2009.08.04
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脳の働きと食生活  情報の共有化と学び合い

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「今度、3年の保護者に話をすることになったんだけど」
栄養職員が試食会やPTA行事の中で講話を依頼される機会が増えてきています。
もちろん、こちらからの働きかけもありますが、中には、得意分野以外のテーマをふられることもでてきます。
「スポーツと食事については、なんども話しているし、自分でも納得しているのだけれど、脳の働きと栄養って、初めて話すので、何かよい資料がないかなぁ」
ある会合の後のできごと。
それならばと、5、6年生に朝ごはんの大切さを紹介する際に作ったパワーポイントの資料を紹介しました。
脳の働きと、なぜ、朝ごはんを食べるとよいのか、どんなものを食べたらよいのか、どうして、サプリやジャンクフードではいけないのかを考えるための資料です。紙芝居式に読み上げると10分ですが、途中で児童と一緒に考えたり、作業を加えたりとすると50分の授業内容になります。
5年生には、この中から、「どんなものを食べたらよいの」までをピックアップし、「自分で朝ごはんを作れるようになろう」と家庭科の調理実習につなげました。
6年生には、受験シーズンを前に、脳の働きと生活リズムを紹介します。
保護者には、夜遅くまで勉強するよりも、朝ごはんをしっかりと食べさせた方が記憶力や思いだす力がアップする仕組みを紹介し、学力と食習慣の関係を知ってもらい、料理教室を行いました。

「使う使わないはともかく、手元に置いておくと何かの時に役立つかもしれないので、データを送りますね」
「私ももらえる?」
「どうぞ、どうぞ」

 「食育」に関する教科書はなく、資料や教材もまだまだ手探りで作成してる段階です。市販のものも活用しながら、栄養職員や栄養教諭が情報交換をすすめ、互いの力を高められるとよいと思います。

教育現場にも成績主義が定着しつつあり、自分の財産は自分のものとしないと、いくら頑張っても他者との差別化が図られず、「みんなやっているよそんなことは」と、陰となり、縁の下の力持ちとなってがんばっている仲間が、正しく評価されない場面も出ています。
それぞれの持つ知識や技術を出し合い、そのことでみんながさらに高めあえられる。「財産を共有することが大切です」と様々な講習や講演の中で「情報や知識の共有化」を講師の先生が呼びかけられますが、互いに助け合おうとする気持ちを阻害しているものは何かを考えた方がよいと思うのですが・・・。

教科書も指導書もない「食育」。
「学びの場」のようなネットワークを地域に広げていくためにはどうしたらよいのか。
東京都が1区市に1名しか栄養教諭を配置しない意味のひとつがわかった気がしました。

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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