2003.03.11
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学校サイト管理者アンケート

学びの場comでは、2002年11月から12月にかけて、学校のホームページを管理されている方を対象としたアンケートを実施しました。

調査形式はメールによる依頼によるもので、「学校の種別」をはじめ、「ホームページの更新頻度」「更新は誰が担当しているか」「ホームページを保護者や地域とのコミュニケーションに活用しているか」「学校の情報化に関して困っていること」などを聞いてまいりました。その結果、419件のご回答をお寄せいただきました。お忙しい中、快くアンケートにお答えくださった皆様には感謝いたします。

【調査概要】

 実施期間 2002年11月26日~2002年12月16日
 調査対象 学校サイト管理者 調査方法 メールによる依頼 有効回答数 419 調査主体 学びの場.com事務局 
<設問事項>  
 1.学校種別
 2.貴校ホームページの更新頻度はどれぐらいですか
 3.更新はどなたが担当されていますか
 4.ホームページを保護者や地域とのコミュニケーションに活用されていますか
 5.学校の情報化に関して困っていることは何ですか
 6.学校の情報化に関して困っていることは何ですか(自由記述で)  

アンケートの結果から
 学校のホームページに関するアンケートを実施した結果、返ってきた回答は419件。その内訳を見てみると、小学校156件、中学校74件、高等学校156件、小中一貫校1件、中高一貫校30件、その他の学校2件となっている。


◆更新の負担は一人の先生に
 このアンケートの結果を見てみると、学校のホームページは一人の先生が更新作業を進めているケースが多く、その負担はかなり大きなものとなっていることが伺えるものとなった。更新を担当される先生は、決して専任の担当者というわけではなく、単にパソコンの扱いに馴れているなどの理由で任されることになった普通の教員に過ぎず、通常の授業を受け持ちながらも、時間を見つけては更新作業を進めているようである。「他の雑務に追われ、ホームページの更新を行う時間的余裕がない」(高等学校)、「時間に追われる仕事の合間にやっているので更新が不定期ですし、凝ったものがつくれないでいます」(小学校)などの意見が返ってくるように、常に新しい情報を発信したいと思いながらも、時間的な制約があり苦労しているというのが実情のようである。

 その更新作業は、パソコンでの編集作業だけで終わるものではなく、他の先生方から載せるための情報を集めたり、機器のメンテナンスにいたるまで、多岐に渡って一人で担当しているようである。こうした傾向は、学校の情報化が進みネットワークが整備されても減るどころか、益々増えてくるように思われる。一例をあげれば、「校内のPCの管理は、プログラムのアップデート、メンテナンス、キーボードなどの清掃から個人で使っているノートPCの使い方の説明までをしているにもかかわらず、感謝されることもなく不具合の文句ばかり言われる」(高等学校)のようにコンピュータに関することは、全て詳しい先生に任せてしまおうという風潮が、学校には見られるようである。さらに、更新担当者を一人の先生に任せてしまうと「学校全体の情報が網羅できるわけではなく、担当している学年にどうしても偏ってしまった内容になってしまう」(中高一貫校)といった問題もある。

 その他にも、「メールによる問い合わせに対して回答を返信する作業はかなり時間をとられる。文書で発信するため学校の公式見解のように扱われる可能性があり、返信文の作成には神経を使う」(高等学校)など、あまりにも一人の先生が対応するにしては、範囲が広すぎるように思われる。特にセキュリティやメンテナンスに関しては、予算をかけて専門の職員を配置してほしいとの声もある。 

◆周囲がスキル向上に努め、協力できる体制を
 学校の情報化に関して困っていることは何かとの質問でも、「管理者の作業負担が多すぎる」という回答が最も多く返ってきたが、自由記述でも「テレビ会議などを行ったら、たえず更新し、また学校祭など大きな行事のときは、ビデオ編集したものを載せており、大変な手間である」(高等学校)といったように、ホームページを管理する担当者は常に最新の情報の公開が求められる。せめて複数の先生が分担して更新するようにすれば負担が軽減されるように思われるが、教育現場においてホームページを作成できるほどのスキルを持つ教員は限られてくるので、どうしてもスキルの高い先生に負担がかかってしまう。こうした周囲のスキル不足は「学年ごとにホームページの作成のレベル、内容の差が出ている。全員が作成に習熟していないために、担当に負担がかかる」(小学校)などの問題につながってくる。「ホームページの作成は、ワープロソフトでもできるのに、難しいと考えている教員が多いようだ。楽しく気軽に取り組んでもらえれば」(高等学校)という意見が出るように、多くの教員が積極的に更新に協力していけるような体制が望まれる。

