2005.09.27
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今どき小学生の習い事 日々お教室に通う子どもたちのホンネは?

習い事をしている子どもは全体の82.6%、小学校2~3年生では92.5%。つまり、ほとんどの子どもたちが学校から帰宅後、ランドセルを放りなげカバンを持ちかえダッシュで家を飛び出すという日々を送っているのだ。これでは子どもたちには遊びの時間はもとより、息抜きの時間さえもない。そうまでして習い事に通わせる意義とは?

長い長い夏休みも終わり、わが家にもやっと日常が戻ってきた。猛暑に加え、やんちゃ盛りの子どもたちとベッタリ過ごしたこの夏は、体力的にも精神的にも消耗激しく、いまになって夏バテ気味なのは私のみならず世のママたちも同様だろう。本当に学校はありがたい。

しかし、ホッとしたのもつかの間、日常に戻ったら戻ったで、また別の慌しさが待っている。宿題、時間割、明日の持ち物、上履き・体操着の洗濯……そして、塾や習い事の送迎。夏休み中は、ほどよい気分転換になった習い事も、学校が始まると、まさにタイトロープ。子どもたちは帰宅した途端ランドセルを放りなげ、カバンを持ちかえダッシュで家を飛び出す。慌しいことこの上ないのだ。そこで今回は「いまどき小学生の習い事」についてちょっと考えてみたいと思う。

 小学校入学前~高校生の子どもを持つ親を対象にベネッセが行った「教育発見隊アンケート」最新版によると、習い事をしている子どもは全体で82.6%。これだけでも相当高い数字だが、ピークは小学校2~3年生でナント92.5%にも及んでいる。ちなみに小学校入学前で76.1%、小学校5~6年から徐々に下がっていくが、これはおそらく中学受験にシフトするからであって、習い事が減る分、彼らが塾に通う回数はアップしてるのだろう。その習い事の回数だが、平均は週2~3回。人気の習い事ベスト3は「水泳」「音楽」「英語」の順であった。

 この数字、決して大仰なものではないと思う。今年、小2になった双子の周辺でも、習い事を一つもしていない子というのは男女を問わず一人も見当たらない。むしろ週5日、平日は毎日、習い事に通っているというツワモノが普通に存在するほど。例えば、とある男子の場合、体操教室が週2回、水泳、空手、サッカー、それに加えて公文式……。「え? 6コもあるじゃん」って、そーなんです。毎日、習い事があるばかりでなく、一日に2つをかけもちするなんてことも当たり前。「ときには家に帰るのが8時過ぎになっちゃうこともあるんだ」なんて当の少年は平然と語る。しかし、朝8時に学校に登校し夜8時に習い事から戻るまで、約12時間もフル稼働してる小学2年生って一体なに……と不安に思わなくもない。ヘタすると彼らは会社勤めのお父さんよりも長時間がんばっているのだ。

 珠算、書道、柔道、空手、剣道、水泳、バレエにピアノが、せいぜいだった30年前のわが子ども時代とは違って、いま巷には種々数多な「お教室」が林立している。子育てをしていると、あまりに子どもまわりの選択肢と情報とサービスが多すぎて困るくらいだ。そんな状況下、子どもに習い事を勧める親の考えはさまざまだろう。「子どもに多くの体験をさせたい」「どんな才能があるかわからないから、いろいろなものに触れさせたい」「体力作りをさせたい」「精神修養の場を与えたい」「チームワークを学ばせたい」……。そのどれもが〈わが子を思って〉のことである。事実、私も、水嫌いで顔もまともに洗えなかった双子を憂い、小学校入学とともに水泳教室に入れた。

 でもその裏で、〈習い事=ママの自由時間〉と考えるムキもある。同じ習い事に通うママ同士、ゆっくりお茶したり、おしゃべりしたり、また一人でショッピングしたり。日ごろ忙しいママたちにとって、唯一ホッとできる時間。これも重々理解できる。理解はできるのだが、問題は、それが行き過ぎて〈習い事=保育所〉になってはいまいか、ということだ。例えば、水泳教室の最中、プールの見学席に座っていると、子どもの泳ぎを一度も見ずにひたすら知り合いとのおしゃべりや読書に興じているママがいる。プールサイドから子どもが手を振っても気がつかない。そんなとき子どもは、全身ガックリして次の泳ぎに入っていく。習い事は学校と違って、親が子どものがんばりをしっかり見届けてやることのできる場だ。子どもから遊びの時間を奪い、ボーッとする時間を奪ってまで習い事に通わせる以上、せめてそのがんばりを生で見つめて、しっかり受け止めてやるべきだと思うのだ。

 よく「本人が好きだといってるから習い事をさせている」という言葉を耳にするが、そればかりを鵜呑みにして、習い事を子ども一人に預けてはいけないと思う。その「好き」は、大人が自分の意思で習い事を選び、教室に通う「好き」とはワケが違うはずだ。「好き」の前に、親に見ていてほしいから、そしてほめてほしいから、彼らは日々習い事に足を運ぶのだ。子どもたちは子どもたちで必死にがんばっている。大好きなママやパパが「がんばれ」と言うから。「なんでもやってみろ」と言うから。それが将来につながるかどうかは、本人の才能はもちろん、そばで見守る親の目のあたたかさに大きくかかってくるような気がする。

 習い事によってもっとも削られるのは、実は家族の時間だ。みんなで食事を摂ったり、TVを見たり、その日あったことを話し合ったり。家族とともに、ゆっくりと、ゆったりと暮れていくはずの時間が、いまどきの子どもたちにはあまりに少なすぎる。ときに親は、子どもがホッとできる空白を用意してやるべきなのだと思う。どんな習い事よりもその空白が、子どもの人間としての力を伸ばしてくれるのかもしれない。

(イラスト:Yoko Tanaka)

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