2008.10.28
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「全部食べられるかな?」  子どもとの根比べ

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「今日は、全員食べ終わったテーブルからお片付けを始めます」

今回、ランチルームでは、各テーブルのお料理を一度全部盛りつけ、一人分の分量を確認させました。給食の量はあくまで基準値ですので、体格や運動量によってその子どもにとっての適量とはいえない場合もあります。しかし、「小さいから、ちょっとしか食べないのはしかたがない」と、いつまでもちょっとしか食べないままでは、元気に大きくなることはできません。
特に、最近は、「胃袋が本当に小さくて食べられない」というよりは、「嫌いな物はちょっとでも平気。おなかいっぱい」という雰囲気の子どもが増えているのが心配です。

ランチルームでは、テーブルに座る人数分の量を量って配缶しています。教室と異なり、4~6人分ですので、子どもたちも容易に同じ量をよそいきることができます。
「まずは、お鍋がからっぽになるように、みんな同じ量で配ろう。その後、食べきれないと思う子は、いただきますの挨拶が終わったら、おかわり用のお鍋に戻そう。」と呼びかけます。
最初は、「え~こんなに食べられない!!」と言っていた子どもたちも、「一人分の量の確認」「みんなが元気に大きくなれる量を量って配っているんだよ。」と話をすると、改めていつも食べている量が少なすぎることに気付くようです。
また、「この倍は食べる!」という子どもには、「よく噛んで食べているか」「食べた分運動をしているか」を呼びかけました。

あるクラスでのこと「いただきます」の挨拶が終わり、おかわり用の鍋を準備しましたが、だれも戻しにきません。「多いなぁと思う人は、食べる前に戻してくださいね。今日は、お皿をからっぽにしないとごちそうさまができませんからね」と再度声かけをしてもやはりだれも席を立ちません。
「大丈夫かなぁ」と心配しつつ食事の様子を伺います。さぁ!ごちそうさまの時間です。
「全部食べ終わった人」と聞くと半分以上の子どもが「は~い」と元気に手を挙げました。
案の定、いつもちょっとしか食べない面々はまだたくさんお皿に残っています。
「ここからはおしゃべり無しだよ。食べ終わった人は先生のお話を聞いてね。まだ、残っている人は、急いで食べようね。いいですか、おしゃべりをしてはいけません!」
終了5分前、おしゃべり禁止で食べることに集中させます。
終わりの時間、5名ほどが食べきれずにいました。同じテーブルの子が「○○ちゃんがまだ食べない!」「早く遊びにいかないと時間なくなっちゃう!」と訴えに来ます。「そうかぁ。でも、今日は、全員食べ終わったら片付け開始だよね。みんなで、早く食べるように応援してあげよう」と言います。しぶしぶとはいえ、
「ほら、あとちょっとだよ」「これ(口に)入れて、牛乳飲めば大丈夫だよ」と友達を励まします。
いつもなら、最後の最後まで愚図り、最終的には山のように残してしまう児童が、ついに完食。
「やったぁ!」みんな大喜び。ニタぁと笑顔を浮かべてお皿を片付け始めます。

アレルギーや具合が悪い子に無理に食べさせることはしません。しかし、子どもの「おなかいっぱい」はどこまで信じていいものなのか。本当にいっぱいなのか、嫌いだからいっぱいなのか。
ちょっとがんばれば食べきれる子どもたちの様子を見るたび、「嫌いなら食べなくてもいい」そんな習慣がつかないように、少しづつ「がんばって!食べる」「食べてみる」習慣を働きかけていくことが大切だなぁと感じます。

中学生になったら、もう、そんな働きかけなど「フンッ!」という感じになってしまいます。小学生の内に身につけておきたい習慣は、是非、小学生の内に働きかけておきたいと感じています。

とはいえ、何事も子どもとの根比べ!!
こんなことを1日中している担任の先生方って、本当に大変ですよね。
給食の時間だけで、ヘトヘトになってしまう自分の情けなさと、先生方の努力と忍耐に敬服する毎日が続きます。

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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