 先生方のスキルを上げていくためには、研修を行うことなどが考えられるが、「デジカメ研修やパワーポイントなどの研修は進むが、ホームページとなるとそれほど必要性を感じていないようで、何をどれぐらい公開するか基本方針など、全教職員での理解が進んでいない」(小学校)、「職員間で研修を持ちたいが、なかなか時間がないことや単発的な研修では、その時はわかっても、いざとなると忘れてしまっている事が多い」(小学校)などのように、ホームページの更新を急務と考えていないせいか、教員同士の足並みが揃わず苦労しているようである。また、実際に研修を行い、更新作業に協力してもらっている学校でも、次の回答のように万全の状態とは言えないようである。「職員にそれぞれ担当の学級や分掌のページを作ってもらい、ネットワーク管理者である私やパソコンに詳しい先生数名で更新している。しかし、毎年研修でホームページの作成の仕方をしても、職員の中には操作技能に優れていない人もいる」(小学校)。

 このように、学校サイトの管理者の負担を大きなものとしている要因には、周囲の理解が得られないということがあげられる。「周りのホームページに対する理解が無いので、作業が負担に感じることが多い。インターネットやホームページはまだまだ、一部のものであるとの認識が強い」(高等学校)という意見のように、周りの認識の低さが、担当者の負担を大きくしている。まず第一の問題として、自分の学校のホームページに対して関心が低い先生が多いことがあげられる。自由記述の回答の中で、「我が校の教職員のホームページへのアクセスも、生徒、保護者、他の人たちに比べ逆に低い状態にあるようである」(中学校)という意見は、決して特別な例ではなく、かなり見うけることができた。どうにか、先生方に協力してもらっても作業を分担しようとしても、「項目ごとに管理者を決めても、なかなか更新してくれない現実がある。結局HPの統括管理者が一人で更新している」(高等学校)などのように、うまく機能していないようである。

 また、地域ボランティアでPTAが学校のホームページを更新しているケースもあるが、「ホームページ運営が、PTAの負担になっております。現場に居る訳ではなく、必ずしもリアルタイムな更新ができるわけではないので、どうしても更新にタイムラグが発生してしまいます」(小学校)という回答が返ってきているように、先生が更新している場合とは別の問題が生じるようである。

 「ホームページの維持管理が校務分掌内に位置づけられておらず、ボランティアで更新していく状況だと、頻繁に更新できにくいのが現状である」(中学校)という意見から見ても、ホームページの更新作業が、苦労の多い割に学校から認められていないことに不満を覚える担当者も多い。結局、学校にいる間には作業が終わらず、家に持ち帰って作業したり、長期休暇の時などを利用して更新しているという回答も見られた。こうした苦労が学校から認められていないことから、分掌事務として認証を望むといった意見もある。 

◆学校ホームページは外部との交流のパイプ役として重要
 しかし、学校のホームページというのは、情報を発信する貴重な場でもあり、担当者は学校外部との交流のパイプ役も果たしている。「ホームページを見てくれた学校のOBの方などが、『懐かしい』というメッセージを掲示板に打ち込んでくれる。検索で学校を見つけ交流を申し込んでくれる学校もある。それがまた楽しみで更新している」(中学校)、「自宅や職場でご覧いただき、行事予定がわかって助かるとか、子供の様子がわかってうれしかったといったような感想をいただくことがあり、これを励みにしています」(小学校)という回答に見られるように、苦労の多い作業ながらも、そこから得られるものも大きいように思われる。 

 Q.貴校ホームページの更新頻度はどれぐらいですか?
更新頻度
全 体
小学校
中学校
高校
その他
 毎日
29
9
6
10
4
 週1回
110
49
14
36
11
 月1回
127
47
24
47
9
2-3ヶ月毎
54
16
10
23
5
 数ヶ月毎
69
26
11
28
4
 ほとんど更新しない
30
9
9
12
0

 学校のホームページの更新頻度を、「毎日更新」「週1回更新」「月1回更新」「2-3ヶ月に1回更新」「数ヶ月に1回更新」「ほとんど更新しない」の選択形式で尋ねたところ419件の回答のうち、最も多かったのが「月1回更新する」という127件、続く「週1回更新する」と答えた110件の回答と合わせれば、全体の半数を超えるものとなった。これに「毎日更新する」という29件の回答と合わせれば全体の64%にも上り、学校のホームページを管理されている先生は、忙しいながらも月に1度はホームページを更新して、新しい情報の発信するように心がけているようである。

