2009.01.20
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全国学校給食週間 給食で伝えるもの

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「小豆、手も付けないんですよ!」
1月11日の鏡開き、15日の小正月にあわせて、「白玉ぜんざい」「小豆粥」を給食で出した時のこと。
「家で、食べさせないから、学校で食べられないのよ」「小豆は、日本の食文化に欠かせない物なのに」
担任の先生が、いたくご立腹の様子。

日本の伝統行事には「豆」をつかった食べ物が度々登場します。赤飯や打ち豆、おはぎetc
日本の風土にあった、健康のためにもよい豆。昔から日本人の食を支えてきた大切な食材です。
しかし、豊富な食べ物に囲まれ、いつしか嫌煙される食べ物の一つになってしまいました。

 「お節食べた?」と聞くと、半分くらいの子どもが「嫌い!」「好きなのしか食べない」と返事をします。テーブルにはあがっているが、特に食べなくてもよいという雰囲気があるようです。既に、お節料理が食卓に並ばない家庭もありました。もともと、日持ちのよい、縁起のよい料理を集めたお節料理。大人が働きかけなければ、子どもが進んで食べようとはしないと思います。しかし、クラスに数人は「え~!旨いじゃん」「全部食べるよ」という子どもも。お母さんやお父さんが“お節料理を食べる”という週間を小さい頃からつちかってきたのでしょう。
「嫌いだから食べない」「食べなれないから嫌いな味」まさに悪循環を繰り返し、やがて、この子どもたちが家庭を持った時には“お節料理”は食卓から消えてしまうのでしょう。

 学校給食では、様々な料理や食材を提供しています。国際理解のために、海外の食べ物や料理も紹介しています。しかし、最近は、「『日本食』『日本の伝統食』を子どもたちが知らないのは、日本人として、恥ずかしいことではないか」また、「日本の自給率や、地場産のものを取り入れようと考えると、子どもたちには嫌われても、和食を多く取り入れたほうがよいのではないか」と考える学校も増えてきています。

 これまで、家庭で当たり前のように伝えられていた日本の「食」の姿が、学校で教え、伝えていかなくてはならなくなりました。これは、食だけではありません。生活習慣やマナーについても、家庭で学ぶべきことが学ばれずに就学してくる子どもが増えています。

 「食」の場は、人が、人として生きていく上でとても大きな役割を担っています。そもそも、親に対する尊敬の念や信頼といった感情は「ご飯を与えられる」ということから始まるのではないでしょうか。
お金だけ渡され「好きな物を食べなさい」と言われれば、ご飯は、親ではなく、お金が与えてくれる物になっていきます。「親がいなくても、お金さえあれば、生きていける」とすり込まれていきます。

 「食」の場を通して、家族で協力したり、我慢したりと社会のルールやコミュニケーション能力も身につけていきます。「食べ物」は体に栄養を与え、「食事の場」は心に栄養を与えていくのだと思います。

 今月は「全国学校給食週間」があります。食べ物が満ちあふれても「学校給食」で伝えなくてはいけないことは、増える一方です。どんなことをどのように伝えていったらよいのか。子どもたちばかりではありません。(食の形態が既に変わってしまった中で育った)若い先生が増えていく中、給食を通して見えてくる問題をどのように先生方とも共有できるのか。「小豆、手も付けないんですよ!」そんなふうに怒ってくれる先生が残っているうちに「学校給食週間」の場を活用して、給食の意義を広めていきたいものです。


写真上:行事食「鏡開き」 白玉ぜんざい
写真中:行事食「小正月」 小豆粥風デザート
写真下:あずきつかみ
zennzai.jpgazukigayu.jpgazukitukami.jpg

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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