2003.05.20
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学校選択制アンケート

学びの場.comでは、学校選択制について、学校関係者、保護者に対し、2003年2月26日から3月5日の1週間、インターネットによるアンケート調査を行いました。

  昭和62年の臨時教育審議会の「教育改革に関する第三次答申」、平成8年の行政改革委員会の「規制緩和の推進に関する意見(第2次)」を受けて、平成9年に各都道府県教育委員会教育長あてに出された「通学区域制度の弾力的運用について」という通知を発端に始まった「学校選択制」。2000年4月に東京都品川区で導入されたのを皮切りに、豊島区、足立区、荒川区、江東区、杉並区、墨田区、日野市、多摩市、三重県紀宝町、岐阜県穂積町、滋賀県大津市など次々と広がっている。
 このことについて、学校関係者、保護者たちはどのように考えているのだろうか。
 学びの場.comでは、学校選択制について、2003年2月26日から3月5日の1週間、インターネットによるアンケート調査を行った。


【 調査対象 】
 幼児、小学生、中学生を持つ保護者、教育委員会職員および教員

 
【 調査方法 】
 0歳から17歳の子どもを持つ保護者を対象としたメールマガジン(会員数30000人)、教員による自主的な研究グループが運営するメーリングリスト等を通じてのアンケート協力。

 
【 回等者数 】
 幼児、小学生、中学生を持つ保護者 : 48名
 教育委員会職員および教員      : 12名

 
【 調査内容 】
 ・学校選択制を採用しているかどうか
 ・学校選択制のメリットについて
 ・学校選択制のデメリットについて
 ・学校の選択基準について
 ・学校選択制の今後について

 
【 調査期間 】
 平成15年2月26日~平成15年3月5日

 
【 回答者構成 】
 →回答者構成はこちら

 
調査結果

(1) 学校選択制を採用しているかどうか


問1 あなたの地域では学校選択制を採用していますか?
 
採用している
採用していないが検討中
採用していない
不明
教育
関係者
1
1
10
0
保護者
10
2
26
10
 18%の回答者が自分の居住地域で学校選択制が採用されていると答えており、検討集も合わせて85%が採用されていないと答えている。保護者では、不明が10名いるが、子どもが学齢前であるため知らないか、検討中で情報が公開されていないことが原因と考えられる。
 
(2) 学校選択制のメリットについて

問2 学校選択制のメリットは何だと思いますか?(3つ選択)
 選択制のメリットについては、全体で見ると、もっとも多かったのが「学校ごとの特性が行かせる」で24%(保護者35名、教育関係9名)、以下「競争原理により学校や教師の質が高まる」23%(保護者33名、教育意関係7名)、「自分の選んだ学校に行けることで子どもの意欲が高まる」20%(保護者30名、教育関係5名)となっている。保護者、教育関係者という属性による違いは特に見られなかった。

 
 
 保護者について、学校選択制のメリットが、実際に選択制を採用している地域、していない地域でどう違うのかを見たのが右のグラフである。これによると、採用している地域の保護者でメリットとして最も多いのが「競争原理により学校や教師の質が高まる」、次いで「学校ごとの特色が活かせる」「自分の選んだ学校に行けることで子どもの意欲が高まる」となっている。
 
   
 検討中も含め採用していない地域の保護者では、「学校ごとの特色が活かせる」が最も多く「競争原理により学校や教師の質が高まる」、「自分の選んだ学校に行けることで子どもの意欲が高まる」と続く。選択制の採用、不採用による大きな違いはないが、しいて言えば、採用されている地域の保護者の方が、採用されていない地域の親よりも「学校間の競争」を重要視していると言える。
   
