2013.10.08
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全国学力テストの結果「第1弾」

文部科学省は8月末、今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の「第1弾」の結果を発表した。2007年度以来6回目(2011年度は東日本大震災により調査としては中止)となる今回は「きめ細かい調査」として実施されており、本体調査の全数(悉皆)調査は4年ぶりだ。結果はどのようなものになったか。また、「第2弾」以降の発表予定はどうなっているのか。

都道府県格差が縮小、プラスに転じた高知にも着目

教科に関する調査で何より注目されるのは、都道府県格差が縮まったことだ。前回全数調査が行われた2009年度、都道府県の平均正答率が全国平均のマイナス5%に達しない都道府県は小学校の場合、国語Aと算数Bで各1県あったが、今回は初めてゼロでそろった。中学校でも国語Bで2県あったものが初めてゼロになった他、数学Aで2県から1県に減少した(国語Aの1県、数学Bの2県は2009年度と同じ)。最低平均正答率と全国平均との差も縮小傾向にある。「過去低かった県に改善傾向がみられる」(文科省)ということは、調査の目的である「教育に関する継続的な検証改善サイクル」や「学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等」が機能してきたことの表れだろう。 今回の文科省の発表方法として、「伸びた県」を取り上げたことも注目される。全国平均との差が2009年度と比べて3ポイント以上改善したのは、小学校国語Aで秋田(プラス5.4%からプラス9.0%に)、高知(マイナス1.4%からプラス2.6%に)の2県、同算数Aで高知(マイナス2.3%からプラス1.6%に)の1県、同算数Bで石川(プラス2.7%からプラス5.9%に)、愛媛(マイナス0.5%からプラス2.6%に)、山口(マイナス2.0%からプラス1.5%に)の3県となっている。 「学力全国一」の秋田が更に伸ばしたことも注目点だが、発表資料ではマイナスからプラスに転じた高知県の例に着目し詳しく紹介している。全国的にも高くなった小学校国語Aだけでなく、同国語Bと同算数Aでも全国平均を上回った。中学校では依然として全国平均を下回っているものの、2009年度までは国語Aを除いてマイナス8~10%だった状況が、4~5%分の改善により全教科がマイナス2~6%に収まっている。補充教材の作成・配布、放課後を活用した補充学習、「高知県版学力調査」(小学校4・5年生、中学校1・2年生対象)の実施と授業改善が功を奏したと同省では分析している。 一方、全国では、複数の内容を含む文の中の語句の役割や語句相互の関係を理解すること(小学校国語A)、一定の事柄が成り立つ理由や予想した事柄を数学的な表現を用いて説明すること(中学校数学B)など、依然として課題も少なくない。

12月と3月の発表にも注目

 今回は「きめ細かい調査」として、本体調査以外にも調査が行われている。このうち同一問題を出題する「経年変化分析調査」は1~2%の学校を抽出して5月13日から6月28日にかけて実施されており、結果は本体調査のクロス集計などと同様、12月ごろに公表される予定だ。

 また、子どもへの接し方や教育費などについて尋ねた「保護者に対する調査」(5月下旬~6月下旬)や、教育施策の実施状況などを調べる「教育委員会に対する調査」(4月中旬~6月下旬)の結果は、2014年3月ごろの公表を予定している。

 調査のもう一つの目的である「教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」ためにも、今後12月の「第2弾」、3月の「第3弾」の結果公表が待たれる。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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