「これは、なんでしょう。」クイズをつくろう! 【食とことば】[小1・国語]
これまでも教科の中で「食」に関連する学習は行ってきていますが、それを「食育」として意識してあまり取り組めていませんでした。今回は、国語の教科書の単元「これは、なんでしょう」(こくご 一年下巻 ともだち 光村図書)で、題材に食べ物を扱い、教科の目標に加え、食育の視点も踏まえて授業を行いました。
授業情報
単元:これは、なんでしょうテーマ:食とことば
教科:国語
学年:小学校1年生
時間:4時間
【教科の目標】
- 話題に沿って話し合い、わからないことを尋ねたり、それに答えたりすることができる
- 身近な野菜や果物の中から問題にするものを決め、必要な特徴を集めることができる
【食育の視点】
様々な野菜や果物の特徴を知ることを通して、野菜に対する興味・関心を高める。1.クイズを知る
子どもたちからは、「丸いですか。」「長いですか。」「大きいですか。」「どんな味ですか。」「種はありますか。」「線はありますか。」「かたいですか。」「夏野菜ですか。」「どんなにおいですか。」など様々な視点からの質問が出ました。質問の後、子どもたち一人一人に答えを聞くと、ピーマンとオクラで約半々に意見が割れました。味が苦いといえば、ピーマンかゴーヤだろうと思いましたが、オクラという意見が出たのが驚きでした。
「これは、なんでしょう」クイズ
①出題者が、野菜・果物についてヒントを2つ出す。
②他の児童が、野菜・果物について質問をし、出題者が答える。
③何の野菜・果物か答える。
2.言葉あつめ
その後、班ごとにお題を与え、その食べ物から連想するオノマトペをホワイトボードに書き、他の班の児童が言葉から何の食べ物かあてるクイズを行いました。たくさん言葉を集められていてもなかなか答えが出ないものもあり、子どもたちの食経験が大きく影響すると感じました。
3.クイズ作り
まずは、ブラックボックスに入っているものを手で探り、触ってわかることからヒントを考えてみました。一人目の児童が、何をヒントで伝えたらよいのかわからず困っていたので、他の児童に「例えばどんなことを教えてほしい?」と問うと、「形」「へた」「大きさ」という声が。「形は、丸い。」「へたは、ある。」「大きさは、おにぎりくらい。」答えは、「みかん」でした。
他にどんなヒントを出せるか問うと、「やわらかさ」「おもさ」「へたの大きさ」「色」「味」「におい」「ふった音」などが挙がりました。それらをもとに五感で感じられる特徴をヒント作りの観点として確認しました。
まずは、配布した野菜・果物のイラストの中から答えを何にするかを相談しながら考え始めました。廊下に数種類の実物の野菜や果物を並べていたので、それを見たり触ったりしながら考えている児童も。ワークシートには、ヒントを書く欄を8つ作っていましたが、全て埋めるのに苦労しているペアもいました。クイズの難易度を上げようと目論んで、自分たちが普段あまり見たり食べたりしたことのない野菜や果物を答えに選んでいたからかも知れません。
また、大きさや重さ、長さを「ふつう」と表現したり、味を「おいしい」と表現したりと、主観的な感覚でヒントを考えている児童も見られました。どのように言葉で表したらよいか悩んでいる児童もおり、普段からの言葉の蓄積の大切さを感じました。
しかし、だからこそ一人では難しくても二人で意見を出し合いながら考えることにつながったようにも思います。
最後に早くできたペアのクイズを一つ発表しました。
ヒント①「重さは、ちょっとだけ重たい。」
ヒント②「味は、すっぱいです。」「これは、何でしょう。」
質問①「色は何色ですか?」「赤色です。」
質問②「へたはありますか?」「あります。」
(質問③は、①と同じでした。時間が来たので、回答へ)
答えを聞くと、「すいか」「いちご」「とうがらし」「トマト」という意見が出ました。
正解は、「トマト」。「すっぱい」というヒントから、トマトにはなかなか結び付かなかったようです。「すいか」や「とうがらし」をすっぱいと感じるかというと疑問に思いますが、一つのヒントだけ該当していれば、答えとして考える子もいるようです。
4.クイズの発表
トップバッターは、「さとうきび」。いきなり難易度マックスです。ヒントは、「緑色」「あまい」という2つ。その後、質問を受け付けましたが、出題する子どもたちも、さとうきびを見たことも食べたこともありません。答えられない質問は、お助けしました。
最後まで子どもたちから答えは出ず、正解を発表しました。当然ですが、答えを聞いてもほぼ全員がピンときていない様子。写真を見せると、「めっちゃ大きい。」と驚いていました。
その他には、「さくらんぼ」、「カリフラワー」、「びわ」、「うり」、「パイナップル」、「ブロッコリー」、「いちご」、「ピーナッツ」などのクイズを作っていました。ピーナッツは、ろう下に並べていたので、実際に振った時に音がなる様子から「マラカスみたい」というヒントを出しているペアもいました。
出題・質問を重ねていくと、「給食で出たことがありますか。」「皮をむいて食べますか。」など、今までなかった視点から質問をする子も出てきました。
この実践を通して、大人が食べ物から連想する味は、ある程度一般化されているけれど、子どもの感じ方は幅広いということを感じました。まだ未熟で言葉と味覚が結びついていないとも考えられます。ヒントの捉え方の個人差が大きいため、クイズの題材としては適さない面があったかも知れません。
しかし、食べ物を題材にすることで、子どもたちは、生き生きと活動し、知らなかった野菜や果物、味の表現にも出会う機会になったのではないかと思います。また、味覚を表す言葉と実際の味の感じ方をつなげるような授業もしてみたいと思いました。
来馬 恵利子(くるま えりこ)
淡路市立津名東小学校
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)