2021.05.05
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新学期。なかなか友達ができない子どもになんと言ってあげたらいい?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「新学期。なかなか友達ができない子どもになんと言ってあげたらいい?」です。

クラス替えや進学で、仲の良い友達と離れてしまった場合、子どもに友達ができるのか心配ですよね。そんなときに、私が子どもにいつも話していたことをお伝えします。

声をかけてもらうのを待つのではなく、友達のいない子の力になってあげて

新学期になって新しいクラスで、「友達ができないな」と悩んでいる子がいるかもしれません。
そんなときは、発想を変えてみたらどうでしょうか。「誰も友達になってくれない」から、「誰か友達いない人はいるかな」「あの子、寂しそうだから話しかけてみようかな」という発想の転換です。

クラスの中をよく見てみると、誰からも声をかけてもらっていない子はいませんか?
誰かが話しかけてくれるのを待っているのではなくて、自分から声をかけて「その子に寂しい思いをさせない」って考え方を変えるんです。
はじめは恥ずかしかったり、知らない人と付き合うのは勇気がいることだったりするかもしれないけど、もしかしたら同じような悩みを持っている子かもしれません。
あるいは、仲間外れにされているのかもしれません。一人ぼっちでいる子に「一緒に帰ろう」とか「一緒に遊ぼう」って声をかけて、自分がその子の友達になってあげようって考えるんです。

だから、おうちでも「大丈夫?友達はできたの?」って聞くよりも、「新学期だからまだ友達できてない子がいるんじゃない?寂しそうな子に声をかけてあげてね」って話して、子どもの考え方を変えてあげてはどうでしょう。
考え方を変えると、見えないものがいっぱい見えてきます。誰かに話しかけてもらうのを待っているときはネガティブなものしか目に入らないけど、自分がポジティブになるといろんなものが見えてくると思うんです。
友達がいなくて寂しい子の力になってあげようって思うと、目標があるので、子どもにも力がわいてくると思います。


私も小さいときは人見知りで友達ができにくかったんです。
しかも、芸能界にデビューしたときにそれまで一緒にいた友達からは絶交されてしまいました。話しかけても答えてくれなかったり、私が来るとみんなが逃げてしまったり。でも、そんなときに声をかけてくれたグループがあったんです。「一緒にご飯を食べよう」とか「明日は何時に集合ね」とか誘ってもらえて、それをきっかけにいじめもストップしました。
あとから知ったんですけど、実は先生が仲間に入れるように頼んでくれたみたいです。
でも、「この子が困っているから助けてあげよう」って思ってくれた人がいたことで、私はすごく助かりました。

だから、自分の周りに一人ぼっちの子がいるんだったら、ぜひ声をかけてほしいと思います。
うちの子たちには、新しいクラスに入る前から「声をかけてもらえない子が絶対にいるはずだから声をかけるのよ」「友達になってあげなさいよ」っていつも言っていました。そうやって、自分から声をかけていくので、彼らには友達のいない経験がないんです。

いつも同じようなことの繰り返しでは人生はひらいていきません。自分から行動して、知らない子に声をかけたり、一緒に出かけたりしてみましょう。人を愛する気持ちを忘れずに行動すれば、自分でも知らなかった自分の一面にも出会えるし、いつの間にか仲間も増えてくると思います。

あなたに問題があるのではなく、まだ親友に出会っていないだけ

実は親友ができるっていうのはすごいラッキーなことです。
親友と呼べるのは、生涯に1人か2人しかできないなんていう話を聞いたこともあります。
だから、気の合う友達がいないのは自分に問題があるわけではないんです。まだ、たまたま出会っていないだけ。どんな人でも自分とぴったりな友達はいるはずです。

だから、うちの子たちには「友達ができなくても大丈夫。家族もいるし、やりたいこともたくさんあります。悪い友達を作るよりは、1人でいても構わないんですよ」「友達がいなければ生きていけないっていう世の中じゃないです」と言っていました。
友達がほしくて誰かに媚びたり、いじめてくるような人と付き合ったりする必要は全くないんです。

いい友達っていうのは、一緒にいると楽しいことが倍になって、悲しいことは半分になって、いいことをやりたくなる。しかも、それをやってるときが楽しい、そういうのはいい友達なんです。
一緒にいると、絶対やっちゃいけないとわかっていながらも悪いことをやりやすくなる、あるいはさせられる、その後で自分が嫌になっちゃう。悲しいことあった時も言えないし、楽しいときも倍にならない。そういうのは悪いお友達です、さよならしても惜しくありません。


それでも、友達は人生の中で絶対必要です。本当に孤独になってしまうことは、誰でもつらいことです。
もし、どうしてもクラスの中で一人ぼっちだったら、学校以外の友達も必要です。私も引っ込み思案でしたが、ボランティア活動をしているうちに仲間がたくさんできましたし、兄弟も多かったので寂しくはありませんでした。
塾でもいいし、習い事やボランティア活動でもいいので、学校とは違う居場所を探して、心を開いて話すことができるような存在を見つけてあげましょう。親や兄弟が寄り添って話を聞いてあげるのも子どもにとっては十分心の支えになると思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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