2014.11.05
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地域でできること、地域だからできること(2)

NPO法人まどり 代表理事 水木 千代美

          
 

拠点づくり編(2)

 

地域活動を通して見えてきたこと

 佐竹台連合自治会のお手伝いをするようになってから、地域自治のほとんどを、高齢者が担っていることに気がつきました。確かに時間の余裕は私たち世代よりもあるとは思いますが、力仕事などは若い人が担うなどの適材適所の棲み分けが必要なのでは、と思うようになりました。とはいえ、かく言う私も、特別にボランティア精神にあふれていたわけでもなく、校区変更でお世話になったことをきっかけに関わるようになったわけで、若い世代の協力を得るには、まずは、自然に人がつながる場所が必要なのではとの考えに至りました。その思いを、自治会活動でつながりのあるNさんに話すと、「アカデミー書房(※)のおばちゃんが、前にそんな場所をつくりたいって言ってたから話してみる?」と。その後、承諾をいただき、居場所づくりはスタートすることになりました。
 
※アカデミー書房:千里ニュータウン開発時に近隣センターという商店街の本屋としてオープン。
   当時は、1、2階店舗の内、1階の前半分程度しか使用しておらず、1階半分と2階部分の利用承諾を得た。
 

トヨタ財団に応募そして採択

 利用承諾を得ても、居場所を作るにはお金がかかります。『千里ニュータウンは作られた町です。寺社仏閣など自然と人がつながる場もなく、また祭りなどの伝統行事もありません。高齢化率が高くなったこの町で、人がつながる場所を公的財源をなるべく入れないで作ることができたなら、他地域の参考にもなるはず』との主旨でトヨタ財団に応募しました。結果は採択。2011年から2年間居場所作りのプロジェクトがはじまりました。
 

子どもも参加できる居場所作り

 このプロジェクトには、子どもも参加しています。まずは、お店づくりに使う木のことを学ぼう!とういうことで、地域の青少年対策委員会との共催で、奈良県吉野町・川上村まで、一泊の勉強合宿に、公募で集まった子ども大工さんを連れていきました。200年生の山を見て、製材所を見学し、翌日には実際に山に入り、山師さんから木の伐り方を教えてもらい、ちょっと細めの木を伐らせてもらいました。 “木を伐って帰らないとお店ができない”という使命感を持った子どもたちの、木を伐り、枝を払い、皮を剥く作業を黙々と行う姿は今でも忘れられません。子どもは自分でやると決めたことは、やりとげる力を持っているんだなと感動をもらいました。子どもたち、保護者、吉野の皆さんと一緒にご飯を食べ、班ごとに感想を発表し、お風呂に入り、寝て、学ぶという時間は子どもたちにとっても、大人たちにとっても有意義な時間となりました。その後、見学の時に製材していた床材をみんなで張ったり、左官職人さんに指導を受けながら、壁塗りをしたり、木工家さんと家具を作ったりして、2011年9月に居場所は完成しました。
 

子どもの居場所とは

 居場所づくりをしている時でした。子ども大工さんに入っていないこどもたち3人が、ちょっかいを出しに来ていました。そして、帰り際に私にこう言ったのです。「なあ、次はいつやるん?」。この子たちは参加したいと思っている。だからちょっかいをだしていたんだと伝わってきました。私はなんて答えようかと焦りました。子ども大工さんは若干の保険料などの参加費が必要で、この子たちの家庭はたぶん応募はしないだろうと思われ、しかもすでに締め切りは過ぎていました。「今回はもう締め切ったけど、次にするときにはまた来てな」と言うのが精いっぱいでした。子の時、地域に必要な場所の意味、大人が子どもたちにすべきことが見えたような気がします。

 
※「さたけん家」ができるまでは、こちらのHPの「まちづくりレシピ」にまとめています。
 
【写真の説明(左から)】
・吉野の山で木を伐って枝を伐って皮を剥いでいるところ
・みんなで杉の床を貼っているところ
・みんなで左官壁を塗っているところ

水木 千代美(みずき ちよみ)

NPO法人まどり 代表理事
次世代にmよりよい環境を引き継ぐためのNPOを運営しています。地域の皆さんと、「地域で子育て」を日々行っています。"普通のおばちゃん"の活動をお伝えしていきたいと思っています。

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