2013.05.07
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全国学力テスト「きめ細かな調査」、その意味は?

文部科学省の2013年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の「本体調査」が4月24日、全国一斉に行われた。今回は「きめ細かな調査」として、本体調査の他にも一部の学校を対象にした「経年変化分析調査」「保護者に対する調査」「教育委員会に対する調査」が追加で行われるのが特色だ。その意味するところは何か。

調査見直しを契機に導入

 43年ぶりに、2007年度から始まった全国学力テストは当初、原則として小学校6年と中学校3年の全児童・生徒を対象とする「悉皆方式」で行われてきたが、民主連立政権への政権交代に伴って、2010年度からは、抽出した30%程度の学校を対象とするとともに自己採点を条件に希望する学校にも問題を提供する「抽出調査及び希望利用方式」に切り替えた。その代わり、毎年行う国語と算数・数学に加えて、3年に1度程度、理科を実施するとともに、数年に1度、悉皆方式によるすべての市町村・学校等の状況把握と、経年変化分析や経済的な面も含めた教育格差を把握するための「きめ細かい調査」を新たに実施することにした。2012年度に3教科の調査を実施し、今回2013年度が、その「きめ細かい調査」の初回となった。

 「きめ細かな調査」のうち、「経年変化分析調査」は本体調査を実施した全国の国公私立小・中学校から1.5%を抽出した460校(小学校220校、中学校240校)を対象に実施。5月13~6月28日の間の学校が実施可能な日時に、(1)教科に関する調査(国語、算数・数学)、(2)教科に関する調査の問題に関わる質問紙調査――を実施する。今回は初回のため、次回以降の経年変化分析のためのデータを得ることが主たる目的となるが、過去の調査問題も活用して一定程度の分析を行う。

 「保護者に対する調査」は公立小・中学校の2.8%に当たる844校(小学校430校、中学校414校)を抽出。4月末以降、本体調査を受けた児童生徒の保護者を対象に、家庭における状況、保護者の教育に対する考え方等を調査する。具体的には、子どもの様子や子どもへの接し方、教育費、保護者の意識・行動などを尋ねる。

 「教育委員会に対する調査」は、全都道府県・市町村教委を対象に4月末以降、教育環境への支援、追加的な人的措置による取組、教員の指導力向上など教育施策の実施状況等を調査する。

継続的な検証改善サイクル確立に力点

 以前の全国学力テストの調査目的は、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。また、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」(2010年度実施要領)というものだった。

 これに対して2011年3月、同省の「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」は「調査目的のうち、『教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する』という点に今後は力点を置き、例えば、【1】時系列による学力水準の比較(経年変化の分析)のための調査、【2】教育格差の分析及び関連する施策の検証のための調査、【3】発達段階に応じた学力等の状況の変化を分析するための調査、といった新しい視点に立った調査について検討していくことが必要と考えられる」と強調。とりわけ「児童生徒の学力等の状況及びその経年比較に資するような調査や、発達段階に応じた学力等の状況の変化を分析するための調査、教育格差の実態把握・分析及び関連する施策の検証に資する調査を重視すべきである」として、経年変化の分析や教育格差の分析を重視した調査を行うよう求めていた。こうした提言を受けて、今回の「きめ細かな調査」が行われることになった。

 なお、自民・公明連立政権の復活に伴い文科省は2014年度以降、悉皆方式に戻す方針を決定。2013年度予算に準備経費を計上している。

渡辺 敦司(わたなべ あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年、横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

構成・文:渡辺敦司

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