2021.06.02
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子ども同士でおごったり、おごられたり、どうしてダメなの?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「子ども同士でおごったり、おごられたり、どうしてダメなの?」です。
子ども同士でのおごる、おごられるという行為はトラブルになりやすく、禁止している学校もあります。私の子育て中に起こった出来事などから、その問題点や対応を考えてみました。

お金で買える友情は本当の友情じゃない

学校の中で、子どもがお互いに何かおごったり、おごってもらったりすることを禁止しています。
この校則が議論になっています。学校側の考え方に、私は賛成です。
おごってもらうこともないし、プレゼントも無いけど大好きだから付き合うっていうのがベストな友情だと、私は信じています。

おやつを分けてあげたり、お弁当のおかずを交換したり、「バナナが2本あるから1本あげるよ」っていうのは全然問題ありません。うちの息子たちの学校にはスナックを食べる休憩時間があるので、私も息子たちには友達と交換できるようにおやつを少し多めに持たせていました。
でも、お店に行って、お金を払って友達に何かを買ってあげるっていうのはあまり良くないこと。「あなたがお金を払って、私が食べる」っていうのは、おやつ交換とは違います。子どもたちの友達作りの中には、金銭的なことが入ってこない方がいいと思うんです。

お金やプレゼントをあげて友達を作ったり、自分のいうことを聞いてもらったりすることには反対です。物をあてにして友達になってくれる人は本当の友達じゃないからです。
お金を持っている人からもらえばいいっていうのもすごく怖い考え方。持っている人からもらうことが当たり前になれば、何かをもらえないと何もやらないっていう考え方が子どもに植え付けられるかもしれません。

同じ学校に通っていても、お金に余裕のある家庭とそうでない家庭があります。おごったりおごられたりっていうことは、お金がない家庭の子にとってはプレッシャーであり、コンプレックスにつながる場合もあります。
だから、子ども同士でおごったりおごられたりすることを禁止している学校もあるんだと思います。

うちの息子たちはお小遣いをあげてなかったので、友達におごったことはありません。
ただ1回だけ、ある子のお母さんから「あなたがお小遣いをあげないから、うちの子がアイスクリームを買ってあげている」って言われて驚いたことがあります。
それからは、息子と「友達に買ってもらったら、ママに必ず言ってね」って約束しました。
おごってもらったことが分かれば、私はその子のお母さんにお金を返すことができるし、「うちの子には買わないでください」と伝えることもできます。

「おごってあげるから一緒に食べよう」って言われたら

うちの子の場合は、学校の帰り道に友達が集まるアイスクリームショップがあって、そこでアイスを買ってもらったみたいなんです。
だから、私は息子に、「アイスをおごってもらわなくても大丈夫。家に友達を連れてきて、おやつを一緒に食べましょう」って提案しました。
アイスクリームを食べてから帰ってくるより、公園で思い切り遊んでから家にきておやつを食べてくれた方が私もうれしいです。
用意するおやつも、子どもたちが気にせずに食べられるように、手作りのものにしていました。

手作りっていうと大変そうですけど、子どもって案外、サンドイッチとかおにぎり、焼きそばみたいな簡単なものが好きなんです。私も時間がないので、ぱぱっとできるものばかりです。子どもたちも学校が終わって遊んで、お腹がすいているんでしょうね。卵やツナのサンドイッチ、ふかしたサツマイモなど、喜んで食べてくれました。
ホットサンドも人気でしたよ。ホットサンドメーカーがあれば、ハムとチーズをパンに挟んで焼くだけで、すごくおいしくできあがります!忙しいママにもおすすめです。

大好きだよっていう気持ちを伝える方法を考えましょう

子どものお誕生日会とかクリスマス会のプレゼント交換も、親同士で相談して予算を決めていました。
「500円以内、1000円以内」と事前に決めときます。その方がプレゼントに差がでなく、子どもが気楽に交換できます。実は予算が決まっていると、プレゼントを探すのはなかなか大変です。
「友達が好きなものは何か」「何を喜んでくれるのか」と、よく考えないといけません。予算が決まってない場合の方がチョイスが多いだけに、深く考えなくっても済むんです。
少ない予算の方がその子のことを一所懸命に考えようになります。プレゼントを渡す意味が深まると思います。

友達に何かをおごれば、「大好きだよ」「仲間になってね」っていう気持ちが伝わると思うのは根本的に間違っていると思います。
お金や物に頼らない友情を育むことの大切さを子どもの頃に覚えさせるのはとっても重要です。純粋で清らかな人間関係こそ信頼できる、頼れる関係です。大人も同じです。政治家を接待するのは、「あなたのことが大好き」だけではなく、多くの場合は見返りを求めています。
子どもたちには「あなたは大事な友達です」っていう気持ちを物に頼らずに伝える方法を身につけてほしいです。
「お金があれば楽しいことが買える」「お金があれば仲良くして貰える」と、思ってほしくありません。

お金で買った友情は本当の友情ではないのです。お金がなくなると、友達は去って行ってしまいます。
寂しい人生になってしまうのです。
大人になってしまうと利害関係のない友達が作りにくいと良く言われます。
だからこそ、子ども時代にはお金が友情の邪魔になってほしくないです。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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