2009.08.07
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青空

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

僕は、現在は担任を持っていません。特定の時間以外は授業に入らず、多くはデスクワークや出張をしています。
本来であれば、現在進めている授業の話などもできれば、と思っていますが、それは難しい状況です。

今後、授業の話をする際には、以前担任していた学級での話がメインになると思います。情報が古くて申し訳ありませんが、古さを感じさせないように努力します。


以前、この学校で担任していた学級に、自分で身体を支えることが難しく、介助用の車いす(写真上:ただし、本人のものではありません)に乗っているときや教室で休憩しているときもあお向けに近い形で天井を見ていることが多い子どもがいました。

学校は、基本的に座って正面を見る子供のためにデザインされています。肢体不自由養護学校である真駒内養護学校でもそうです。したがって、自力で身体を支えることが難しい児童に対しても、様々な支援をしながら可能な範囲で座らせる、正面を向かせるという取り組みをしています。

いろいろな体勢を取ることは悪いことではなく、様々な支援を受けながらいろいろな姿勢になることは大切で、特に正面を向いて学習をすることが認知の発達によい影響があるとも言われています。

とはいえ、からだの支えがしっかりしていない子供が正面を向くということは、身体のどこかに無理が生じやすいのです。僕は、自分の未熟さから、その子に対しても長時間楽に座らせることができず、申し訳ないな、と思っていました。

僕の心のどこかに「みんなと同じように正面を向いていたほうが楽しいはず」「上ばかり見ていてもつまらない」という先入観があったように思います。


そんなある日、天気がいい昼休みにその子とグラウンドに出てみました。
「気持ちがいいね」と僕が言うと、その子どもは返事もせず、ただ上を見ているだけでした。

そのとき僕は、その子には何が見えているのだろうか、と思い、その子を車いすから降ろし、一緒にグラウンドの地面にあお向けに寝転がりました。

そこに広がっていたのはどこまでも続く青空、小さな雲、くるくると回るトンビでした。地面からの温もりもとても心地よく感じました。

僕は、そのとき、思わず「本当に気持ちいいね」とつぶやきました。すると、今までじっと空を見つめていたその子がニコッとしました。「ようやく気づいたか」と言わんばかりに。
そのとき、「あお向けでもいいことあるんだな」ということをその子から教えてもらいました。


その後、教室にあったホワイトボードを改造し、下向きに傾斜をつけ、あお向けでも見やすいようにしました(写真中)。
その子供はちょっとうれしそうで、いつもよりも学習する時間が増えました。


たぶん、ホワイトボードを見やすく傾斜させるといったような、子どもに合わせて環境を変えていく配慮は、特別支援学校では特別なことではなく、どこでもやっていることであると思います。敢えてこの場で書くことではないかもしれません。

ただ、「子どもの目線でものを見る心の余裕をもつことで、新しいことが見えてくる」「先入観にとらわれず、子供にって良いと思うことは思い切ってやってみることが大切である」ということをお伝えしたくて、今回このエピソードを用いました。
皆さんの実践の参考になれば、とてもうれしいです。


余談ですが、今回、初めて写真を掲載してみました。ついでに、わが校の写真も掲載しました(写真下)のでご覧になってください。
File1.jpgFile2.jpgFile3.jpg

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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