2020.05.20
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ベジタブル・ゴーゴー~冬野菜を育てよう!~「大こんとごぼうはもうしゅうかくできるかな?」(vol.1) 【食と季節 食と感謝の心】[小2・生活]

本実践の当該学年では、学年目標を「にんじんの花~見たことないもの、見つけにいこう~」と掲げてきました。自分たちの経験したことのないものや、感じたことのないものにたくさん触れたい、見たいという思いを持って、学校生活を送ることを目指してきました。その思いの一環として、4月より野菜を育てて、その学習を振り返りながら野菜の生長に関する気付きを引き出し、それを伝え合い、振り返ることで、気付きの質を高めるといった「深い学び」を実現するために取り組んできました。その体験を受け、冬野菜を育てる全26時間の単元の15時間目を今回、21、22、23時間目の様子を次回の2回に分けて報告します。

今回の授業で子どもたちと話し合ったのは、「大こんとごぼうはもうしゅうかくできるかな?」ということです。子どもたちが野菜を育てていくうえで「もう収穫できるのではないか」と感じ発言したことからこの話し合いを行うことになりました。自分たちで感じた素直な疑問を出し合うことで、野菜の栽培をさらに自分事として考えることにつながり、これまでの経験を総動員して話し合いを行うことができました。

授業情報

単元:冬野菜を育てよう!
テーマ:食と季節 食と感謝の心
教科:生活  
学年:小学校2年生
時間:1時間

1. 自分の意見を名前マグネットで黒板に示そう!

第12回の「ベジタブル会ぎ」のテーマは、「大こんとごぼうはもうしゅうかくできるかな?」です。「ベジタブル会ぎ」とは、野菜を育てることで生まれてきた課題や気付きを話し合ったり紹介し合ったりする場です。これまで、「育てる時に感じたうれしいこと・困ったこと」「虫対策をするためにどうすればいい?」などについて取り上げてきました。

今回の話し合いを支援するために夏野菜と秋・冬野菜の特徴をまとめたものを教室に掲示しました。

「大こんとごぼうはもうしゅうかくできるかな?」の問いかけに、子どもたちは「もうできる」「わからない」「まだできない」の3観点で自分の意見を考え、名前マグネットを用いて黒板に示していきます。これまでの経験を通してそれぞれが自分の根拠をもって考え、その意見を、視覚的に示し分かりやすくします。

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2. なぜそう思うのかを考え、発表しよう!

「なぜそう思うの?」と問いかけます。子どもたちは、夏野菜を育てた経験や、冬野菜を育てている経験を通して、各々の考えを発表します。自分たちで実際に育てた経験があることで、たくさんの意見が出ました。

  • 葉っぱが大きく育っているからもう収穫できると思う。
  • 大きく立派に育って、土から出ているからもう収穫できると思う。
  • 見えていない部分があるから収穫できるか分からないな。
  • 長さはいいけど太さが足りないからまだ収穫できないと思う。
  • 大根がこんなに育って土から出ているのだから、ごぼうももう収穫できると思う。
  • 大根は土から出てきているのにごぼうは出ていないから、ごぼうはまだ収穫できないと思う。
  • 冬の野菜だから冬にとれる。だからもう収穫できそう。

野菜の収穫時期を予想することを通して、野菜の特徴に気付いたり、旬に気付くことができたりしました。冬は、土の中にできる野菜が多いから見た目からは予想しづらいなどの冬野菜に共通することや、花が咲く前に収穫しなければならないなど夏野菜とは違う点があることに気付くことができました。

3. 試し掘りをしてみよう!

葉っぱの大きさに着目したり、大根は白い部分が見えていたり、“冬”野菜だからもう収穫できるなど様々な意見を出し合い、自分たちの獲得した様々な情報を出し合いながら子どもたちは収穫時期を決定するために話し合っていきました。

しかし、話し合っていくうちに、大根とごぼうは土の中にあって収穫できるのか分からないと思う子が増えてきました。その中で、「分からないなら試しに掘ってみればいい。」と言い出した子がいて、周りの子たちもその意見に賛同し、掘ってみることになりました。「今掘ってみよう」という子どもの声から、すぐに畑に移動して、大根とごぼうをそれぞれ掘ってみました。土の中にあり見えていない部分に、期待と不安が入り交じりながら、まずは大根を抜きました。すると、「おお!」と子どもたちから歓声が上がるほど、なんとも立派な大根ができていました。ごぼうは、抜かずに少し掘ってみると、まだ細くてかわいらしいごぼうが見えていました。結果、大根は「もうできる」、ごぼうは「まだできない」という結果になりました。

4. 冬野菜と夏野菜をまとめて、比較する

 それぞれの野菜を収穫したあとで、「特徴」「花」「1番美味しい時」「食べている場所」の4観点で振り返りをしました。それをすべて1つの掲示物にまとめることで、夏野菜や冬野菜のそれぞれの特徴に気付くことができました。自分たちで体験し、思いを表現し、それを活動に起こしていくことで、野菜を中心とした食への興味や関心が高まり、生活を豊かにしていくことにつながっていくと考えます。

授業の展開例

○自分の住んでいる地域の地産地消の食べ物には何があるか調べてみよう。
○それぞれの季節の野菜の育て方や食べ方を調べてみよう。

高井 壮(たかい そう)

兵庫県西宮市北六甲台小学校 臨時講師
教員2年目。子どもの主体性を引き出せるように、子どもの声からデザインする授業を目指し、授業作りに日々取り組んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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