 ただし、全体の7%にあたる30件は、「ほとんど更新しない」と回答しており、更新する時間が無いという理由からか、学期や年度が変わっても、そのままの状態で放置されているホームページも、多く存在するようである。この更新頻度を校種別に見た場合、以下のような結果になっている。
 毎日更新するという学校は、小・中・高等学校ともに6%~8%と、全体の1割にも満たなかったが、いずれも全体の約30%が月1回更新すると回答してきている。中でも小学校の場合は週1回更新するというものが31%に上り、中学校や高等学校に比べ、頻繁に更新されるという結果が見られた。中学校と高等学校の間には、更新頻度に大きな差は見られなかったが、中学校の場合、ほとんど更新しないという回答が全体の12%にもなり、思うように更新が進まない学校も多いように見受けられる。なお、30件あった中高一貫校からの回答を見てみると、毎日更新、週1回更新、月1回更新の合計が21件で全体の70%となり、ほとんど更新しないという回答が0件だったことからも、かなり高い頻度で更新されていることがうかがえる。 

 Q.更新はどなたが担当されていますか?
更新担当者
全 体
小学校
中学校
高等学校
その他
(中高一貫校など)
 担当の先生(1名のみ)
276
99
50
108
19
 担当の先生(複数名)
124
53
19
40
12
 教員以外の事務担当者
7
1
1
4
1
 外部業者委託
8
1
2
4
1
 地域ボランティア
4
2
2
0
0

 学校のホームページを誰が更新されているかを、「担当の先生(1名のみ)」「担当の先生(複数名)」「教員以外の事務担当者」「外部業者委託」「地域ボランティア」の選択形式で、ご回答いただいたところ、全体の65%にあたる276件が、担当の先生が1人で更新しているとの答えが返ってきた。複数の先生で更新しているという回答は124件と全体の30%に過ぎず、担当の先生が専任で更新しているというケースが大半のようであり、かなりの負担が1人の先生にかかっていることが予測される。事務担当者や外部委託業者など、教員以外の人が更新するという回答は、合わせても全体の5%程度に過ぎず、地域ボランティアを含め、学校外の人が学校のホームページの更新に協力するというケースはまれのようである。これを校種別に見てみると次のような結果となる。
 小・中・高等学校ともに、担当の先生が一人で学校のホームページを更新されるというケースが最も多く全体の7割近くとなることに変わりは無いが、小学校の場合は、先生以外の人が行進するというケースはまれで、学校外部の人に頼むということはほとんど見うけられない。また、回答の総数が少なかったせいもあるが、中学校では、地域ボランティアや外部委託業者に更新を頼む割合が、小学校や高等学校よりも高くなっている。そして高等学校では、外部委託業者にホームページの更新を任せているという回答が4件見られたが、そのいずれもが私立校であり、教員以外の事務担当者が更新するという回答も4件のうち3件が私立校からのものとなった。地域ボランティアに頼むという回答は全く無く、小学校や中学校に比べると地域との連携は、高等学校ではあまり見られない。これを中高一貫校だけの割合で見てみると、学校外部に頼むというケースが少ないのは、普通の中学校や高等学校と変わらないが、複数の先生が担当しているという回答が、37%にも上っており、先生方が協力することで、一人の負担を軽くしようとする体制がうかがえる。 

 Q.ホームページを保護者や地域とのコミュニケーションに活用されていますか?
保護者や地域との
コミュニケーション
全 体
小学校
中学校
高等学校
その他
(中高一貫校など)
学校情報の公開等に日常的、 積極的に利用している
210
92
38
63
17
大きなイベントの時だけ利用している
58
16
10
25
7
利用したいとは思うが、現在はほとんど利用していない
112
35
22
51
4
そのような目的では利用していない
39
13
4
17
5

 学校のホームページの利用形態として、ホームページの情報を通じて保護者や地域とのコミュニケーションに活用されているかを、「学校情報の公開等に日常的、積極的に利用している」「大きなイベントの時だけ利用している」「利用したいとは思うが、現在はほとんど利用していない」「そのような目的では利用していない」の中から選択形式で、ご回答いただいた。その結果、全体の回答419件のほぼ半数にあたる210件が、学校のホームページを保護者や地域とのコミュニケーションに日常的に活用していると答えている。大きなイベントの時だけ利用していると回答した58件と合わせれば、64%がそのような活用手段を取っていることになり、学校のホームページが校内だけにとどまらず、外部との有効なコミュニケーションの手段になっていると思われる。現在は利用されてなくても、利用したいと考えるとした回答も112件と、全体の30%近くに上っていることから、今後、このような活用は、ますます増えると思われる。以下、校種別に見てみると次のような結果になっている。
 ホームページで学校の情報を日常的に公開して、保護者や地位とのコミュニケーションに活用しているとの回答は、小学校が60%となっているのに対し、中学校51%、高等学校40%と、上の学校に上がるに連れて、その割合は減少している。これは小学生の子どもを持つ家庭が、学校行事なども含めて、ホームページから得られる学校の情報に大きな興味を寄せていることから、それに対応する形で学校側が情報を発信しているように思われる。ただし、中学や高校でも約30%が「利用したいと思う」と回答しており、「そのような目的では利用しない」との回答は、中学で5%、高等学校で11%に留まったので、機会さえあればホームページを活用して保護者や地域とのコミュニケーションを進めていこうと考えているようである。

