2008.08.25
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探求する心・・おや?なんだろう?ふしぎだな?・・体験知の積み上げ

明石市立王子小学校 主幹教諭 原田 幸俊

先日、神戸に出て大型文具店に立ち寄りました。子どもの買い物に付き合ったのですが・・・・私はあるコーナーの前で例によって暫し時間潰しをしていたのですが、その場に並んでいる商品にふと懐かしさを覚えて子どもが買い物を終え、その場を離れるのに後ろ髪を引かれながら立ち去りました。

その後、用事を済ませて帰ろうとしたのですが、やっぱりその売り場まで引き返している自分がいました。さらに、そこで販売していたあるものを大事そうに持ってレジに並んでいる自分がいました。こんな風に書くとそこにはずいぶん珍しいものがあったのだろうと思われるかもしれませんね。

あるコーナーとは、夏休みの子どもたちをターゲットした売り場にあります。生き物飼育セットが並んでいる一角です。そこには、カブトエビの飼育キットやアリの飼育キットなどが並んでいました。私はそれらの品々に子どもの頃の体験をオーバーラップしてしまったようです。近所の水田にいるカブトエビやオタマジャクシ、ザリガニをバケツいっぱいに捕まえてきては1日中眺めていたり、コーヒーの瓶に砂を詰めてアリを捕まえてきて巣作りを観察したりした少年時代があったなと・・・・。

店先に並んでいたキットは、そんなものとはかけ離れてずいぶんとおしゃれで都会のマンションに持ち込んでもOKといった感じのものでしたが・・(^_^)。アリの飼育キットなどは、NASAの開発したものらしくすっきりした透明の容器にきれいな色がついた寒天状の砂に変わるものがあらかじめ詰めてあって、そこにアリを捕まえて来て飼育出来るようになっています。(ものによっては溶剤は自分でチンして電子レンジでつくるようですが)その溶剤には水分が含まれ、溶剤そのものが餌になっている代物です。この点は少し気に入らないのですが・・・。そんなことを考えながら手にしていたのはアリの飼育キットなのですが・・

早々に帰宅すると庭に出て、砂糖を餌にアリをゲットしたり、巣作りをはじめないかなと思いながら1時間以上眺めて家族からあきれられてしまいました。結局その日は巣作りはしなかったのですが、翌朝起きてみると1本のトンネルが出来ていて感激・・・少年時代に帰った様なひとときでした。

今日は前置きが相当長かったのですが、子どもの頃は、アリの行列を1日中見ていてもあきないものです。(自分だけ??)何を運んでいるのだろう。この行列の間に石ころを置くとどうなるんだろう。すごい! 自分の体の何倍ものものを運んでる。これって巣の中にはいるのかな? アリ同士が戦争してる、どうして? などと本当にあとからあとから子どもの探求心をくすぐるものです。

子どもの頃におや? なんだろう? ふしぎだな? というものをいっぱい体験させることで子どもの探求する心は育ちます。それはまた次の体験を生みます。そして子どもたちの体験知は子どもの中で積み上がっていきます。それは学びの礎となります。それが自然体験であっても社会体験であっても言語体験であってもです。その意味では、夏休みは体験知を積むのに絶好の機会なのかもしれません。

またの機会に譲りますが、この話に絡んで原体験と原風景とかという言葉をご存じでしょうか? この話も結構おもしろいですよ。中洌正堯先生(兵庫教育大学名誉教授)の講義の中で「タンポポの花を材題とした詩を聞いたとき山口県のある地方の人と兵庫県南部の人が聞いたときでは思い浮かべるイメージが違う。それはそれぞれの原風景があるからだ」と言われたのが今でも印象に残っています。つまり山口県のある地方の人は白花タンポポを思い浮かべ、私たちは黄色いタンポポを思い浮かべています。おのずとその詩を聞いて思い浮かべるイメージが違ってきます。作者が見ている風景はどちらだったのでしょうか? といったものでした。体験知の話と重なってきます。

原田 幸俊(はらだ ゆきとし)

明石市立王子小学校 主幹教諭
小学校の低学年の教育に関心があり、細々と研究を続けています。特に生活科や幼少の連携について興味があります。韓国の教育についても低学年教育はいろいろ共通点が多く興味を持っています。

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