2021.10.19
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アメリカンスクールの教室より

日本の学校へ子どもたちを通わせる母業とアメリカンスクールで日本文化を教える教師としての両視点から「学校」を考えます。

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃

はじめまして

私は米国学校区の公立学校教師です。今年で12年目になります。これまで教師として、一人の日本人として、日々面白い発見と驚きと学びがありました。これから半年、私の勤める学校を楽しく紹介できればと思います。

私の勤める学校区の学校段階区分

日本は小中高の計12年の学校段階区分が6年(小)、3年(中)、3年(高)と統一されています。米国では様々な学校段階区分が見られ、教育改革の中でも実に多様性が見受けられます。それは学校区によって異なり、日本のような6-3-3形式もあれば、私の勤める学校のような5年(小)、3年(中)、4年(高)の形式もあります。
よって日本でいう中学1年生は、アメリカでは7年生と呼ばれ、高校3年生は12年生と呼ばれています。私は、幼稚園年長組から5年生までの学年を小学校で教えています。アメリカではほとんどの幼稚園は、小学校に隣接されています。

学級構成

学力上級者プログラムAAPS(旧ギフテッド教育)の教室の様子。STEMにまつわるデコレーションがいっぱい!

アメリカンスクールでは、クラス名は担任の名前になっており、1組、2組などの番号振り分けはありません。そして1クラスの生徒数は、少人数で構成されています。低学年(幼稚園から2年生まで)は20人、高学年(3年生から5年生)は25人ほどとなっています。
各学年クラス担任の他に専門科目教員がおり、私は日本文化を専門として教えています。専門科目は他に、体育、美術、音楽、算数、理科、ESL、教育テクノロジー、情報教育、学力上級者プログラムAAPS(Advanced Academic Program Services、旧ギフテッド教育)などがあります。
また一人ひとりの生徒をサポートする教職員として、保健師、学校カウンセラー、学習障害サポート、心理学者、言語聴覚士、リテラシーサポート(読み書きなどをサポートする識字教育)などが常駐しています。
日本の学校にはないプログラムとして面白いプログラムは、学力上級者プログラムAAPS(旧ギフテッド教育)です。このクラスに参加する為には、定められた知能テストのボーダーラインをパスし、成績の上で担任や前担任の推薦を受けなければ参加することができません。「すべての生徒を落ちこぼさない、すべての生徒が成功する」というのが教育の根幹になっています。

学年の始まりと終わり

日本の学校教育は4月に始まり3月に終わりますが、アメリカは8月に始まり6月に終わります。
学校の夏休みは約2か月となっており、教員の勤務は年に10か月契約となります。なんと夏休みの2か月間は給料がありません!
ですから夏休みを利用して、家庭教師やサマースクールなどのアルバイトをする教員もいます。中高の部活なども完全に外部委託ですが、希望すれば教員も部活の顧問を有料ですることができます。

学校開始に向けて準備

私の教室の天井の様子。日本語を教えているので、この天井を使って色や数を学びます。

始業開始1週間前に教師は業務開始し、ミーティングや研修を行いながら教室のデコレーションや文具・教材の準備などを始めます。
特に小学校では、教室のデコレーションは楽しい仕事の一つでもあります。各教室には静かに読書ができるかわいらしいコーナーがあったり、音楽を聴けて踊れるコーナーがあったり、庭にあるような大きな木があったり、ハリーポッターをテーマに教室を飾ったり、家のリビングにいるようなデコレーションをしている教室もあったりと、担任の個性が表れ、アイデアであふれています。
私も毎年一つ一つの教室を訪れてインスパイアされたり、アイデアを共有したり、とても面白いです。学校が始まり、目を輝かせて教室に入る子どもたちの様子を何年も見てきました。
学校開始から約1か月半、4学期で構成されている私たちの学校は現在、1学期の中盤に差し掛かりました。子どもたちもようやくクラスや学校の一日の流れ、学級でのルーティンに慣れ始めたころです。学級経営方針の成果が現れてくる頃でもあります。

オンラインとインパーソンのハイブリッド授業

これまでに、コロナ禍の影響で学校閉鎖や学級閉鎖が何度かありました。改めて今年度、通常始業を迎えましたが、私達教員は学校が始まって2週間、オンライン上のクラスルーム開設、運営を求められ、それをもとに授業をしております。
学校にいても、子どもたちは毎朝自分でクラスアカウントにログインし、オンライン上のクラスルームに入り授業を受けます。教師は電子黒板を使いながら、子どもたちの媒体と連携をとって授業を進めます。
その裁量、分配は各教師次第です。テクノロジーをフルに使う先生もいれば、半々で行っている先生もいます。
ちなみに私は全学年の子どもたちを受け持ちますので、低学年は半々、高学年は全面的にオンラインを活用しています。テクノロジーを毎日使うことで、万が一、学級閉鎖や学校閉鎖があったとしても、子どもたちの学びの様式や媒体は変わらず、今後あまり困ることはないと考えます。

次回は年間を通して行われる学校行事や伝統イベントを、四季を通して日本と比較しながらお伝えします。

下條 綾乃(しもじょう あやの)

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。

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