2021.04.07
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子どもとお金の話をしていますか?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「子どもとお金の話をしていますか?」です。2022年から高校の家庭科で金融教育の授業が始まるなど、子どもの頃から資産形成や投資について学ぶことへの関心が高まっています。家庭でできる「お金」の教育について考えました。

お金では買えないものの価値を知ることが最初の一歩

お金について、子どもに最初に教えたいのは「お金で買えないものが一番大切」ということです。愛情とか友情、誠実さといった、お金では買うことができないものが人生では大事です。お金では買えないものを大切にしていれば、お金が少なくても幸せになれるっていうのが、我が家の教育方針です。
贅沢をすることで幸せになろうとするのはすごく危うい考え方です。たとえば、豪華な家を建てたとします。でも、さらに大きな家、きれいな家は世の中にいくらでもあります。次は、もっとすごい家を建てようって考えるときりがないんです。
愛情や友情、そういうお金では買えないものこそ一番貴重で、それを大事にできれば、人生は豊かになります。

お金では買えないものの価値を知ったあとで、「じゃあ、お金って何なんだろう?」ってお子さんと一緒に考えてみてください。
大昔は、自給自足のような生活だったので、お金なんていらなかったです。でも、今では食べ物や衣類、住居など、生活に必要なものはお金を払って手に入れる必要があります。お金が無くては生きてはいけない時代になったんです。お金がないと生きていけませんが、お金は使うものであって、お金に支配されては幸せになれません。
お金を得るためには、人は自分の人生や時間を切り売り、働いて、給料を貰います。
より多くのお金が手に入れば、幸せと思って、多くの人は健康を損なう、人間関係をダメにして、幸せになるどころか、不幸の道を辿ってしまいます。
真面目に働き、賢くお金と付き合って、お金に束縛されないように気をつけないといけません。

お小遣いをあげれば、正しい金銭感覚が身につくというものでもありません。
我が家では子どもたちは高校生になるまで、決まったお小遣いはあげませんでした。
お金のかからない遊びをたくさん教えました。彼らは自分たちでいろいろと工夫することで遊びました。
お金に頼らない楽しいことを身に付けることができました。
「これを買って!」「おもちゃが欲しい」と言われたことは一度もなかったです。

いざというときのために貯金の大切さも教えましょう

子どもたちがお祝いやお年玉でいただいたお金はぜんぶ貯金して、大学を卒業するときにまとめて渡しました。それが彼らにとっての最初の貯金です。
お金に執着していては幸せになれませんが、いざというときのための貯金は大切と教えています。
子どもたちに、「失業したり病気で働けなくなっても1年くらいは生活できるように貯金をしてね」って話しています。

新型コロナウイルスの影響でアメリカやヨーロッパが大慌てだったときに、日本や香港などアジアの人たちが比較的落ち着いて対応できた理由の一つには、貯金の習慣があったことが影響しているかもしれません。
アメリカでは給料日が月2回の会社が一般的です。実はここに問題があって、2週間ごとに小刻みに支払われると、全部使い切ってしまって貯金がしにくいんですね。貯金をせずにクレジットカードに頼って生活している人が多いので、収入が減ったらいきなり生活が破綻してしまいます。
人生には何があるか分かりませんから、まずは貯金をして、余ったお金で投資をするように教えたほうがいいでしょう。

子どものいるところでライフプランを話しましょう

子どもの前ではお金の話をしないという家庭もあるかと思いますが、中学生くらいになったら、一緒に食卓を囲んで大人の会話を聞かせるのもいいと思います。
「家を建てるにはどうしたらいいかな」「ローンを借りたら無理しすぎかな」なんていう大人の相談を何となく耳にして、ときには質問したりして、会話に混ざる。「パパはお金を使いたい」「ママは少しケチ」なんていう簡単な感想かもしれませんけど、両親それぞれの意見を聞いて自分で判断するきっかけになります。
我が家でも人生設計について夫婦で相談するときは、子どもたちがいるところで話していました。彼らも成長してから理解したのか、今頃になって「あのときのママの意見は正解だったね」なんて言うこともありますよ。

そのお陰か、息子たちが社会人になった今、貯金をしたり、投資したり、家を買ったりして、上手にお金のやりくりしています。
特に感心したのは、小さい時から貯めた貯金を使って、大学卒業したと同時に投資を始めて、成功しているところです。
投資を成功する鍵は情報です。小さい時から世間のことに興味を持つように工夫したのが良かったのかもしれません。
息子たちはニュースに興味があるし、どんなことにでも好奇心を持っているので、経済の動きが見えるんだと思います。
アメリカのシリコンバレーに住んでいるので、最先端の情報にふれることができることも大きいかもしれません。
金融について学ぶことも大事ですが、広く世界を知っておけば、将来、投資をするときに有利かもしれません。

子どもたちの金銭感覚を育てるには、お金では買えないものこそ大切と教えましょう。そしてお金がなくても幸せになれる方法を覚えさせることです。
好奇心を持って、世界を知れば、経済のことも理解することができるようになります。
そうすれば、理財することも自然にできるようになります。お金に支配されない人生こそ、豊かな人生と思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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