夏休みに開催された肢体不自由教育専門性向上セミナーの全体講評の中で、東京都立港特別支援学校の川上康則先生はこのようなことをおっしゃっていました。
「自分で振り返って悪いところを修正する力がない人は、失敗から学べずに自己評価を下げていく」
僕は、この言葉を聞いたときに、自分自身のことを思い返していました。
小さいころの僕は、失敗することに対して慣れなかった人間です。
いまだに、小さいときの失敗を鮮明に思い出しては、「あ~」と声を出して落ち込んでしまったりします。
どのぐらい鮮明に思い出せるのかは、別の機会に説明しますが、かなり鮮明なので、周りにいる人たちに悟られないよう、その記憶を頭の片隅に追いやるのに苦労しています。
小さいころの僕は、どうして失敗したのかがよく分からず、また、同じような失敗をしても同じ種類の失敗だとは認識されないことが多くありました。
たとえば、ある人に対して話しかけたときに「あっち行って」と怒られたとします。相手は、そのときたまたま忙しかったのでしょうが、僕にはその原因がよく分かりませんでした。
以前、同じような状況で「忙しいからあとにしてね」と言われたこともあったのですが、それとこれとは別だと思っているので、悩んだ挙句、「嫌われているみたいだから、しばらくはかかわるのはよそう」ということになります。
本当は、時間に余裕がありそうなときにもう一度行けばいいのでしょうが、「あっち行って」と言われたことがあまりにも鮮明すぎて、自分から声をかけられなくなってしまいます。
しばらくして、相手から笑顔で声をかけられると「もう怒っていないんだ、よかった」と安心するということになります。
毎日こんなことがあるわけではありませんが、こんな時、失敗から学ぶ内容に問題が生じやすく、失敗から間違った方法を学んでしまうことがありました。
また、成功しても成功の要因が分析できずに「たまたまうまくいっただけ」と思ってしまうこともあるので、成功からも学びにくい状況になっていたように思います。
今は、自分の思考回路についてだいぶ理解してきたので、成功や失敗の原因を突き詰めて考えて今後どうすればいいのかを考えられるように訓練しています。
たとえば、さっきの例でいけば、怒られた理由を考えていきます。そこで、その人がどんな様子だったのかを手がかりに、「忙しいところにしつこくしたから怒ったのであって、決して僕のことが嫌いになったわけではない」と結論付けます。
次に、その対応を考えます。この場合は、「あまり忙しそうではないときに話しかけ、ちょっと忙しそうだったらさっさと引き下がる」となります。
最後に、その内容を一度頭でシミュレーションしていきます。視覚的に印象付けて、自信を持って堂々と声をかけられるようにしていきます。
すべてがそうではありませんが、僕が失敗から学ぶにはこれくらいのプロセスが必要なときもあります。
学校の先生は、僕も含めて、わざと失敗するよう場面を設定しつつ、それを乗り越えさせることで力を付けさせるという手法を取ることがあります。
それで新しい力を身に付け、困難を乗り越えたことで自信をつける子どもたちがいることも事実ですので、それを否定するわけではありませんが、自己修正力に課題がある人たちは、何か別の方法が必要だと思います。
今までの方法で力が身につかなかった子どもたちに対しては必ず成功できるような方法で教えていくと、それまでとは違った表情を見せると思います。
必ず成功できるようになってから、徐々に支援の手を減らしたり、課題を増やしたりすることで、どうすればうまくいくのかが分かるようになり、自信を持って取り組むことができるのではないかと思っています。
つまり、「成功から学ぶ」ことが大切なんだと思います。
たとえば、筆算のときに縦に補助線を引いて位取りを分かりやすくする、友達とトラブルになりそうになったら教師が間に入って状況を整理してうまく引き下がれるようにする、といったようなちょっとした工夫で失敗する経験が減り、その子の様子が大きく変わることもあります。
ちょっとした工夫ついては、大きな本屋さんに行くと発達障害の指導に関する本がたくさん見つかりますので、自分が気に入った本を探して参考にしてみてください。
次回は教員の側からの「成功から学ぶ」ことについてお話したいと思います。
「自分で振り返って悪いところを修正する力がない人は、失敗から学べずに自己評価を下げていく」
