2018.02.07
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小規模校のための遠隔教育(vol.1)

近年、働き方改革が大きな注目を集めており、遠方にある拠点との会議やテレワークを行うために、テレビ会議システムを導入している会社も増えてきています。教育現場でもテレビ会議システムなどのICTを活用した「遠隔教育」が進められていることをご存知でしょうか。これから2回にわたり、主に過疎地や離島などの小中学校で取り組まれている遠隔合同授業の取組について、ご紹介します。(右の画像は、文部科学省「遠隔学習導入ガイドブック 第二版」P.17より転載しています。)

これまでも、大学など一部の教育機関では遠隔教育の導入が積極的に進められてきましたが、平成27年4月からは対面により行う授業が原則である全日制・定時制課程の高等学校でも同時双方向型の遠隔教育が認められることとなりました。一方、小中学校では、インターネットの教育利用が始まった黎明期より今日に至るまで、国語や算数など通常の授業に遠隔教育が取り入れられることは非常に稀で、一般的に遠隔教育と言えば、遠方にある学校同士をつないで児童生徒が交流するような“遠隔交流学習”が中心でした。

小規模校の課題

近年、過疎地や離島などにある小規模校に遠隔教育を取り入れて、教育そのものの質を上げることを目的とした遠隔学習も行われ始めました。この“小規模校における遠隔授業”が注目された背景として、小規模校の置かれた教育環境の実態や課題について整理します。

学校教育法施行規則では、小中学校における適正な学校規模を12学級から18学級までとしており、11学級以下の小中学校を小規模校、小学校5学級以下、中学校2学級以下の学校を過小規模校と呼んでいます。

このような小規模校や、例えば1学級5人以下のような少人数学級では、一人ひとりの児童生徒に対してきめ細かい指導が行いやすいなどの利点がある一方で、人間関係が固定化されてしまいがちで、集団の中で自己主張したり、他者に対して自分の考えを伝えたりするコミュニケーション力や社会性を養う機会が少ないという課題があります。また、集団の中で多様な考え方や見方に触れる機会が少ない、班活動やグループ分けに制約が生じ、児童生徒同士で学び合う協働的な学習が行いにくいという課題もあります。

小規模校や少人数学級が抱える課題
出典:文部科学省「遠隔学習導入ガイドブック 第二版」P.2~3 より

出典:文部科学省「遠隔学習導入ガイドブック 第二版」P.2~3 より

児童生徒が集団の中で多様な考えに触れ、認め合い、協力し合い、切磋琢磨することを通じて、思考力や表現力、判断力、問題解決能力などを育み、社会性や規範意識を身に着けさせるためには、一定の規模の児童生徒集団が確保されていることが重要ですが、平成28年度学校基本調査によると、過小規模校の割合は10.8%(小学校)となっています。少子化や過疎化が進行する人口減少社会を迎える中、この割合はますます増加する見込みです。

また、複数の学年を一つの学級にする複式学級においては、1時間の授業の中で教員が二つの学年を交互に指導する必要が生じ、それぞれの学年の児童生徒に対して十分な指導時間を確保し難いという課題があります。また、複式指導特有の指導技術が必要とされるため、教員への負担も大きくなります。

この点に関し、文部科学省が策定した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」では、小規模校において具体的にどのような教育上の課題があるかを考えていく必要があり、特に複式学級が存在するような過小規模校では、一般に教育上の課題が極めて大きいため、学校統合等により適正規模に近づけることの可否を速やかに検討する必要があるとしています。

しかし、学校は児童生徒の教育のための施設であるだけでなく、地域のコミュニティの核としての役割を求められることも多く、また学校統合にあたっては、統合先の学校までの通学距離が長すぎる(小学校でおおむね4km以内、中学校ではおおむね6km以内という基準が設けられています)などの地理的条件が制約となって、統合が困難な場合も少なくありません。

そのため、小規模校のデメリットの解消・緩和のためには、
・小中一貫校として一定の学校規模を確保する
・他地域の学校を訪問したり、本校・分校間で定期的に行き来する。
などの方策を積極的に検討・実施する必要があるとされています。また、それらの方策の一つとしてICT活用による他校との合同授業の継続的な実施も挙げられています。

遠隔合同授業とは

文部科学省では、平成27年度から3年間、「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」(以下、実証事業)を通じて、全国各地にある小規模校を対象に遠隔授業を継続的に実施することによる、小規模校の課題解決について実証を行いました。この実証事業で実践された遠隔学習の取組は、その成果を基に作成された「遠隔学習導入ガイドブック」に詳しく記されています。この実証事業で行われた遠隔学習の取組について簡単にご紹介します。

従来型の、遠く離れた学校を結んで行う交流学習は、多くても年に数回程度、単発的に実施することが多いのですが、この実証事業で行われた遠隔学習では、同じ地域内にある近隣の学校同士をつないで、同時に授業を受ける児童生徒数を増やし、前述のような小規模校の課題を克服することを目的としています。これらの授業は、両校の児童生徒が合同で学ぶという特徴から、“遠隔合同授業”と呼ばれています。

以下に、従来型の遠隔学習と実証事業における遠隔合同授業の違いを整理します。

従来型の遠隔学習遠隔合同授業
主な活動 遠く離れた学校の児童生徒との交流 近隣の学校同士が合同して多人数での授業を実施
実施頻度 単発的に実施
(年に1回から数回程度)
継続的に実施
(1年を通して実施)
期待される主な効果 他地域のことを知る
自分の地域を再確認する 等
多様な意見や考えに触れる
社会性を養う
発表する機会を創出する 等

次回は、実際に遠隔合同授業を行うために必要なICT環境や、授業の代表的な流れ・ポイント等についてご紹介します。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 井上信介

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