2016.09.21
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未完了を完了させる。

岐阜県可児工業高等学校 電気システム科 教諭 河合 英光

未完了を完了させる???
何のことだ?って思われる人も多くいると思います。この言葉は、コーチング用語になります。スポーツのコーチのことではありません。コーチングとは「人材開発の技法の1つ。対話によって相手の自己実現や目標達成を図る技術であるとされる。相手の話をよく聴き(傾聴)、感じたことを伝えて承認し、質問することで、自発的な行動を促すとするコミュニケーション技法である。(wikipedia)」です。

なぜ、今回この日誌のテーマに「未完了を完了させる。」を取り上げたかというと、私たち教員は本来「生徒の成長」のために一番時間を使って教育活動を行うことが目的であるにもかかわらず、この仕事が本当に生徒の成長のためになるのだろうか?と思われるような仕事が多く存在する。確かに突き詰めていくと最終的には生徒の成長に関係するのかもしれないが、費用対効果で考えるならばそこにエネルギーを注ぐよりも、今、目の前にいる生徒たちに直接指導したほうが良い場合があるように思う。この「未完了を完了させる」技術は、本来の目的にモチベーションとエネルギーを効率よく注ぎ、その目的や目標に近づくための方法である。

「未完了を完了させる」を検索すると、コーチングのHPが多くヒットする。その中で「自己基盤を整える」という言葉も現れてくる。どういうことかというと、自分が気になっていることを先に片づけることによって、自分自身のポテンシャルを高めていきましょう。ということになります。

気になっていることとは、決して「あの書類を早く片づけなければ」とか「出張伺いを早く出さなければ」「退勤簿を1週間付けてないから、早く記入しなければ...」といった、まだやっていない仕事のことではありません。もちろん、これらの仕事を片付けることも未完了を完了させることになるのですが、それだけではありません。

普段の生活において、「借りたものを返していない」とか「机の中を整理していない」「お礼を言っていない」「謝っていない」「メールの返信をしていない」「歯医者に行って治療をしなければ」「読みかけの本がある」「掃除をしていない」などなど、それほど緊急度が高いわけではないが自分自身が気になっている(気がかり)ことを終わらせることを「未完了を完了させる」といいます。

緊急度がないから、別に今やらなくてもいいんじゃないかって思うかもしれません。しかし、これが意外と日々の仕事の効率アップにつながるんです。そして、これが「自己基盤を整える」ことになります。基盤が整うと気持ちが軽くなり、本来の目的により集中することができるようになります。だって、気がかりがないんですから!

そんなわけない!って思っている人がいると思います。でも、コーチングの世界では常識となっています。もちろんコーチングでは自己基盤を整えること以外にもいろいろな手法を使ってクライアントの目的・目標に向けてコーチングをしていますが、初めにこの自己基盤を整えなければ目的・目標を到達するのが難しくなります。だから一番初めにやるのが、この自己基盤を整え「未完了を完了させる」ことなのです。

このように言うと、「未完了を完了させる前にやらなければいけない仕事が山ほどあるんだ!!」って言われそうです。若い頃に先輩の先生がこんなことを言ってました。「なんだか業務の合間に授業に行っているようだ。」とか「授業をやっているときが一番楽だ。」と。

そのころの私は、「先生って授業を一番大切にしなければいけないんじゃないのかな?」って思っていました。しかし、ある程度の年齢になると本当に「仕事の合間に授業に行く」という意味がわかってきました。とはいえ、この状態がいいわけがありません。絶対に間違っていると思います。では、どうすればいいんでしょうか?コヴィー博士の「7つの習慣」の中に「時間管理のマトリックス」の話があります。(「7つの習慣 重要度 緊急度」で検索するといっぱい出てきます。)

詳しい説明は、7つの習慣や解説してあるHPを読んでいただければいいのですが、簡単に言えば、緊急度の高い仕事をしているということは、基本的には計画不足である可能性が高いです。また、本当に自分でなければいけない仕事なのか、場合によってはNOと言って仕事を断ることも必要かもしれません。コヴィー博士は緊急度は低いが重要度が高い活動こそが、本当に大切なことだといっています。

生徒の成長のために必要な知識やスキル、ツールを身に付けることの方が重要なのではないでしょうか。次の日の授業準備に追われているのは計画性がないからです。この日誌で何度も書いているのですが「逆向き設計」論では、後ろから考えて最後は授業計画を立てることが大切であると言われています。なかなかできることではないのですが、初めからやらないのではなく、少しでもやろうという気持ちで頑張ってみてはいかがでしょうか?

こんな事を書いている私はできているのか・・・できていません。自分に言い聞かせるつもりで書いています。「言うは易し行うは難し」昔の人はうまい事を言いました。

河合 英光(かわい ひでみつ)

岐阜県立可児工業高等学校 電気システム科 教諭
「生徒の成長のために我々は何ができるか」を最近よく考えています。そのための方法として「逆向き設計」論を実践しています。京都大学 E.Forum所属

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