2009.03.11
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卒業式に思い出した3年前の出来事

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長 野村 泰介

3月1日に高校の卒業式がありました。今年卒業する彼女たちが1年生のときに1年間だけ担任をした学年です。

式が終わって、玄関を歩いていると、一人の生徒が照れくさそうに「先生、ありがとっ!うち、卒業できたわ!」と一言。その横を歩いていたその子の母親が、「3年前、先生に言われた約束、きっと守らせますから・・・。」とつけ加えました。

この瞬間、3年前のある日のことを思い出しました。

私のクラスの中のひとり、学習能力は非常に高いのですが、将来に対する目的を見つけることができず、悩んでいる子がいました。いつも「学校を辞めたい」と口ぐせのようにこぼします。クラスで決められたこと、たとえば掃除当番や日直の仕事なども手を抜き、担任である私と毎日のようにバトルを繰り広げていました。ここには書ききれないほど色々なことがありました。正直、この子は学校続けられないかな?と思い始めたころ、その子と母親と私の三者で今後のこと(学校を続けるか、辞めるか)を話す機会を持ちました。

その子は学校を辞めたい、母親は辞めさせたくないというスタンス。私は中立の立場をとり、親子のやりとりを見守りました。無言でうつむくその子と涙を流す母親。重苦しい空気の中、ただ時間だけが過ぎていきます。

なんとかしなければ・・・このままだと子どもの無言の圧力に母親が負けてしまう。思わず出てきた言葉が以下のこと。

「今年、学校は120歳の誕生日を迎えた。君はその記念すべき120歳の誕生日の歳に入学してきたんよね。あと30年たったら今度は学校は150歳の誕生日だ。そのとき、君は何歳だ?46歳か。お母さんと同じくらいだよな。実は、私は150歳の誕生日の年に60歳になって学校を定年になるんだ。私からのお願いをひとつきいて欲しい。私が定年になる年の150周年創立記念日に同窓会をしたいんだ。そのとき、今のお母さんくらいの歳になった君もぜひ、出席して欲しい。でも30年の間には引越しもするだろうし、結婚して姓が変わるかもしれない。学校を卒業してないと、「卒業生名簿」に載らない。中退しちゃうと連絡取れなくなっちゃうかもしれないんよね。だから、卒業して欲しい!!」

本当に思いつきの言葉で、大したことは言えませんでしたが、そのときの本当の気持ちでした。いい終わったあと、その子と私の頬になぜか涙がこぼれていました。

結局、この子は中退を思いとどまり、2年、3年と進級し、決してスムーズとは言えませんでしたが、何とか進学先も決まり、卒業することができました。
あの涙の三者面談から3年。私自信、日々の多忙の中で忘れかけていましたが、その子とお母さんが思い出させてくれました。

ああ、本当にこの仕事をやっていて私は幸せだなぁと感じた瞬間でした。

野村 泰介(のむら たいすけ)

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長
今年創立125年の女子校の広報を担当しています。岡山市内唯一の女子校として、その特色をアピールできればと思います。

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