2021.09.01
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学校の個人面談って、先生と何を話したらいいですか?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「個人面談って、先生と何を話したらいいですか?」です。個人面談は教諭と保護者が、子どものことについて話すことができる貴重な機会です。でも、何を話したらいいか分からなかったり、事務的なやりとりで終わってしまったりして後悔することも。教諭と保護者が子育てのよいパートナーとなるために、個人面談で聞きたいことについて考えてみました。

親からも子どものいいところを紹介しましょう

新学期が始まって最初の面談のときには、先生も子どものことがよく分かっていませんから、まずは「うちの子はこういう子です」っていう紹介です。好きなことや家族構成、どういう手助けが必要かなど。
例えば、我が家の長男の場合だったら「彼はチャレンジがないと飽きてしまう子。どんどん難しい課題を出してあげてください」って言っていました。次男のときは「注意力散漫に見えるけど、一つの課題を与えればとことん細かくやる子です」、三男は「友達をつくるのが好きだし、人を助けることにやりがいを感じるから、何か責任を与えてあげてください」みたいなことを話していました。自分の子の潜在力をより一層高められるようなことを言うんです。
つい謙遜して、自分の子どもの悪いところばかり話してしまう場合もありますが、こうしたらもっと良くなるという期待を話したほうがいいです。
「こんなダメなところがあります」ではなく、「勉強が好きではないけど、私が一生懸命サポートするので、先生は宿題をする意義を教えてあげてくれますか」「忘れ物が多いですけど、自分でも気を付けているようなので、忘れなかった日はほめてください」といった感じで話します。モンスターペアレンツになることを恐れて、先生に何も要求できないと思っている人もいますが、子どもが良くなるためのお願いはしてもいいと思います。

2回目、3回目の面談では、「最初に出会ったときと比べて、何か変化はありましたか?」って聞いていました。私が話した印象と比べて、実際の彼はどうでしたかという答え合わせと、「先生に出会って、うちの子は良くなりましたか?」という先生の感想を聞きに行きます。
「彼がいるとクラスが盛り上がる」「友達と仲良く過ごしている」といった良い報告だったら万々歳。「よかったですね!先生、これからも頑張りましょう」って一緒に喜びます。もし悪い変化があったとしたら、2人で「これは困りましたね。どうしましょう」と計画の立て直しです。
「変化はありません」って言う先生だったら要注意です。先生が子どもの変化に気づいてない可能性があります。「彼なりに努力してきたと思います。どんな小さな進歩でもいいから、ぜひ注意していただいてはげましてください。きっとすごく喜ぶと思います」と、先生にお願いした方が良いと思います。家に戻ったら、我が子には「クラスに大勢の生徒がいるから、先生は君だけを気にかけることはできないかもしれないけど、言葉に出さなくっても見ているようですよ。頑張ろうね」と話すと、子どもも安心して、自分のペースで成長できると思います。

子どもが家と学校で異なる2つの顔を持っているかも

必ず確認しておきたいことは子どもが学校と家で同じひとつの顔をしているのかということです。家の中では機嫌が悪いのに、学校に行ったらいい子。逆に、家では明るくてかわいい子なのに、学校では誰ともしゃべらず黙っているという場合もあって、これは先生に聞いてみないと分かりません。
もし、家と学校で2つの顔があるようだったら、これは子どもにとってつらいこと。多分、子どももそんな自分が好きじゃないと思います。学校でいい子なのに、家ではわがままを言っているようだったら、家庭がストレス発散の場になってしまっているということです。「みんなに嫌われるかもしれない」と思って学校では我慢しているのかもしれません。特に日本社会は難しくて、本音と建て前を使い分ける文化があります。子どもも本音を言ったら認めてもらえないかもしれないと思って、嘘の自分を演じていることがあります。
だから、もし子どもが無理をしていることに気が付いたら「やりすぎなくていいの。君はそのままでいいんだよ」と言ってあげないと大変です。みんなに好かれる必要もないし、八方美人にならなくてもいい、「君はもともといい子なんだから、素直でいればいいんだよ」って、子どもに言ってほしいと思います。

先生に話してほしいことも、保護者の場合と一緒です。「私はこんな先生です。子どもたちにはこんなことを期待しています」と自己紹介してもらえるとうれしいです。先生と親は子育てのパートナーですから、「お子さんが内気で手を挙げられないみたいだから、ご両親からも応援してください」って、家庭にも協力をお願いしてもらっていいと思います。
成績については普段の様子やテスト、通知表をみていれば親なら何となくわかりますから、先生には学校での態度や人間関係、精神状態など数字で見えないものを教えてほしいですね。
先生からも、保護者に「この1年間で、お子さんに果たしてほしい目標は何ですか?」って聞いてみるのはどうでしょう。たぶん、保護者もすぐには答えられないと思います。学校が教育の責任をすべて負うわけではなく、「子育ては一緒にやっていくんですよ」って親に考えさせるんです。

面談だけが先生との唯一のコミュニケーションではありません

もし、子どもがいじめられているかもしれない、学校に行くのを嫌がっているという相談をするつもりだったら、個人面談を待つ必要はありません。これは、学校も早く知っておいたほうがいい情報ですから、先生に時間をとっていただくようにお願いして大丈夫です。時間の限られた面談では、先生も忙しくてじっくり聞くことができません。
「面談しか先生とコミュニケーションをとれない」ではないのです。先生はいつも子どもの情報を知りたいと思っています。子どもを思う心は、先生も親も一緒です。先生は、親の相談を面倒だなんて思っていません。先生を信じて、一緒に協力しながら子どもを育てていけるといいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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