときは「どうしてできるようになったんだろう」、と気になりました。

そこで、今までの記録や、その授業での教材や僕の言葉がけを振り返っていきました。
そのとき、あることに気づきました。
その授業で、僕は10のかたまりを作って上の位に移動することを「10になったら変身してお引越し」という言葉で表現し、それを呪文のように唱えながら指導していました。
子どもたちも、その呪文が気に入り、ぶつぶつ言いながら取り組み始めると、スムーズにできるようになっていったことに気づきました。

このとき、成功の要因として、大切なことを呪文のように唱えて聴覚記憶にも働きかけたことが成果につながった、と推測しました。

それから、他の授業でもキーワードを呪文のようにぶつぶつと唱えながら教えていくようにしてみました。
それでもうまくいかないときもありましたが、呪文のように唱えることでうまくいくときのほうが多く、このエピソードのおかげで「聴覚記憶に働きかけることでできることが増える」という新しい手立てを得ることができました。

はじめのほうにも書きましたが、失敗したときにはその要因について反省することが多い反面、成功したときは「よかった」で済ませていることがあるのではないかと思います。
成功したときこそ、成功の要因を探り、他の場面でもその要因を満たすことで成功できる環境を整えていくことが必要だと思います。

少し離れた場所から授業を見ていると、子どもの心が動いた瞬間、というか、授業が回りだしたきっかけが良くわかります。それは、授業計画の中に巧妙に組み込まれている場合もありますが、子どもや教師の何気ない言動である場合が意外に多かったりします。授業者は授業展開に一生懸命なので、何気ない言動がきっかけであることに気づかず、「なんだか良くわからなかったけどうまくいった」と感じることが多いと推察します。


「失敗を減らそう」というのと、「成功を増やそう」というのと、どちらも同じように見えますが、その方法や言葉から受ける印象はかなり違います。
子どもたちだけではなく、先生たちも成功から積極的に学び、成功経験を印象付けるためにも、うまくいったときのことを積極的に記録に残すことをお勧めします。

成功から学び、自分の力を信じられるようになりたいな、と思っている今日この頃でした。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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