 教育関係者については、実際に選択制を採用している回答者が1名であったため、採用していない地域についてのみ右のグラフで示した。前出の保護者と比較すると、さほど大きな違いはないが、「教育に対する感心が高まる」という点についての期待は、保護者に比べ若干低いことがわかる。
 自由回答は以下のとおりである。
○ 市内では、二校の「選択制」の小学校があります。一つは、市街地の学校。ドーナッツ化現象で児童が減っています。もう一つは、山間の小さな小学校です。今のところ、不登校の児童が後者の学校に転校するケースが多いようです。(教育関係・採用・山形県・40代・)男性)
○ 保護者の意識が変わる。「全て学校にお任せ」から「学校に任せることを明らかにする」。(教育関係・不採用・熊本県・40代・男性)
○ すべての学校で実施されてるわけではなく一部の小学校が中学を選べるのですが好きな部活があるところ、近くの中学が選べるなど利点はあると思う。(保護者・採用・岐阜県・40代・女性)
○ 我が家の場合、近くに学校があるにもかかわらず、その学校へ行けず、そこよりも遠い学校に行かせなくてはならない。近くの学校に行きたい、行かせたいと思う人は多いと思う。(保護者・採用・埼玉県・20代・女性)
 
(3)学校選択制のデメリットについて

問3 学校選択制のデメリットは何だと思いますか?
 
 選択制のデメリットについては、全体で見ると、もっとも多かったのが「人気のある学校とない学校の格差ができる」で27%(保護者41名、教育関係8名)、「人気が殺到した学校での設備の不適応」17%(保護者26名、教育関係4名、「保護者間に不安や風評が広がる」16%(保護者21名、教育関係7名)となっている。保護者、教育関係の属性別で見ると、1位はともに変わらないが、2位が、教育関係では「保護者間に不安や風評が広がる」、保護者では「人気が殺到した学校での設備の不適応」を挙げていて、両者の意識の違いが若干うかがわれる。

 
 
 保護者について、学校選択制のデメリットが、実際に選択制を採用している地域、していない地域でどう違うのかを見たのが右のグラフである。これによると、採用・不採用に関わらず「人気のある学校とない学校の格差ができる」ことを挙げた保護者が3割と最も多いが、2位以下で、採用・不採用による意識の違いが見られる。たとえば、採用地域の保護者で、「人気が殺到した学校での設備の不適応」が2位であるのに対し、不採用の地域では「保護者間に不安や風評が広がる」が2位となっている。これは、選択制に伴い学校の情報公開が進み、思ったほど不安や風評が広がらなかったとも考えられる。
 
   
 教育関係者については、実際に選択制を採用している回答者が1名であったため、採用していない地域についてのみ右のグラフで示した。これによると、1位は保護者と同様「学校間による人気の格差を挙げた回答者が最も多いが、2位に「保護者間に不安や風評が広がる」前出の保護者の場合とは異なる。また、保護者では1~3%に過ぎなかった「教師の心理的・物理的負担が増える」が教師では13%を占めている。
 自由回答は以下のとおりである。
○ 大規模校に適応できなかった子が「逃げ込む」ような誤ったイメージをもたれる危険があります。(教育関係・採用・山形県・40代・男性)
○ 選ぶ基準を見つけることが大変。保護者同士で教育を議論できる場が必要になるだろう。(教育関係・不採用・熊本県・40代・男性)
 
(4) 学校の選択基準について

問4 学校の選択は、何を基準に行われた(行われる)と考えられますか?(複数回答)
 
 学校選択の基準については、全体で見ると、「学校の特色が子どもに合っているかどうか」「家からの距離」「荒れているかどうか」「学校の施設の充実度や新旧」がほぼ同じくらいの比率で並んだ。「進学指導に熱心かどうか」についてはさほど影響がないものと思われる。

 
 
 保護者について、学校選択制の基準が、実際に選択制を採用している地域、していない地域でどう違うのかを見たのが右のグラフである。これによると、採用しない地域の保護者では「学校の特色が子どもに合っているかどうか」が最も多いのに対し、採用している地域では「家からの距離」が最も多くなっている。また、採用している地域では「兄弟や友人と同じ学校であるかどうか」も気になる点のようである。
   
 採用していない地域の保護者は「全校生徒の数」を選択の基準に挙げる回答者が16%であるが、採用している地域では8%にとどまっている。「進学指導に熱心かどうか」も採用していない地域の保護者のほうが11%で、採用している地域の保護者の4%よりも高い数字となっている。
 
