2009.03.17
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目立たない楽器です

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

 先日、吹奏楽部のファイナルコンサートがありました。このコンサートを最後に6年生が引退します。卒業式まであとわずか。委員会やクラブ、なかよし班活動、学校行事の様々な場面で小学校の児童を助け、ひっぱってきてくれた6年生に「ありがとう」の気持ちをこめて、送り出したいものです。

 コンサートの中で、楽器の紹介がありました。「チューバ(正式名テューバ)は、目立たない楽器です」。トランペットやバイオリンなどと異なり、見た目も地味。演奏も担当するのは伴奏部分。注目を集める花形の楽器とは異なります。「今日は、いつもは目立たないチューバが、思い切り目立てる曲を演奏します」。「象」という曲を演奏し終えると、「また、目立たなくなります」と、もとの席に戻っていきました。
子どもたちの演奏を聴きながら、「人間関係も一緒だなぁ」と思いました。目立つ子もいれば、他の子の陰に隠れてしまいがちな子もいる。しかし、色々な個性をもった一人一人が、それぞれの役割をしっかりと果たし、そうして、ひとつのクラスが成り立ち、グループの輪が成り立ち、家族が成り立ち、社会が成り立ち・・・子どもたちの中には、ひどくマイペースな、厳しい言い方をすれば自分勝手な行動や言動をする子どももいます。しかし、一人でも、勝手な音を奏でてしまったら、演奏は台無しになってしまう。「どうせ私なんか」「どうせ僕なんか」そんなことを思って手を抜いてしまったら、コンサートは台無しになってしまう。みんなが周りの人のことも認め、考え、一緒に「合わせよう!」と頑張るからこそ、きれいなメロディが生まれる。
吹奏楽部のきれいな演奏を聴きながら、子どもたちにも、最初は雑音だらけでも、やがて相手の音を認め、自分の音をみがき、生活の中でも、きれいなハーモニーを奏でてほしい物だと願わずにいられませんでした。

 給食も子どもたちの目には直接見えないところで頑張ってくれる人がいます。野菜を育ててくれる人、牛を育ててくれる人、パンを運んでくれる人。調理員さん。だれか一人でも手を抜いたら、安全でおいしい給食を子どもたちに提供ができません。
「チューバは目立たない楽器です」それでも、無くてはならない楽器です。目立たないチューバの音にも耳を傾けられる。6年生のみなさんには、そんな、豊かな心を持った大人になってほしいと思います。

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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