2008.06.04
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近所隣へ思いやり。愛の種を蒔きましょう。

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長 野村 泰介

ミャンマーのサイクロン、中国四川の大地震、立て続けに起こった自然災害。被害に遭われた方々は私たちの想像をはるかに超える苦しい思いをされていると思います。

さて、私たちの学校では生徒会が中心となって、サイクロンや大地震で被害に遭われた方への力になろうと、義援金の呼びかけを始めました。ところがこれが中々集まらない・・・。4年前の新潟県中越地震の際にも校内で同様の義援金呼びかけを行ったのですが、そのときはかなりの金額が集まったと記憶しています。ではなぜ今回は集まらないのか?

ある生徒に聞いてみると、「ミャンマーも中国も、遠すぎてあまりピンとこない。ニュースの向こう側の出来事って感じで・・・。」とのこと。

生徒会は一人50円以上の寄付を呼びかけていますが、「50円以上」という金額指定に難色を示す生徒もちらほら。さーて困った。義捐金が集まる集まらないの問題ではなく、生徒たちのこの関心の低さをどうしたものか?

ある日のホームルームで、私は生徒たちにこう呼びかけました。

「義援金、全員出そう。一人50円以上。」

担任教師がこう発言するということは、生徒たちにとってほとんど「強制されて出す」という意味に等しいのです。しかし、義援金を出すことの意味を理解させずに集めても教育的効果は全くありませんね。

そこで一計。

「みんなにとって50円の価値ってどんなもんだ?ジュースを自動販売機で買えば120円。毎日飲んでる人は1日飲むのガマンするだけで120円の寄付ができる。50円っていうとその半分以下だ。」

私はそう言った直後、自分のポケットのサイフから1000円札を取り出して義援金を集める係の生徒に渡しました。驚く生徒たち。「なんで50円でいいのに、この先生は1000円も出したの??」

私は続けます。
「先生は働いて給料をもらってる。仕事に疲れたら居酒屋に行ってお酒を飲むこともある。でもビール1杯とおつまみ少々をガマンすれば、この1000円を義援金に回すことができるんだ。」

生徒たちの目つきが少し変わってきました。

「義援金50円出すことで自分の生活がたちまち困る人、いますか?このクラスには日々、食べるのにも着るのにも困ってる人は先生の知る限り、一人もいない。ジュース半分以下の50円。この小さな金額が被災地の人々への大きな力になる。恵まれた環境の人は恵まれない人へ救いの手を差し伸べる義務があると思う。」

このようなやりとりの後、30人中26人の生徒が義援金に協力してくれました。

本校の建学の精神は「愛と奉仕と感謝」。その精神を日常生活の中で活かすための「日々の教え」と呼ばれる31日分の日めくりがあり、毎朝生徒全員で唱和しています。その中、7日の日めくりは、

「近所隣へ思いやり。愛の種を蒔きましょう」

ミャンマーも中国も同じアジア。国境はあっても近所の国に違いありません。義援金は被災者の方を思いやる愛の種そのもの。「日々のおしえ」について生徒たちと真剣に向かい合った小さなエピソードです。

写真は「日々の教え」の実物です。
File1.jpg

野村 泰介(のむら たいすけ)

学校法人山陽学園 山陽女子中学・高等学校広報室長
今年創立125年の女子校の広報を担当しています。岡山市内唯一の女子校として、その特色をアピールできればと思います。

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