2008.09.24
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部活指導の問題点に迫る

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長 野村 泰介

ある中学校の若い講師の方(採用試験に合格していないため、まだ「教諭」ではありません)とお話をする機会がありました。その講師の方は今年の春大学院を出たばかりで、4月から1年の期限付き常勤講師として働いています。

その先生が悲鳴をあげています。採用試験の勉強に全く手がつけられないのです。原因は「部活動の指導」にありました。

講師に採用された後、配属された学校から校務分掌表が配られました。課外活動の欄にはある運動系の部活のところに彼の名前がありました。まったく経験したことのない種目でしたが、何事も経験、ということで前向きに取り組むべく、先輩顧問の先生に「ご挨拶」しに行ったそうです。これが悲劇の始まり。

先輩顧問の先生は彼の「ご挨拶」に大変満足し、親身になって「一流の部活顧問」に育てようとしました。

毎日、暗くなるまでの練習、土日は各種試合、長期休業中は遠征・合宿・・・。休みが全くありません。彼はいつ採用試験の勉強をすれば良いのでしょうか?

先輩顧問は、その部活一筋で生きてきたような人。一方、彼は数合わせでその部の顧問になった人。そのギャップが彼を苦しめます。先輩顧問に悪気がないだけに、なかなか「休みをください」とも言えません。(職員の管理権限の無い教諭に「休みをくれ」と言うこと自体おかしいのですが・・・)

教職業務の中で部活動ほど、先生方の裁量の幅があるものは他にありません。極論を言えば「やりたければいくらでもできるし、やらなくても特にお咎めなし」という世界なのではないでしょうか?その曖昧な定義の中で自分の位置づけを誤るととんでもないことになってしまいます。

彼は期限付き常勤講師。彼自身が全国レベルの指導者なら別ですが、数合わせに割り当てられた部活指導で「教諭」身分が保障されることはまずありません。彼は新卒なので色々と吸収しなければいけない時期なのですが、自分のスキルアップを阻害する形であってはいけないと思います。

私は指導している部活が性に合ってるので、何時間やっても苦になりませんが、部活大好き先生の情熱を他者に求めるのは酷な話なのです。部活動が盛んな学校は活気がありますが、やはり部活は「業務」です。彼の話を聞いて、私の勤務する学校でも部活動指導をシステマティックに「業務」と考える方法を構築しなければいけないと感じました。「業務」という線引きをした上で、好きな人がそれにのめり込めば、指導する先生方の精神が、そして部活動を通じて学校全体が健全化するのではないでしょうか?

野村 泰介(のむら たいすけ)

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長
今年創立125年の女子校の広報を担当しています。岡山市内唯一の女子校として、その特色をアピールできればと思います。

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