2008.11.25
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正直者が馬鹿をみる?  事故米と自給率

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「国産のタケノコが、手に入らなくなりました」
給食の食材を納めていただいている業者さんから電話が。

中国産の食材に不安を感じる消費者が増え、国産のタケノコの需要が一気に増えたため、国産品の在庫が品薄になったそうです。
自給率40%の痛手を痛感しました。

先日、「事故米の真相」という番組を見ました。たった1社の不正から、日本中の国民が不安を抱く結果となった今回の事件。その中で感じたのがメディアと国民の反応です。
三笠フーズから米を買った7社(9月12日現在)のうち食用に使用したのは6社。そのうち、島田化学工業へ流れた事故米については、その後の流通経路が報告されません。そんな中で、自ら名乗りを上げたのが「すぐる食品(株)」。この会社が、学校給食用の冷凍厚焼き卵に三島化学工業から購入した米粉でんぷんが使われていたことからマスコミ各社が大きく取り上げることに。

「疑いがあるとわかった段階で、販売を中止し、回収を行うのはこれまでのスタンスとかわらない」「危険なことが確認されてから公表するのでは遅い」と自ら名乗り出た経緯を述べられていました。その中には、「あたり前のことをやったのに、世間はそうではなかった。黙っていることで、いまだに利益を上げている業者が多いし、世の中もそれを許している。マスコミも、業者の追求をしようとはしないではないか!!」という落胆の気持ちが込められていたように思います。そして、「正直者が馬鹿をみる世の中ではいけない」とこれからの対応を訴えられていました。

今のままでは、本当に、正直者が馬鹿をみた結果となります。「疑いがあるとわかった段階で、販売を中止し、回収を行う」安全な物を口にしたいと考える消費者としては、これは、あまりにも当たり前の対応だと思います。「事故米の混入は疑いだけで、まだ、はっきりわかったわけではないし、健康に影響は無いと言うんだから、黙っていよう」「公表すれば、売り上げは明らかに減る」。
三笠フーズからの転売先については、当初、転売先の了解が得られてからの公表でした。つまり、転売先が、「黙っていてくれ」と言えば、隠しておくつもりだったのです。

食べ物の安全を守るのは、国民一人一人です。わたしたち一人一人が目を光らせ、また、安全な食べ物を世に送り出してくれる人々を応援しなくてはいけません。「正直者が馬鹿をみる」これは、生産者にとっては、「馬鹿正直にやっていたって、何にもならない」ということ。「売れればいい」「食わせればいい」そんな気持ちと一緒です。作る側も「安全な物を作ろう!!」「作らなくてはいけないんだ」そんな気持ちになるようにするためには、消費者一人一人が「正直者が馬鹿をみる」世の中にしないように努力することが不可欠なのではないでしょうか。
悪いことをすれば、必ず罰がある。「黙っていたほうが得」なんてことを子どもたちが感じないように、しっかりとした態度で、メディアも消費者も取り組んでいく必要があると感じます。

「17日分までは対応できますが、それ以降は中国から輸入したものを九州で洗浄・加工・袋詰めしたものしか手にはいらない」とのこと。九州・熊本産と表記してあっても、実は、タケノコそのものは中国産のものも多くなっています。
正直に品物の経路を断った上で商売をしてくれる業者さんには感謝ですが、どう考えても、これまでの需要から考えて国産タケノコの確保が容易とは思えません。うなぎの産地偽装表記同様、中国産国内加工のタケノコが高値で取引される現状ではと危惧します。
物価高騰で、今現在でも給食費が大変な中、「どんなに高くても間違いなく100%国産のタケノコを入れてください」とはいえません。本校ではタケノコの旬を迎え、再び国産であることが明らかな、安値で出回るのものを待つことにしました。
【旬のものを食べる】考えてみれば、ごく当たり前のことでしたね。


写真上:ホットあんぱんをつくりました。あんこももちろん学校で朝から煮ました。
写真下:食事バランスガイドを使って、自分のたべているものをチェック。
201106.jpgsyokujibarannsugaido.jpg

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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