2008.08.06
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

執筆者の交流から生まれた記事「拡大教科書について」

株式会社内田洋行 教育総合研究所 山田 智之

早いもので、私がつれづれ日誌に寄稿を始めてから4ヶ月が経ちました。
毎回何を書こうかと悩みますが、これまでこういった記事を書いた経験がなかったので自分自身良い経験になっています。
(予定では私の担当は9月まで。いつの間にか折り返し地点を過ぎていました・・・。)

この記事がどれくらい読まれているのか?正確なところは聞いていませんが、先日ありがたいことに、同じく「つれづれ日誌」の執筆者でいらっしゃる岩本先生がご自身の記事の中で、私の記事にコメントくださっていました。
http://www.manabinoba.com/index.cfm/8,10079,21,113,html

内容は私が3つ前の記事でご紹介した電子黒板の普及に関してです。
記事を見て頂いているということに対して嬉しさ半分、緊張半分で記事を拝見しましたが、滅多にない交流の機会でしたので、少々メールでやりとりをさせて頂きました。

弱視の子向けにはプラズマディスプレイタイプの電子黒板で、拡大機能などを使いながら指導する事例が見られることや、将来的には、例えばディスプレイ部分を細かいドット状の突起物で形成し、ディスプレイ上に点字を表現する・・・といった製品が出るかも?といった内容のメールをお送りしたのですが、視覚障害つながりで、以前、文部科学省の「拡大教科書普及推進会議」の第1回会議を傍聴したことを思い出しました。

---
「拡大教科書」、私は実物は見たことがないのですが、簡単に言うと弱視の子のために検定済教科書の文字や図形を大きく、見やすくしているものです。
これらはボランティア団体等の個人あるいは出版社等の企業や社会福祉法人が製作・発行しています。

この会議は学校教育法改正と著作権法改正採決に附帯する決議を受けて、視覚障がい者への拡大教科書普及をはかろう、という趣旨の会議だったのですが、拡大教科書の普及にあたり、

・多くの弱視児童生徒のニーズに対応した体裁など「標準規格」の策定
・策定した標準規格の教科書会社への普及啓発
・教科書会社から教科書データを今以上に潤沢に提供してもらうしくみ作り
・教科書データを管理し、NPOや民間に提供する組織作り

といったことを検討していくとのこと。
何と現在、拡大教科書は約8割がボランティアによる手作りと言われているようで、この比率を逆転したいという意向のようでした。

会議には出版社の方も出席されていましたが、拡大教科書の開発は、単純に文字を大きくするだけでなく、図表をどれだけ大きくしどう配置するかなど、レイアウトが全く違うものになるため開発コストがかかっているようでした。
会議での発言にもありましたが、拡大教科書の作成を念頭に置いて一般教科書を作るようにし、コストや労力を軽減することができれば・・・と思います。

---
本筋とは別の観点かもしれませんが、傍聴していて興味深かった話があります。
晴眼の子が教科書を忘れ、弱視の子から拡大教科書を借りた時に、「これ、普通の教科書より分かりやすい。」と発言したというのです。
文字や図表が大きくなっている分、ページあたりの情報量が絞られますから、子どもにとっては何を見るべきかがすんなり分かるのかもしれません。

電子黒板やデジタルコンテンツ開発のヒントにもなりそうな話でした。

---
さて、今回は岩本先生の記事がきっかけで特別支援教育に関する記事を書かせて頂きました。
連載終了までにまたこんな機会があるかもしれません。楽しみです。

山田 智之(やまだ ともゆき)

株式会社内田洋行 教育総合研究所
教育の情報化が進められていた99年~を学生時代として過ごしました。「先生をサポートする仕事をしたい」と思い、内田洋行に入社。現在は受託事業、共同研究プロジェクトなどを担当しています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop