2009.05.26
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「やだ!」   学びの機会

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「やだ!」
自分の席に戻るように声をかけた途端、元気な返事がかえってきました。
 本校のランチルームは2クラスが入る、ゆったりとした広さとテーブル数があります。昨年度まで、この部屋は、好きな席で好きな人と食べられる「楽しい」食事の場としての位置づけが強かったようです。
4月に本校に着任し、食事の様子を観察したところ、「食事のマナー」について課題が多いと感じました。横をむいて食べる、立て膝、渡り箸、食事の準備中、食事中にも部屋の中を走り回る。口の中に食べ物をいれたまま話す・・・2年生から6年生まですべての学年にみられるこれらの課題は、ランチルームでの食事の際に、特に、著明に現れているように感じました。
「楽しい」ことが優先されるランチルームでは、子どもたちは自由なスタイルで食事の時間を過ごします。それは正に、家庭での食事の風景や生活態度を表しています。

「『食育』よりも楽しい事のほうがよい」
PTA行事で、親子での「箸づくり」が提案された際のこと。「『食育』は堅苦しい物、面倒な物、つまらないもの」という感覚が、保護者の方々には根強い意識としてあることを感じました。
それは当然、家庭での様々な場面での子どもたちへの声かけ働きかけにも影響をおよぼしているのでしょう。

「やだ!」そういえば、自分の意志が通る。我慢することが苦手。
「食事のマナーは、みんなが楽しく食事をするための約束事です。自分だけが楽しいのではなく、一緒に食事をする人、自分の健康のこと、食事を作ってくれる人、食べ物の命に対する思いやりの気持ちの表れです。」
「食」を通して様々なことが見えてくる。だからこそ「食育」が重要視されています。
どんな場面でどんな“学びの場”を提供していけるのか。
そして、学んだことは生活の中でどのように活かされるのか。

「やだ!」
「じゃぁ、先生もやだ!」
また、新しい席に座ろうとした○○君の席に先に座ってひとこと。
“えっ”という顔をして、しぶしぶ自分の席に着く気に・・・
そうかぁ、「やだ!」って言われる気持ちが一瞬わかったのかな。

何がきっかけとなって気づく時がくるのか。
「食育」の大切さも、焦らずゆっくりと取り組みを続けていくことで、いつか気づいてくれる、気づかないうちに身についている。
そのためには、何ができるのか。自分自身もまだまだ“学び”の最中です。

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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