2008.07.30
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校章の印象

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長 野村 泰介

 突然ですが、紙と鉛筆が渡されたとします。みなさんは、母校の校章を正確に描くことができますか?私は小学校、中学校、高校、大学、どの学校の校章も書くことができませんでした。
 
 校章のデザインは学校の名前やシンボルとなるものを図案化したものが多いようです。当然、校章制定の際は小さなデザインの中にスクールアイデンティティのすべてを詰め込むわけですから当然、高度で洗練されたものになります。ここが逆に校章の印象を浅くしてしまう落とし穴のような気がします。

 高度で洗練されたデザインというのは私のように「絵を描く」ことが不得手なものにとっては再現が難しいのです。ましてフリーハンドで描けなんてとても無理な注文です。
よく暗記ものは書いて覚えろって言いますよね?その逆、自分の手で描けないものというのはなかなか記憶に残りにくいものです。

 前置きが長くなりましたが、理想の校章というのは卒業してもずっと記憶に残るものであると思います。そこで私の勤める山陽学園の校章について今まで何気なく思っていたことをまとめてみます。

 最初にデザイン。写真の1枚目にあるように、極めて単純なデザインです。これほど単純なデザインの校章はあまり見かけません。

 「学園史」を引っ張り出してその由来を調べてみました。『山陽学園百年史』(1986年)によると、最初の校章は2枚目の写真のような三ツ星のデザインでした。しかし、このデザインでは襟留などを作ろうとするとバラバラになってしまうので、明治34年(1901年)に三ツ星を連結させると同時に「女」の字を崩した現行デザインのものが考案されました。デザインの由来は諸説あるのですが、キリスト教の三位一体、父と子と精霊を表しているというものが有力です。

 百年以上この校章が使われているのですが、在校生・卒業生の認知度の高さは極めて高いといえます。それほど母校愛の強くない卒業生でさえも校章のデザインだけは決して忘れることがないほどです。その秘密は「誰にでもすぐに描ける」ということ。

 ひとつおもしろい例を示しましょう。生徒・卒業生のプリクラにおける校章登場率の高さです。よく生徒や卒業生の「プリ帳」(プリクラ帳―プリクラを集めて貼ったノートのこと)を見せてもらうのですが、その多くに校章が描かれています。なぜプリクラに校章を描くのかと尋ねると、プリクラ撮影後の限られた落書きタイムの中で一筆でささっと描けるから、ということです。彼女たち、落書きのネタに困ったら本能的に校章を描いてしまうらしいです。3枚目の写真の右上に校章が描かれているでしょう?
 
 校章というのは学校のシンボル、いわばオモテのカルチャーです。それに対してプリクラというのはどちらかと言えばサブカルチャーの部類に入りますよね。本来相反するようなものなのですが、サブカルチャーの領域にズカズカと入り込むこの校章。フリーハンドで描ける単純なデザインであるが故に強烈な印象を与えてしまう底力に脱帽です。
File1.jpgFile2.jpgFile3.jpg

野村 泰介(のむら たいすけ)

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長
今年創立125年の女子校の広報を担当しています。岡山市内唯一の女子校として、その特色をアピールできればと思います。

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