2008.07.22
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食糧自給率と給食  5年生の社会科「これからの食料生産」

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「今日の給食で、自給率何パーセントだと思う?」
5年生社会科「これからの食料生産」でのひとこま。

 最近、食糧危機に関しての番組が増えています。マスメディアが頻繁に取り上げてくれることは、国民の「食糧危機」に対する意識を高めるのにとても有効です。
5年生が今、社会科で「これからの食料生産」を学んでいます。「学校給食について話してもらえませんか」と声をかけられ、1時間お邪魔しました。1学年100名が図書室に集まりました。
給食の献立の立て方、食材選びの方法や苦労などを話した後、
「これだけ、国産品にこだわる給食で、食料自給率は何パーセント?」と質問をしました。「30%」「半分はあるでしょ?」「80%はあるよ」「100%だよ」この日の給食は、なす入りミートソーススパゲティ、ひよこまめ入りサラダ、パイナップル、牛乳です。パイナップルももちろん沖縄産。皆さんは何パーセントだと思いますか?
実は、42%。「え~それだけ!」多くの子どもたちが疑問の声をあげました。
そうなのです。国内で作られているもの、収穫されたものであっても、その多くが、外国から輸入した穀類などの肥料が多く使われているため、自給率としては42%。この献立の場合、国産にこだわらないと、大体23%になるそうです。
卵は5%が輸入、85%が輸入肥料により育てられた鶏から生まれ、国産の肥料で育った鶏の卵は10%。牛肉は肉1kgを口にするために約11kgの輸入穀物を食べてているのと同じ。
大豆もほぼ輸入のため醤油や味噌も自給率は低く・・・
子どもたちが意外に食料自給率やフードマイレージ、地球温暖化について知っているのに驚きました。「テレビでやってた」「俺も見た」などなど。メディアの情報をしっかりと受け止めています。
「今、外国から食べものが入ってこなくなると、こんな食事になります。」約900Kcalを芋中心に賄った食事を示すと「え~!?これだけ」「これ、1日分?」「たんないよ~」教室が一気にざわめきます。「日本の穀物自給率は175か国中124位。食糧難を訴える北朝鮮よりもはるかに低い。」これには驚いた様子。
5秒に一人の子どもが栄養不足で死んでいること、日本は1日に1900万トンの食べものを捨てていることを示し、これからみんながどうしていったらいいのかを問いかけ授業を終えました。

「世界には食べものがなくて死んでしまう人がいるのに、日本は1900万トンも食べ物を捨てているなんて」多くの子どもたちが感想に書いた言葉です。
「知る」ということの大切さ。「知って」「感じて」「考える」そして「行動する」彼らが大きくなった時に日本は、世界は、地球はどうなっているのか。
「政治は、子どもたちにこんな未来を与えてやるために『今これをする』ではいけない。未来は子どもたち自身が築きあげていくものであって、わたしたち大人は子どもたちに自然のままの地球をいかに伝えられるかの努力をおしまないこと」っだったと思うのですが・・・子どもたちにどんな地球をバトンタッチできるのか何を伝えていったらいいのか。「生きる」ことそのものの「食」という分野で子どもたちと触れ合える喜びと責任感を感じた1時間でした。

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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