2009.08.21
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肢体不自由教育専門性向上セミナー

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

7月30日・31日に北海道拓北養護学校を会場に第4回北海道肢体不自由教育専門性向上セミナーが開催されました。
当日は、北海道内の特別支援学校や小学校や中学校の先生たちを中心に300人以上の参加者を迎え、とても大規模な研修会となりました。当初の予想をはるかに越える参加者の多さに、この分野の関心の高さがうかがえました。
僕も事務局員の一員として運営のお手伝い等をさせていただいていました。

3月まで教育つれづれ日誌の執筆者だった川上康則先生(東京都立港特別支援学校主任教諭)の講演や、長沼俊夫先生(国立特別支援教育総合研究所教育支援部総括研究員)の研究発表をはじめとして、専門的な分野の分科会や、夏休み中の児童生徒に学校に登校してもらっての授業公開など、とても充実した内容の2日間だったと思います。


今回の専門性向上セミナーで授業を公開してくださった先生のお話を聞かせていただいている中で、「自閉症の子に対してしていたことが肢体不自由の子にも活用できることがわかって驚いた」というようなことをおっしゃっていました。ちなみに、その先生は今年の4月に知的障害の養護学校から拓北養護学校に転勤されたそうです。

確かに、それぞれの障害に特有の指導方法があり、肢体不自由でいえば、体の動きを丁寧に指導する指導などは肢体不自由教育特有であるともいえます。その一方、子どもたちが抱えている問題を振り返ってみると、感覚入力やつまずきの原因、支援のポイントなどは、それほど変わりがないようにも思います。


また、1日目の午後に行われた分科会では、運動、視覚認知、摂食、言語、アシスティブテクノロジー(障害者の生活を助けるさまざまな技術のこと)といった多種多様な分科会が用意されていました。
聞いたところによると、それぞれの分科会で、それぞれの分野同士が密接なかかわり持っていること(たとえば、視覚認知の問題と身体の動きの発達には密接なかかわりがあることなど)に言及されていたとのことでした。

障害種別間のつながりと同様、その子の中でも視覚や聴覚、認知や思考の様式、表現手段などは独立するものではなく、それぞれが絡まるように密接な関係があるということを感じました。


われわれは、「身体の動きは問題ないけど、ものの見え方に課題がある」とか、逆に「認知や思考は問題ないけど、身体の動きに課題がある」ということを思いがちです。
僕も、以前は「字は読めるのに書けない」「話は上手なのに計算が苦手」「ひらがなの『は』だけ書けない」といったようなことを思い、目に見える課題だけを指導していた時期がありました。それが障がいに対応した指導だと思っていました。

しかし、今回の講師であった川上先生のお話や分科会でのお話を聞き、子どもたちの行動や思考には、ひとつひとつしっかりとした意味が見えない部分にもあり、そこに、より良い指導を考える際のヒントがあるということを知りました。
そう考えると、今まで僕が指導した子ども達の行動や思考の意味を数多く見落としていたこと気づきました。その子たちには申し訳ないことしたな、と反省しています。


特別支援教育とは、子どもたちの困難の表面に出ていることに対応するだけではなく、背景にあるこんがらがった要因をひもとき、「こんな要因があるのなら、あの方法で指導するとよくなるかもしれない」と仮説を立てながら指導方法や関わり方を吟味していくことであると思います。


早速、職員室では、川上先生の講演の内容を基に日々の授業を考え直す話をしていました。
僕も、以前の指導を振り返り、担任していた子どもたちが抱えている背景に思いを馳せています。

日々の業務で忙しく、実践を振り返る時間的余裕がないのは現実ですが、こんな風に、毎日の実践について、短時間で振り返る心の余裕も必要かもしれません。

長沼先生からの研究発表の中で、「暗黙の前提となっているものの見方や考え方についても再度吟味しながら、その状況や出来事の意味を省察し、探求することが必要である」という言葉がありました。
まさに、そのとおりだと思います。


今回の専門性向上セミナーを通して、僕にいろいろ考えるきっかけを与えてくださった講師の先生や運営の先生、参加者の先生、すべての方々に感謝します。

お疲れ様でした。
そして、ありがとうございます。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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