   
 教育関係者については、実際に選択制を採用している回答者が1名であったため、採用していない地域についてのみ右のグラフで示した。これによると、教育関係者では1位が「荒れているかどうか」で3割を占め、次いで「学校の施設の充実度や新旧」「進学指導に熱心かどうか」が同数で2位となっている。保護者では1位だった「学校の特色が子どもに合っているかどうか」は10%に満たず、また、「子どもの意思」と答えた回答者は1人もいない。教育関係者と保護者との意識が大きくことなるがわかる。
 自由回答は以下のとおりである。
○ どんな教員がいるか。(教育関係・不採用・熊本県・40代・男性)
○ 教師の質(保護者・不採用・長野県・30代・女性)
 
(5) 学校選択制の今後について

<選択制は時代の要請>
 今後、学校選択制はどうなっていくのか、あるいはどうなるべきか、自由に回答してもらった。全体としては、「時代の趨勢として、今後も進むだろう」という見方が多数を占め、特に保護者では肯定的な意見が目立った。

<教育関係者は慎重>

 教育関係者の意見を見ると、今後も進むと思うが手放しで賛成というわけではなく、
「過疎地では『選択制』など到底不可能であり、慎重に取り組まなければ教育の地域間格差が増大することは明白。また統廃合の方便として選択制を導入するのではなくあくまでも健全な競争を喚起することに主眼を置くべき」(教育関係・採用検討中・三重県・40代・男性)
「学校の体制が変わらない限り、更に教師への不信感が高まるだけ」(教育関係・不採用・兵庫県・30代・男性)
「地区の行事などを考えると、近所の子供同士が違う学校だと、地域の結びつきの上で不都合が出てくる」(教育関係・採用・山形県・40代・男性)
「会社が競争することにより、より良い財やサービスを提供するようになるのは、審判である消費者がしっかりしているから。だから、学校間の競争においても、審判が重要」(教育関係・不採用・熊本県・40代・男性)
など、保護者に比べ慎重な意見が目立った。

<保護者は大きな期待>
 保護者の賛成意見を見ると、 
「学校選択制は積極的に取り入れていくべき。これからの時代、頭の良さだけが全てではないし、スポーツに強い学校、国際色豊かな学校等、色々な特色があった方が、子供の可能性も広がるし個性も伸びると思う」(保護者・鹿児島県・30代・女性)
「選択制で教育機関に新たな風が吹き込まれることは間違いない。教育はその時代背景や必要性に応じて柔軟に変化して欲しい。古い体制を変革していくには時として荒療治は必要。」(保護者・東京都・30代・女性)
など、選択制に対し、大きな期待を寄せているようである。

 特に、
「先生の指導力の向上や、施設の充実を図り、公立校も私立と同じく経営危機を持って努力し、困難を乗り越えられないときは統廃合もあるという現実を見据えて、先生方に努力してほしい」(保護者・東京都・30代・女性)
「人気のある学校に子供が集中すると思うが、そのことにより他の学校も先生も向上していくようになってほしい。学区制はこれからはナンセンス。学校もどんどん変わっていくべき」(保護者・埼玉県・30代・女性)
などのように、競争原理により、教育の質が高まるであろうという期待が多く見うけられた。

 また、
「家の前の川を境に町名が違います。川を挟んで家のすぐ前に中学校がありますが、学区域外なのでそこではなく、徒歩30分の別の中学に行かなくてはならないのです。通学路は人通りの少ない、物騒な道。帰りが心配でクラブ活動もさせられません。せめて、一番近い中学に行けるようにして欲しい」(保護者・東京都・30代・女性)
「人気校と不人気校の差は出ると思うが、先生や校風、または同じ学区の友達関係などで 苦しんでいる子どもにとっては、現状打破に有効だと思う。」(保護者・神奈川県・40代・女性)
などのように、学区制により通学の不便を感じている保護者や、いじめなどの問題を抱えている子どもにとっては、選択制は有効な解決策と考えられているようである。

<学力格差、地域とのつながりの希薄化は不安>
 一方で、反対意見もある。理由としては、
「それぞれの学校の特色を生かすのはいいけれど、引越しなどで転校になると、今まで以上に子どもへの負担が心配。せめて学習面だけは、だいたい揃えていってほしい。」(保護者・岐阜県・30代・女性)
「学校選択制は小学校においてはするべきではないと思います。小学校の間はやはり近い地域の学校に行き、近所の友達と遊び学ぶべき」(保護者・兵庫県・40代・女性)
など、学力格差による不安、地域とのつながりがなくなることの不安などが挙げられる。