僕は、この言葉を聞いたときに、自分自身のことを思い返していました。
小さいころの僕は、失敗することに対して慣れなかった人間です。
いまだに、小さいときの失敗を鮮明に思い出しては、「あ~」と声を出して落ち込んでしまったりします。
どのぐらい鮮明に思い出せるのかは、別の機会に説明しますが、かなり鮮明なので、周りにいる人たちに悟られないよう、その記憶を頭の片隅に追いやるのに苦労しています。
小さいころの僕は、どうして失敗したのかがよく分からず、また、同じような失敗をしても同じ種類の失敗だとは認識されないことが多くありました。
たとえば、ある人に対して話しかけたときに「あっち行って」と怒られたとします。相手は、そのときたまたま忙しかったのでしょうが、僕にはその原因がよく分かりませんでした。
以前、同じような状況で「忙しいからあとにしてね」と言われたこともあったのですが、それとこれとは別だと思っているので、悩んだ挙句、「嫌われているみたいだから、しばらくはかかわるのはよそう」ということになります。
本当は、時間に余裕がありそうなときにもう一度行けばいいのでしょうが、「あっち行って」と言われたことがあまりにも鮮明すぎて、自分から声をかけられなくなってしまいます。
しばらくして、相手から笑顔で声をかけられると「もう怒っていないんだ、よかった」と安心するということになります。
毎日こんなことがあるわけではありませんが、こんな時、失敗から学ぶ内容に問題が生じやすく、失敗から間違った方法を学んでしまうことがありました。
また、成功しても成功の要因が分析できずに「たまたまうまくいっただけ」と思ってしまうこともあるので、成功からも学びにくい状況になっていたように思います。
今は、自分の思考回路についてだいぶ理解してきたので、成功や失敗の原因を突き詰めて考えて今後どうすればいいのかを考えられるように訓練しています。
たとえば、さっきの例でいけば、怒られた理由を考えていきます。そこで、その人がどんな様子だったのかを手がかりに、「忙しいところにしつこくしたから怒ったのであって、決して僕のことが嫌いになったわけではない」と結論付けます。
次に、その対応を考えます。この場合は、「あまり忙しそうではないときに話しかけ、ちょっと忙しそうだったらさっさと引き下がる」となります。
最後に、その内容を一度頭でシミュレーションしていきます。視覚的に印象付けて、自信を持って堂々と声をかけられるようにしていきます。
すべてがそうではありませんが、僕が失敗から学ぶにはこれくらいのプロセスが必要なときもあります。
学校の先生は、僕も含めて、わざと失敗するよう場面を設定しつつ、それを乗り越えさせることで力を付けさせるという手法を取ることがあります。
それで新しい力を身に付け、困難を乗り越えたことで自信をつける子どもたちがいることも事実ですので、それを否定するわけではありませんが、自己修正力に課題がある人たちは、何か別の方法が必要だと思います。
今までの方法で力が身につかなかった子どもたちに対しては必ず成功できるような方法で教えていくと、それまでとは違った表情を見せると思います。
必ず成功できるようになってから、徐々に支援の手を減らしたり、課題を増やしたりすることで、どうすればうまくいくのかが分かるようになり、自信を持って取り組むことができるのではないかと思っています。
つまり、「成功から学ぶ」ことが大切なんだと思います。
たとえば、筆算のときに縦に補助線を引いて位取りを分かりやすくする、友達とトラブルになりそうになったら教師が間に入って状況を整理してうまく引き下がれるようにする、といったようなちょっとした工夫で失敗する経験が減り、その子の様子が大きく変わることもあります。
ちょっとした工夫ついては、大きな本屋さんに行くと発達障害の指導に関する本がたくさん見つかりますので、自分が気に入った本を探して参考にしてみてください。
次回は教員の側からの「成功から学ぶ」ことについてお話したいと思います。
遊佐 理(ゆさ おさむ)
北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。
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