2019.07.03
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英語学習の意欲を向上させるには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。新学習指導要領でも注目されている外国語教育。小学校では3年生から「外国語活動」として英語の授業がスタートします。大人でも英語を話すことにとまどいがある方が多い中、子どもたちが積極的に英語を学ぶにはどうしたら良いのでしょうか。今回のテーマは「英語学習の意欲を向上させるには?」です。

「英語は楽しい」と感じることが、英語学習のスタート。

英語に対する学習意欲やモチベーションを上げるには、「英語は楽しい」という気持ちを芽生えさせることが一番大事。楽しいと思う前に苦手意識がついてしまっては、後々学ぶための集中力も欠けてしまうので、学び始めの時期が肝心です。例えば、私が教材づくりなどで関わりのある子ども向けの英会話教室では、子どもたちに英語の名前をつけることからスタートします。一人ひとりにメアリー、アン、ジュディーと名前をつけて呼び合い、音を流して歌やダンスをしながら英語を学習します。まるでみんなでひとつの劇を作り上げているようです。

脳の発達の観点から、子どもの好き嫌いは幼少期からの経験や育ってきた環境に左右され、親が洋楽好きであったり、少し英語を口にしたら褒められたりといったポジティブな経験があれば、英語を好きになりやすいようです。そして、そういった経験をもとに脳の回路が作られていくのは8歳までで、それ以降“使わない”と判断されたものは切り捨てられていきます。小学校の高学年にもなると好き嫌いがはっきりとして、脳もできあがって来ています。そこから新しい回路を作るのは子どもであっても大変なことですから、「英語は楽しい」という経験は早ければ早いほど学習意欲の向上につながります。

“フォニックス”を覚えて、英語に自信をつける。

新学習指導要領では、小学校3年生から週1回程度の頻度で「外国語活動」が導入されますね。その頃には子どもたちにも日本語の文法が定着し、耳から入ってきた英語は一度日本語にしてから理解するでしょう。また、舌や口の使い方ができあがっているので、日本語なまりが強くなるのは避けられません。それは仕方のないことですが、それを理由に英語を学ぶことに対して苦手意識を持ってしまってはもったいないですね。

子どもたちが積極的に英語を学ぶためには、できるだけ早く英語を読んだり聞きとったりができるようにして、自信をつけさせてあげることが良いかと思います。そのための効果的な学習方法が“フォニックス”です。フォニックスでは、アルファベットひとつひとつについている音の読み方を学びます。例えば、Aは「æ(エア)」、Bは「b(ブ)」、Cは「k(ク)」という風に。それが分かれば単語の意味はわからなくても、読んだり聞きとったりができるようになり、子どもにとって大きな自信になります。意味が分からなかったとしても、海外の音楽や映画の聞き取りができれば、「これは何という意味だろう?」と興味にもつながりますね。聞き取りができるだけでも、英語を主体的に学ぶ基礎づくりに役立ちます。

英語を聞きとれるよう耳を鍛えておけば、会話の場面で自分が不安になることもないでしょう。聞き取れたら、自分でどうやって表現していくのかゆっくり組み立てられます。耳を鍛えて相手の言葉を聞き取ることで、コミュニケーションをとりながらさらに英語力を磨くことができるでしょう。

英語学習を通して、新しい自分に出会うことができる。

私は息子たちに、日本語、英語、中国語が話せるように育てましたが、中国語は苦手なようです。あるとき、中国語しか話せない留学生を先生として雇い、家に来てもらっていたのですが、子どもたちは先生が来る度寝たふりをしていましたね(笑)。それでも高校に入ると本格的に学び始めて、今は多少話せるようになりました。でも発音が難しいので、彼らは未だに私の前では中国語を話さないです。さらに夫も英語が好きな人なのですが、私の前では英語を話しません。子どもも夫も、外国語の発音を気にしているようです。

このように発音を気にして、英語をしゃべるのが恥ずかしいという感情もあるかと思います。ですが、英語の学習は英語で世界の人とコミュニケーションを取ることが目的なので、とにかく喋ったもの勝ちです。インド人はインドの、シンガポール人にはシンガポールのそれぞれのなまりがありますが、彼らは平気でコミュニケーションをとっています。英語はもはや国際語ですから、なまりが入っている英語は当たり前です。日本人には日本のなまりがあって当然ですから、恥ずかしがらず話してみてください。

英語でたくさんの人と会話をして、いろんな言葉を覚えれば、日本語にはない新しい表現や価値観も知ることができます。「凛としている」という言葉は日本独自の言葉ですが、私はこの言葉を知っているから凛としている自分になれるのです。英語に限らず外国語を知れば、その分新しい自分に出会えて人生が豊かになりますから、英語学習の先にある“新しい世界の広がり”も子どもたちに伝えていけたらいいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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