2020.10.07
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学級がうまくいっている先生は何をしているのか?

初任者の多くが初めに悩むのは、学級経営です。私が考える学級経営の難しさとして
(1) 未知の体験
(2) 人間関係形成
(3) 継続的指導の必要性
が主に挙げられます。学級経営は誰しもがやったことがなく、そのやり方を示した教科書もないのです。また、短期的な指導では効果は見えづらく、継続的に指導することによって成果が出ます。
この連載が、少しでも学級経営で悩んでいる先生の手助けになれば幸甚の極みです。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

学級経営は小ワザの積み重ねによって成り立っている

初めまして。山本裕貴です。みなさん、学級経営はうまくいっていますか?「うまくいっているよ」と即答できる人は中々いないのではないでしょうか。それほど教師にとって学級経営とは難しいものです。

自らの指導技術に満足せず、高みを目指す姿勢、それこそ教師に求められるものだと思います。この連載を通して、少しでもみなさんのお役に立てればと思っています。

学級経営は数値に表すことはできません。そのため一概に「この学級は優れている」とは定義付けすることが難しいでしょう。しかし、「あの先生の学級はいつも落ち着いている」「子どもが自分から動いている」など一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

私は教師になってからずっと考えていました。素晴らしい学級を作ることができる先生と、そうでない先生はなにが違うのだろうかと。学級経営とはなんなのか。学級経営が上手な先生の指導法を観察したり、話を聞いたりするうちに一つのことに気付きました。

「学級経営が上手な先生は、小ワザを多用している」ということです。ここでいう小ワザとは、「短時間で行う生徒指導」のことです。別の言い方をすれば、「学級の細かなルール指導」です。この小ワザを継続的に行うことによって、児童を成長させ、学級を経営していくのです。

私は多くの先生の小ワザを模倣しました。この連載を通してそれらの小ワザを紹介していきます。多くの小ワザをインプットし、アウトプットしていくなかで、やがて自分のオリジナルなものを作り上げることができると思います。それでは、今回は小ワザの中でも、最も基本となり、大切なことをご紹介します。

小ワザ1 話を聞く姿勢を作る

これは、教師として最も大切なことだと思います。「なんだ、当たり前のことじゃないか」と思われる先生もいると思いますが、これが作れていない先生を私は数多く見てきました。

私も初任のとき、学級がうまくいきませんでした。いつも教室がざわざわしている、子どもに指示が通らない。話し方を変えてみたり、具体物を用意したり試行錯誤しましたが、なかなかうまくいきませんでした。そんなとき尊敬する教務主任の先生にこういわれました。

「山本くんの学級は話を聞く姿勢が作れていない。まずこれを作らなければいけないよ」

自分が話しているとき、子どもの姿を見てみました。あのとき受けた衝撃は今も忘れることができません。私はそれまで一人一人の子どもを全く見ることができていませんでした。

下を向いている子、友達とおしゃべりをしている子、手遊びをしている子、私の話をしっかり聞いてくれている子はごくわずかでした。これでは、指示が通るわけがありません。その瞬間から話を聞く姿勢を作ることを第一に取り組みました。そこから学級が落ち着き始めたのです。

では、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。主に3つの手順で行います。

【1】 負の環境を学習させない。

子どもは学習します。それは望ましいことも、望ましくないこともです。例えば、子どもがおしゃべりしているのに先生が気にせず授業をするとします。このとき子どもは望ましくない学習をしてしまいます。「おしゃべりしていても授業は進むんだ」と。

子どもが聞く姿勢を作れていないときは、教師は授業を始めてはいけません。授業が始まらない理由を伝えます。「授業内容を聞かないことは君にとって不利益になります。また、周りの友達も集中ができません」

それを継続的に行うことで、望ましい環境を子どもたちは学習します。根気のいることですが、とても大切なことです。

【2】 話を聞くことは、利益を得ることだと理解させる。

先生が話す目的を伝えます。例えば、学級担任は朝の会で一日の日程を伝えます。なぜこの話を聞かなければならないのでしょうか。これを聞きのがしてしまうと一日の行動に見通しが持てなくなってしまいます。でも話を聞くことで、自分から次の行動の準備をすることができます。

つまり、話を聞くことが自分の利益のためであることを子どもに理解させることが大切です。

【3】 フィードバックをする。

しっかりと話を聞くことは大人でも難しいことです。思い出してください。職員研修であなたは講師の話をしっかりきくことができているでしょうか。人の話を集中して聞くことができる限界は数分と言われています。そのような中、子どもたちが45分間もの長時間、先生の話を一生懸命に聞こうとする。これは素晴らしいことです。正しいことができたときは学級の子どもをいっぱい褒めてください。

このほかにも話を聞く姿勢を作る手立てとして、話し方に変化をつけたり、具体物を使ってインパクトを与えたりすることが考えられます。どうすれば、子どもは私の話を聞いてくれるだろうかということを考え続けることが最も大切なことです。

学級経営に満足する先生はいない

学級経営が上手な先生と話しているうちに、一つの共通点があることに気付きました。それは、どんなに素晴らしい学級を作っていても、満足せずにより高みを目指しているということです。

学級経営に悩んでいる先生はあなただけではありません。私もうまくいかないことだらけです。日々悩みながら経営しています。しかし「どうすれば子どもがより幸せになることができるか」だけはぶれないようにしています。

ここまでお読みいただきありがとうございました。次回は授業の中で使う小ワザを紹介したいと思います。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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