 高校の場合、公立と私立に分けて見てみると、私立校の場合は「日常的に利用している」と「そのような目的では利用していない」の両極端の回答率が高くなっており、ホームページの利用形態に関して、学校独自の方針をはっきりと打ち出しているようである。

 また、中高一貫校の場合は、普通の中学や高校と異なり、30件の回答のうち17件にあたる学校が「日常的に活用している」答えており、小学校並にホームページの活用が図られているようである。これに「大きなイベントの時だけ利用している」との回答を合わせれば、全体の80%が何らかの形でホームページをコミュニケーションに活用していることになり、小学校以上に定期的な利用が進んでいるということになる。 

 Q.ホームページ管理を含む学校の情報化に関して困っていることや課題は何ですか?(複数回答)

学校の情報化に関して
困っていることや課題
全 体
小学校
中学校
高等学校
その他
(中高一貫校など)
管理者の作業負担が多すぎる
287
102
54
106
25
児童・生徒の有害情報へのアクセスや個人情報漏洩の心配がある
116
39
28
42
7
同僚・上司・保護者など周囲の理解が必ずしも得られない
101
29
12
54
6
必要な予算が手当てされない
136
43
23
59
11
その他
116
41
30
37
8
特に無い
50
18
6
22
4

 学校の情報化が進む中、ホームページを管理されている先生は、どのような課題に頭を痛めているのか、「管理者の作業負担が多すぎる」「必要な予算が手当されない」「児童・生徒の有害情報へのアクセスや個人情報漏洩の心配がある」「同僚、上司、保護者など周囲の理解が必ず得られない」「その他」「特に無い」の選択肢から複数回答で、ご記入いただいた。その結果、最も多く回答が寄せられたのは、「管理者の作業負担が多すぎる」というもの。419件の回答のうち、7割近くに上る287人の担当者の方が、ホームページ管理の大変さを訴えている。次いで多かったのが「必要な予算が手当されない」というもので136件。教育現場では限られた予算の中で、情報化に対応していこうと必死になっている様子がうかがえる。続いて、「児童・生徒の有害情報へのアクセスや個人情報漏洩の心配がある」が116件、「同僚、上司、保護者など周囲の理解が必ず得られない」が101件という順になっており、困っていることに関して「特に無い」と答えたのは、50件と全体の1割程度に過ぎず、情報化に際して様々な問題を抱えている学校現場が浮き彫りになってくる。この回答を校種別に見てみると次のようになってくる。
 学校の情報化に関して困っていることや課題について質問したところ、小・中・高等学校の全てを通じて、「管理者の作業負担が多すぎる」という回答が圧倒的に多く、小学校では156件中102件、中学校では74件中54件、高等学校で156件中106件が記入している。これは全体の回答者の7割近くが答えていることになり、このことからも学校のホームページを管理する担当者には、かなりの負担が生じているように思われる。

 また、中学校の場合は「有害情報へのアクセスや個人情報漏洩が心配」との回答が、小学校や高等学校に比べ高くなっており、管理者の作業負担に次ぐ課題として上がっている。どうやら多感な時期である中学生が、不用意にネットにアクセスすることから生じるトラブルに対して不安を抱く先生が多いように思われる。

 学校の情報化に関して「特に心配なことは無い」と答えた回答の割合は、小学校で最も少なく、中学校、高等学校と上にあがるに連れて高くなってくる。これは高等学校などの方が早い時期からコンピュータが導入されていて、そうした体制が整っていることもあるように思われるが、小学校場合は、子どもの年齢が低いこともあり、情報化に際して気を付けなければならないことも多いようだ。また、高校の場合は「特に無い」という回答は公立に比べて私立の方が高くなっており、情報化の課題解決に向けて取り組んできた様子がうかがえる。そして、予算に関しての悩みは、中学校が著しく高くはなっていたものの、小学校から高等学校まで、いずれも不足を訴えており、学校の情報化に向けて充分な予算が行き渡っているとは、とても言えない状況となっている。これは私立の高校や中高一貫校でも同様で、今後の課題として残されるところである。

アンケートの自由記述から見る課題
 ホームページ管理を含む学校の情報化に関して困っていることや課題を聞いた際に、選択形式以外に、その他とご回答いただいた方を中心に、自由記述でも回答をいただいた。自由記述の部分にご記入いただいたのは全体の回答の約半数にあたり、そこに書かれている内容から、学校ではどのようなことが問題になっているのか、その傾向を分析していく。
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