2022.08.18
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真面目

見方によっては「真面目」に書いたとも言えるし、「不真面目」に書いたとも言えるかもしれません。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

どうも、今村です。
「真面目」ということについて書いてみようと思い、ひとまず辞書を引いてみた。

「真面目」って何だ?

ここまで書いて、ふと立ち止まってみる。
いや、待て。一旦自分で考えてみることもなく、なんでも辞書やインターネットで調べてけりをつけようとするあたりが、ずいぶん「真面目」的というか、つまらない人ということなんじゃないのか?

「真面目」という言葉を使うとき、揶揄のような響きを伴うことがある。「真面目」という言葉を教室で子どもが揶揄として使うときには、僕は注意することが多い。
でも、ちょっと待て。
今の自分の、「とりあえず辞書で引いてみましたけど」みたいな、そういう「真面目さ」は、揶揄されて然るべきではないか? 少なくとも、美点とは言えなさそうだ。

このあたりから、僕は一旦辞書を引くという選択肢を保留し、頭の中でぐるぐると「真面目」について考えてみる。
「真面目」って一体なんだ?
「真面目」という一言を言い表すためには、何かしら、言い換えたり、具体的な姿を思い描いたりしてみるのが初めの一歩だ。たぶんそうだ。

よし、言い換えてみよう。
「きちんとしている」はどうだろう。そういう意味の時もありそうだ。
「誠実」これも悪くない。「真面目な人」=「誠実な人」と捉えたときには、それを揶揄するのは許されるべきではないと僕は思う。
「きまりを守る」という意味で使われることもあるかもしれない。
そこから少し派生すると「融通が効かない」ということもありうる。

なんとなく、「真面目」の輪郭が見えてきたような気がする。よし、さらに解像度を上げるために、反対の言葉について考えてみるといいかもしれない。対義語は「不真面目」でいいだろう。
「きまりを守らない」これは、さっきと反対の意味だが、確かにそういうこともあるかもしれない。
「一貫していない」という捉えもいいかもしれない。
「言うことを聞かない」あぁ、なんとなくこういうのも想像できる。
「教師に怒られている」これは、自分が学生だったころの記憶からくるものだろうか?

僕の「真面目」観が学校に縛られすぎている

そろそろ、僕は頭を抱え始める。
学校において、「真面目」や「不真面目」は、あまりに教師の都合で使われてこなかっただろうか? あまりに僕の「真面目」観は、学校という文化が関わりすぎている。
「教師の指示をしっかり聞いて行動する」が「真面目」で、
「教師の指示をしっかり聞いて行動できない」が「不真面目」。
少し踏み込んで言ってしまえば、
「教師にとって都合のいい子」が「真面目」で、
「教師にとって都合の悪い子」が「不真面目」。
いつも、どんな状況下でも、そのような意味で使われているわけではないだろうが、僕の記憶の中では、「真面目」な子は先生に褒められ、「不真面目」な子は先生に叱られていた気がする。いや、先生に褒められているから「真面目」と捉え、先生に叱られていたから「不真面目」と捉えていたのかもしれない。

「真面目」な子は、自分の言うことが正解だと確信できないと、教師に褒められると確信できないと、安心して発言できなくなる。だから、自分で考えてみることもなく、すぐ辞書を引こうとする。そこで正解を得て、周りのみんながすぐ解ることを言う。
「不真面目」な子は、自分の考えたことを言うから、教室の中でその意見は一度ポッカリと浮き上がる。まわりの子どもたちの頭には、「?」が浮かぶ。教師も「?」を浮かべているのかもしれない。その「?」はときに、「あの子は不真面目だから、よくわからないことを言うんだ」という思考によって教室の窓から外へ流されていく。

でも、どうだろう。
我々教師は、自分にとって都合のいい人を育てたかったのだろうか?
自分にとって都合がいい、とは、自分の思い通りに動いてくれる、とか、意のままにとか、そういうことだと思う。
誰かにとって都合のいい存在になるのではなく、自分自身に対して誠実に、自分の思考に対して「真面目」に向き合っている人からすれば、自分の思考を捨て誰かに認められることを第一に考えている姿は、生きるということに対して「不真面目」な、滑稽な姿に見えるのかもしれない。

う〜ん、「真面目」って、なんだろうか。
あとで辞書を引いてみるのも、悪くないかもしれない。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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