2008.12.23
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嫌いなものは残していいの?  こどもと先生の信頼関係

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「先生!ネタ切れだったんでしょう」
  先週、子ども達が教室で読む「今日の給食」のプリントで「牛乳」を取り上げた時のこと。「寒くなって、牛乳がたくさん残るようになったから、紹介したんだよ。」「え~!“絶対!ネタ切れだ!”ってみんな言ってるよ」信じてもらえません・・・
毎日給食につく牛乳。「給食には牛乳」というイメージがしっかりと定着しているようで、「なぜ、牛乳?」と聞くと「栄養があるから」「カルシウムが多いから」という答えがすぐに返ってきます。あまりにポピュラー過ぎて、あらためて紹介すると高学年には物足りなかったのでしょう。

「お母さんが、飲まなくてもいいっていったもん」何人かの子どもからこんな声を聞くことがあります。「嫌いなものは残してもいい」それは、子どもたちにとってはとてもうれしいことでしょう。「夕飯たくさん食べてるから大丈夫」といって給食にまったく手をつけない子もいます。しかし、「嫌いなら残してもいい」それは、知らず知らずのうちに「自分の気に入らないことは、やらなくてもいいのよ」と教えているのです。「だって○○しているからいいんだ」「お母さんがいいっていった」先生がいうことに対して言い訳をしたり、先生のいうことは聞かなくてもいいという態度や考えを植え付けてはいないでしょうか。

「和食に牛乳は・・・」たしかに私も「う~ん!?」と思うこともあります。しかし、子どもたちを将来にわたって健康に過ごさせるために、また、「どうして毎日牛乳なの?」と疑問をもつことから、子どもたちの“考える力”を引き出してあげられるのではないかと感じています。栄養補給だけなら、今や、お母さん方でも完璧なお弁当を作れる時代になっていると思います。しかし、学校給食は“給食”という時間を通して、栄養以外の多くのことも学ぶ場として存在しています。体の栄養・心の栄養。時には“我慢”することを求めることもあります。しかし、その我慢も、成長期にある子どもたちには、「食べる」「食べない」というレベル以上の何かを身につけさせているはずです!!

アレルギーで食べられないお子さんや、体調が悪いお子さんに無理に食べさせることはありません。担任の先生方が、その時その時に応じて、その子のクリアすべき課題を考えて臨んでいらっしゃいます。「食べる」「食べない」毎日が子どもたちとの駆け引きです。子どもたちが可愛くなければ、何を食べようが、何を残そうが何もいいません。叱ったり、注意をするのは、本当にエネルギーがいることです。ご家庭での子育てと変わらず、親の心子知らず。先生方の愛情に気付いてくる日はいつ来てくれる事やら・・・
“牛乳”1本でこれだけ話が広がってしまう。栄養満点の牛乳には、まだまだ、秘められた力が隠されているのかも。

写真;3年国語で「すがたをかえる大豆」を習ったあと、本当に大豆が豆腐に変身するのか実験してみました。

写真上:「くだく」に挑戦!
写真中:砕いた大豆に触ってみよう(大豆・水に浸した大豆・生呉・ゆば)
写真下:大豆のなかまを探そう みんなで○×クイズ
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宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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