初めての学習発表会でハートをわし掴み!(はじめての公立小)
学芸会とどう違うのじゃ?といぶかりながらの初参加。しょっぱなからハイテク駆使、リズミカルな演出、コントあり、映像あり、手作り大道具あり、の立 体的な学習発表、おお!これが学習発表会か!テラダ、感動しました!
実は私、恥ずかしながら「学芸会」と呼ばれるものに参加したことがない。
幼稚園のときは「おゆうぎ会」。小学校に入学してからは、授業参観こそあったものの、学芸会という名の行事は記憶にない。兄弟姉妹もなく、周囲には公立校の友人も少なかったため、<巷で耳にする学芸会とは、なにものぞ?>その疑問は長く私のなかにあった。
そんなある日、我が家に届いた1枚のプリント。見ると、『学習発表会のお知らせ』とある。え? これなあに? 学習発表会って一体なに? 学習発表会と「学芸会」は違うものなのーっ? 結局、その行事がどんなポジションに位置するのかいまひとつよくわからないまま、プリントに書かれている衣装を揃え、子どもたちに持たせた。どうやら、1年生は宮沢賢治の物語を演じるらしい。しかし、この物語、教科書に登場する作品でははく、担任の先生が今回の行事のためにセレクトしわざわざシナリオを書き下ろしている。すると、学芸会――もとい学習発表会とは、演劇を見せるものなのか? うーん、だとするならば「演劇会」とか「文化祭」とか他に言い方があるはずだ……。疑問と期待を膨らませつつその日の朝を迎えた。
会場となった講堂は、朝から保護者たちのの熱気でムンムン。ベストなビデオ位置をキープするお父さん、背中に小さな子をおぶってデジカメを構えるお母さん、この光景は運動会と変わらない。暗転する会場。ところが次の瞬間驚いたのは、舞台脇に設置された大きなスクリーンに、プロジェクターを使って、朝の通学の様子や授業風景の映像がテンポよく映し出されていくではないか。わお! 意外にもハイテク(笑)。それもカメラは校門の内側から、要は<先生の視線>で登校してくる子どもたちの表情をおさえている。毎朝、学校に行く子どもたちの背中を見送ることはできても、校門を入るときの子どもの表情というのは保護者には決して見ることができない。家の時間から学校の時間へ。子どもたちが、スッと変わるそのときを巧みに捉えたその映像は、それだけで十分な「学習発表」だと思った。映像に見惚れているところへ、6年生の司会の声。幕が開くと、ライトを浴びて3年生全員が舞台上に並んでいる。全員といってもわが校の3年生は15名しかいないので(笑)、舞台がキツキツになることもなく、キュッとはまっている。うまい!
観客(保護者ですが……)をひきつけるリズミカルな演出だ。一番手の3年生の演目は、町の歴史紹介。衣装こそないものの壇上で次々とフォーメーションを変えながら、ときにコミカルな芝居仕立てで、ときに手製の大道具を使いながら、授業の課題として行ってきたインタビュー取材をもとに歴史を紹介していく。それが実に細やかな取材で、長く町にすむ町内会スタッフからも「へぇ~、知らなかった!」の声が上がる。私の過去の経験からすれば、町の歴史調べは、グループごとにテーマを決め、その結果を各々大きな模造紙に書いて教室に貼る。そんな平面的な発表方法しかなかった。それをクラス全員、舞台の上で立体的に発表する。ああ、これが学習発表会というものなのねぇ~。元来、イベント好きな私は、舞台を使っての発表会にハートをわし掴み状態(笑)。
次は、待ちに待った1年生の登場だ。すると今度は、舞台上ではなく、舞台の下に子どもたちが立っている。物語の冒頭を全員で暗誦すると、そこから各々の役にわかれ、舞台で側転するグループ、楽器を演奏しながらセリフを語るグループ、舞台の上と下を使いながらストーリーが展開していく。そして途中の暗転では、なんとブラックライトを使って頭につけている紙製の飾りを光らせる演出。と、今度は舞台上に1年生たちが図工の時間を使って全員で制作した大きな背景画があらわれ、音楽の時間に練習した合唱でエンディング。おそるべし公立小学校。ブラックライトまで登場するかー! 立派なのは、宮沢賢治原作のクセのあるセリフ回しを、誰ひとりとして間違えることなく演じきったことだ。セリフをきちんと喋るには、内容はもちろん言葉や文章の意味を理解しなければできない。それを果たした1年生の国語力はなかなかのものかもしれない。ほかにも、現代詞の世界を体で表現した2年生、10歳のお誕生日=1/2の成人式を迎えこれまでの自分と未来の自分を語った4年生、授業でテレビ局を訪問した経験を活かし学校生活をニュース番組風にリポートした5年生、そして自らの脚本・演出で大人になった自分たちに遭遇する小演劇を見せてくれた6年生。次々と演目に魅了され、あっという間に時間が過ぎていた。
いやはや、これは「おゆうぎ会」でも「演劇会」でもない。たしかに「学習発表会」である。きくところによると、「学芸会」という言葉は、近年「学習発表会」に言いかえられたらしいが、同じ公立小学校でも1年ごとに行う学校、毎年行う学校とさまざまらしい。ちなみに、行事好きなわが校では、昨年から毎年行われるようになった。通常の授業をこなしながら、発表会の構成を考え、子どもたちを指導する先生方のご苦労ははかりしれないが、模造紙にただ知識をまとめるだけの発表よりも、授業成果に<体温>を感じる。来年はどんな風に驚かせてくれるのか、いまから楽しみにしていよう!
(イラスト:Yoko Tanaka)
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