2020.06.17
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ベジタブル・ゴーゴー~冬野菜を育てよう!~「育てた冬野菜で、味噌汁を作ろう!」(vol.2) 【食と季節 食と感謝の心】[小2・生活]

野菜の栽培を通して、「深い学び」を実現するために取り組んできた学習の中で、前回は「大こんとごぼうはもうしゅうかくできるかな?」という話し合いの様子を報告しました。家庭での料理や給食で何気なく食べている野菜にも、育てる人や売るために運ぶ人、売る人などさまざまな人が関わり、食べることができています。普段何気なく食べている野菜を自分たちで育ててみることで、その大変さを感じ、目に見えない作り手の努力や苦労が積み重なっていることを知ることができます。

今回は実際に働く人と触れ合いながら、自分たちで育てた野菜を食べる経験を通して、生き方を考え生活を豊かにしていく子どもたちの姿を期待した3時間の授業を報告します。以下のようなタイムテーブルで行いました。

【当日のタイムテーブル】
1時間目:ゲストティーチャーへのインタビュー、野菜を切る
2時間目:野菜を切る、出汁を取り味噌汁完成(この間に子どもたちはここまでの活動の振り返り)
3時間目:味噌汁を食べる、全体を通した振り返り

授業情報

単元:冬野菜を育てよう!
テーマ:食と季節 食と感謝の心
教科:生活
学年:小学校2年生
時間:3時間

ゲストティーチャーの紹介

授業は、ゲストティーチャーの紹介から始まりました。今回は、地域の和食料理屋さんで働く方に来ていただきました。子どもたちが、誰にお願いすればおいしいスープを作れるかと考え、招いた方です。「冬野菜でスープを作りたい」という思いから始まった単元ですが、ゲストティーチャーの助言から、スープとして味噌汁を作ることに決まりました。聞いてみたいことをいくつかインタビューして、答えていただきました。ゲストティーチャーを招いての授業は、町探検の延長でのインタビュー活動となりました。お店に関することを子どもたちは質問しました。

質問と答えの一部   

  • どんな人がお店に来るのですか。
    →おひとり様や家族、カップルなどさまざまな年代の方が来ます。
  • 食材はお店で作っているのですか。
    →ほとんどの食材を仕入れていますが、小さい野菜など作れるものは店の近くの畑で作っています。

1. 野菜を切る

いよいよ野菜を切る活動です。保護者の方にもお手伝いをお願いしていたので、まずはゲストティーチャーから全体に、書画カメラを用いて切り方を教えて頂き、グループごとに保護者の方のお手伝いを受けながら野菜を切り進めました。それぞれのクラスごとに育てたい野菜を育てていたので、自分たちのクラスで育てていた野菜をメインに切りました。出汁をとって、野菜をいれてスープにするところは、保護者の方にやって いただき、その間に野菜を切ってみた感想を書きました。

子どもたちの感想

  • 乱切りや拍子切りの切り方が知られてよかったです。
  • ゲストティーチャーが来て切り方を教えてくれてうれしかったです。
  • ほうちょうはむずかしかったけど、ピーラーはスムーズにできました。
  • お手伝いのお母さんに「上手だね」と言ってもらえてうれしかったです。
  • 初めて野菜を切ることができてうれしかったです。
  • 習った切り方を、お母さんやお父さんに教えたいです。

2. 味噌汁を食す

ゲストティーチャーと保護者の方で仕上げてもらった味噌汁を、みんなで食べました。自分たちで育てた野菜で作った味噌汁を食べることができるのが、とてもうれしそうでした。こうした活動を通しながら、子どもたちはさまざまなことを学びました。それは、プロの技術や料理を作ってみてそこにかかる苦労や努力などもそうです。さらに、その苦労や努力が分かるからこそ、普段の食事に対してのありがたみや、おいしいものを作る作り手の努力なども感じることができたのではないでしょうか。この活動後、給食の残食が減ったように感じます。実際に体験してみることで、普段は目に見えない作り手の努力や、当たり前の日常へのありがたみが再認識出来たのではないでしょうか。

子どもたちの感想

  • こんなおいしい味噌汁を作ることができたのは、保護者の方やゲストティーチャーの方のおかげだと思いました。
  • おいしかったから、家族にも食べてほしいと思いました。家でも作りたいです。
  • 心を込めて作ったから、おいしくできたのかな。
  • スープの中に嫌いな野菜が入っていたけど、食べてみたらおいしかった。
  • 野菜がほくほくで、食感がとても楽しめた。
  • 食べる前から、においだけでもおいしかったです。

○その後の展開

本単元の授業はそのあと、「秋・冬野菜の特徴」「夏野菜と冬野菜の比較」「ベジタブル・ゴーゴー!を通して身についた力」の3観点をそれぞれ1時間ずつ用いて振り返りを行ないました。種や苗を植えるところから自分たちで野菜を育て、その経験から分かった秋・冬野菜の特徴を振り返ります。さらに次の時間、1学期に育てた夏野菜と2学期に育てた冬野菜の特徴を比較します。季節による野菜の食べている部位の違いや、食べ方の違いに、自分たちの体験を通して気付くことができます。最後に、2学期に行なった全ての活動を振り返り、どのような力がついたのかを考えます。長い時間をかけて、野菜を育てる大変さや、育ててくれる人がいることのありがたみなどさまざまなことが身に付いたり、気付いたりすることができました。

子どもたちは、自分たちで「やってみたい」と思ったことを形にし、野菜を育てるところから味噌汁にして食べるところまでさまざまな体験を積み重ねてきました。そのような体験を通して、直接実感してこそ、「自分のもの」として知識を獲得し活用していくことができるのではないでしょうか。自分たちが「やってみたい」と思った活動を通して食に関わることで、子どもたちが正しい食の知識や価値観を獲得し、生活を豊かにしていくことを願います。

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授業の展開例

○自分が食べている食べ物が食卓に届くまでにどれくらいの働く人が関わっているのだろう。
○食べ物の生産や流通、販売に関わっている人はどんな願いをもっているのだろう。

高井 壮(たかい そう)

兵庫県西宮市北六甲台小学校 臨時講師
教員2年目。子どもの主体性を引き出せるように、子どもの声からデザインする授業を目指し、授業作りに日々取り組んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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