<弾力的な導入のアイデアも>
 また、以下のように、完全に選択制にするのではなく、特別な理由がある場合には選択ができる、従来の学区か選択性かを選べるなど、弾力的な導入を希望する意見も見られた。
「原則的に行く学校は決めておいて、違う学校に替えることもできる…できるというくらいでいいと思う。ちょっと、近所に引っ越しただけなのに、学区の境目で転校せざるをえなかったりしたらかわいそう。」(保護者・愛知県・30代・女性)

 教育関係者でも以下のように同様の意見が見られた。
「思い切った特色をもった学校を少数作り、そこは、学区を設けず、それ以外は公立学校が持つ教育の機会均等という観点からも校区の弾力化程度で対応した方がよいのではないかと考える。早くから自分の進路意識をもって特色ある学校への進学を希望する場合以外は、まだ、自分の進む道を模索中の義務教育の段階では、機会均等な教育を地域に根ざした学校で受ける方がよいのではないか。ひとつまちがうと学校間格差の拡大や現在高校に存在する教育困難校的な学校を作り、学校の優越ができ、変な優越感や差別意識など子どもたちの意識にも影響があると思われる。」(教育関係・三重県・40代・男性)

<学校の情報開示、不安要因の検証は必要>
 選択制を実施するにしても、学校の情報を公開して欲しい、デメリットについてもきちんと考慮して欲しいなど、慎重な検討を求める意見もいくつか見られた。
「選択が自由にできるように学校を広く開放してもらいたい。また、学校ごとの特色ははっきり分かれてもいいと思う。それらは私立の幼稚園と同じような感じで・・地域で行きたい人は行くだろうし、特色を選ぶ人はそうするだろうし。何より子供にあった教育方法(いろんな特色)を作って、幅広く専門分野も作ってほしい。」(保護者・大阪府・30代・女性)
「例えば、遠くの学校に通う子供たちは、地域とのつながりが希薄になり、何かの事件に遭遇しても助けてもらえなかったり、対処が遅れたりする可能性も出てくる。また、学校の統廃合により、学校が近くに無くなる事も考えらる。こうしたデメリットにどう対処するか納得できないうちに始めるのは不安」(保護者・神奈川県・20代・女性)

<学力低下への不安>
 公立校の学力低下に対する不安も根強い。以下の意見は、保護者の意見を代表するものであろう。
「私立の中学なら塾に通わなくても学校側が学力をつけてくれると思えるけど、公立中学の場合は、塾に通わなければ本来の学力がつけられないというのは、少しおかしい。学校選択制によって、各学校で何を重点的に教えていくか特色が出てくれば、親としても子どもに合わせて学校を選ぶことが出来る。また人気の高い学校が出てくれば、親の学校に対するニーズがはっきりし、学校側としても何を提供するべきか明確になるのではないか。もっと学校側は、親や子どものニーズを積極的に知る努力をすべき。そのためには、学校選択制はとてもいい機会になる」(保護者・北海道・40代・女性)

<学校も市場ニーズを意識する必要がある>
 そもそも、学校選択制のニーズがこれほど高まっているのは、公立校の学力低下に端を発するのは疑いようもない。「学力をつけて欲しい」というのは、親としては当然の要望である。一般企業のように利潤追求を優先した競争は学校教育には馴染まないという意見はもっともであるが、「学力をつけて欲しい」という基本的な要望にはこたえるべきであるし、ただ「学力をつける」と言っても、難関校に合格するだけの実力をつけたいのか、基礎的な学力さえあればよしとするのか、といった方針の検討も必要であろう。更には、スポーツ、芸術に力を入れるなど、学校ごとの特色を明確に打ち出して、子どもの特性や将来を見据えて選択できるように、学校を多様化していくことも検討する時期にきているのかも知れない。

 
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PDF版はこちら (sentakusei_enquete.pdf)


 

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